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番外悪霊9

「いやぁ…あの時はやっちまった、と思ったよ。」

剛のようなマヌケ顔で江戸川…否、平井太郎がボヤく。

「わかるぅ…私も、まさか、『パラサイト』があんなになるなんて思わなかったもん。」

隣で私もボヤく。


そう、思えば、私だって、ちゃんと物語を設定していた。

でも、書き始めたら色々あって、完結しても評価は上がらず、謎も残したままだった。


そう、一冊分を投稿せずに書ききるのと、部分ごとに投稿するのでは、状況が少し違ってくる。

次の更新前に…見たくもないアラやら、真実、

時代のアレコレが加算されるのだ。


「まあ、諦めずに書き続けるってのも、凄いと思うよ。」

太郎は誉めてくれる。

「いや、良いところで潔く止めて、批判を受けるのだって大変だよ。」

私も太郎を誉めちぎる。


他の人には無意味でも、やらかしたどうし、慰めは心に染み渡る。


「出来ると思ったんだ。そして、もう一度、俺はミステリの本物になりたかったんだ。」

太郎の言葉が胸につく。


江戸川乱歩…推理作家でデビューしたものの、本格推理ものとしては評価が低かった。

主に心理サスペンスを得意とし、エロとか、グロとか、怪しげな性癖が絡む話で人気になった。


それが、どんな風に見られるのか、ネット作家と呼ばれるようになって理解する。

我々の書くファンタジーも少し色っぽい…今風に言うところの肌色成分の多目のお色気ヒロインのイラスト頼みの中身なしとか揶揄される。


が、大衆はそれを望むのだ。

買う人がいるから、こうやって書く人もサイトもあるわけだ。


でも、書籍化した作家が、皆幸せにはなれない。


私みたいに、書籍化どころか、ブックマークの数から足りないと、書籍化した人たちを、シンデレラを見送る読者のようにハッピーエンドとして見送る。


けれど、電子から、紙の世界に言った人たちは、本格ファンタジーとの戦いが待つ。


ネットでは、沢山の評価を貰えても、紙の世界では、三流扱いは否めない。


太郎もそうなのかもしれない。

刺激的な言葉と、セクシーな挿し絵。それで売れていると揶揄される。


本格ファンタジーも

本格ミステリーも


だからどうした、とは思うけれど…

でも、やはり、批判ばかりされていたら、『やればできるんだっ』と、イキりたくなる気持ちもわかるし、挑戦したくもなるだろう。


雑誌『新青年』の連載…

それは、私に例えるなら、オカルト雑誌『みい・ムー』に記事が載る位のステイタスなんだと思う。


仲が良く後輩で、才能もある横溝先生が活躍する雑誌。

太郎はそこからデビューはしたけれど、ジャンルはエログロで、他での活躍が評価されていた。


デビュー10年目。

後輩や大衆…特に、自分を手酷くレビューしまくる批評家をギャフンと言わせる話を作りたかったに違いない。


その気持ちは、涙が出るくらいよくわかる。

誰だって、エタりたくて作品を投稿なんてしないんだ。

特に、古巣での久しぶりの本格ミステリー。


この話を受けたときの平井太郎のときめきや、プレッシャーは、ネットで小説を書いたり、それを応援してきた人なら、よく分かるに違いない。


私で活動5年。

太郎はプロの期間を含めて10年の活動をして来たのだ。

何度だって、あらすじは確認していたはずなんだ。


「分かるよ。3年前にドイルが亡くなっているものね。

時代的な情報伝達をかんがえても…そんなプレッシャーや、弔いの気持ちもあったでしょうね。」


私は、『悪霊』の犯人探しは考えてなかった。

何を書いてもイチャモンが来るだろうし、読者も楽しくは無いだろうから。


だから、私は、ネット作家としての目線で乱歩が『悪霊』を考え付くまでの話を推理しようと考えた。


『パラサイト』を中心に数年をこの時代を調べていた。

それをベースに物語を書こうとあがく人物を語ろうと思った。



そう、私も太郎も…小説を書く皆、一斉一代の物語を産み出すときのプレッシャーは変わらない。


世界規模に評価されようと、

サイトの少数のファンに評価されようと、

規模は違っても、気持ちは同じ。



どうして、悪霊とか、降霊会をテーマにしたのか?

始めに考えたのは、同じミステリー作家であり、永遠の巨匠サー・アーサー・コナン・ドイルへの追悼の思いではないか。だった。

ドイルが亡くなったのは、3年前、1930年の事だ。

時間は経過しているが、電話も大変な時代。

情報が流れるのには時間もかかる。


それに、ドイルは、ホームズや推理より、オカルトや降霊会が好きだった。


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