番外悪霊22
克也は昔、よく頼んでいたピザとフリードリンクを頼んだ。
私は克也に小説の話題をふられ、いままでの話をした。
「さっきまで、こんなふざけた内容で、公募なんて恥ずかしいとか考えたけど、わりと、この案、見てくれるかもしれないんだ。」
私は話始めた。
2025年は、明智小五郎のデビュー100周年の記念の年で、大阪万博がある。
横溝先生は、神戸の出身で、乱歩先生は大阪。
地理的にゆかりもありそうだし、なにしろ、まだ、1年先の話だ。
翌年の2026年に発表されたドイルの『霧の国』を1933年に横溝先生が翻訳する…
この辺りの話も広げられる。
と、ここまで説明してると、山臥がケチをつける。
「翌年って、なんか、こじつけじゃない?」
「2026年に発表なら、2025年に執筆か、構成を考えていたんじゃないかな?まあ、この辺りは少し、ごじつけても…アンタの『ソマ橋』の件があるから、盛れるわよ。」
私は頭をめぐらせる。
どうせ、原案になれるか、否か位なんだから、あとは、頭のいい人が考えればいい。
そう、ネットの時代、理論より、『映え』とタイミングが大切に違いない。
私は商売人の顔で二人に話す。
「私はね、この案を生け贄に、新世紀の明智小五郎の肖像をゲットしたいのよっ。」
私は話た。
私が書籍化を目指すのは、剛が名古屋を目指すくらい大変だと言うこと。
しかし、近代のパソコンは優秀で、自作の冊子や電子文庫に個人でエントリーは可能なこと。
私クラスの小銭稼ぎでも使える、挿し絵が欲しいことを熱弁する。
「つまりよ、私は明智小五郎の画集を出版する努力をし、一冊買ったら、電子で使える画像が貰えるシステムを提案したいのよっ。」
私の説明を二人はきょとんと聞いていた。
無理もない。
ネットで小説を書いたことなんてないんだろうし、挿し絵を描くために七転八倒もしたことはないんだろうから。
挿し絵…なんか、いい感じの挿し絵があれば…
最近のスマホやタブレットを使えば、色々出来るんだから。
乱歩のファンはたくさんいる。が、作者が違えば、ファンは分散する。
だから、多くのファンが、共感できるギリギリで、今時の絵師に挿し絵を書いてもらい、絵本のように短い文章を横にのせたらどうかと考えた。
文庫サイズのブックカバーをおまけにつけたら、本を既に持ってる人も買ってくれるかもしれない。
「確かに、現在、紙の本を買うなら、印刷物として、絵の方が売れそうだね。」
克也が怪しいビジネスを考え始める気配がする。
「うん。有名な人でなくても、いい感じの絵を…同人活動や、動画の配信で使わせてほしいわ(>_<。)」
私の気持ちが爆発する。
ああ…紙のお金とまでは言わないわ…
せめて、500円…ワンコインで稼ぎたいのよっ。
盛り上がる私と克也に山臥がみずをさす。
「動画とかは…また、権利が違うんじゃないかな?なんだか、金儲けは難しいと思うぞ。」
都会に住み、様々な業界人の知り合いがいると自称する、山臥の言葉で夢が縮まるのを感じた。
「そうなんだ…はぁ…やっぱ、ネットで金儲けなんて、一筋縄ではいかないんだね(>_<。)」
がっかりした私に、克也が楽しそうにニヤリと笑って話しかけてくる。
「卯月さん。下手な策を練らなくとも、ここまで考えたなら、話を書いて行く方が大賞に近いかもしれないよ。」
「た…大賞…」
私は克也の無知に恥ずかしくなる。
そう、基本、自分が関係ない場合、知り合いのチャレンジは、小説を読むように感じるのだ。
頑張れば、結果が伴うと信じて疑わない。
でも、これは現実で、成功できるのは一握りの人間…
しかも、作家デビューを果たしても、めでたしめでたしでは終わらない。
切ない気持ちの私に、克也は楽しそうに自分の閃きを話始める。
「卯月さんは、『悪霊』のトリックが無いエンディングを考えたんだよね?」
克也の自信ありげな顔が疑わしい。
「うん…まあ。」
「じゃあ、俺はエンディングがあった方の推理を披露しよう。」




