5話謎
「肉食の…人間の肉を糧に繁殖するようなそんな繭蛾は本当にいると思う?」
『オーデション』と言う作品の最後の秋吉の台詞。
この謎に答えようと考えた。
今考えると…どうして、この設定であんな話に『パラサイト』がなったのかは分からない。
しかし、この答えが『パラサイト』と言う作品のはじめだった。
今では、そんな事をすっかり忘れたような話になってしまったが、だからこそ、寄生虫と言う題名なんだった。
繭蛾を探さなければいけなかった。でも、 肉食の繭蛾はいない…たぶん。
昔調べた。仕方がないので他の虫を探す。
検索したら寄生蜂がヒットした。
寄生蜂は、青虫など生きてる虫に卵を産卵する。
そして、青虫の体の外に繭を作り羽化する。
見ていて気持ちが良いものではないが贅沢を言う時間はなかった。
夫と愛人が殺し、埋めた妻が甦って復讐する…と言った内容の話を考えた。
妻の死体に寄生した「何か」が、時を経て羽化をするのだ。その為に、死体が動く。
なんとグロテスクで美しい光景だろうか?
月夜の晩に、歩き出すゾンビに想いを馳せた。
7年で失踪者の遺産相続が可能になる…失踪宣告から物語を始める事にした。
7年で咲く花を探した。
月下美人のような美しい花を想像したが、ヒットしたのはショクダイオオコンニャクと言う、世界最大の蒟蒻の花だった。
「ごめん、ごめん、俺、パソコン持ってないから、図書館でネットを見るしかないからさ。」
(°∇°;)はっ…
驚いて息をのみ、私の隣に座った克也に失望しながら苦笑した。
奴は…私とは決して2人で喫茶店などには行かない。
外やら、駐車場、スーパーのエントランスなどで立ち話しかしない。
それは不満だった…
男女の甘い理由ではなく、奴は長い立ち話の上、宇宙人とか超能力の話をふってくるからだ。
ある夏に会った時は、携帯電波の話をしていた…
なんか、電波が思想を支配する話を熱心に話してくれたが、私は道路を挟んで向かいの電柱に登り、なにやら作業をしている人が気になって仕方なかった。そして、その人が電話関係の人ではない事を神に祈った。
克也は、そんな事、気にも止めずに携帯電波の恐ろしさを語っていた。
彼の背後に、昭和の特撮ミステリーの主題歌を歌う、
あのバンドのコラースのビジョンがフィラッシュバックする。
そんな奴との会話。なんか、近所の人に見られたら恥ずかしいと思った…が、今日は別だ。
web小説を完成させ、慰安旅行のモーニングを皆にご馳走する…その野望が、半年後に迫っていた。
『パラサイト』を完成させる。
そして、今まで書いた作品を何とか金にする(>_<。)
その為に、奴はどうしても必要と思った。
ミステリーホラー…
大雑把なカテゴリーだから、なんか、決着つければいいと思っていた。
小説を書き始め、ノストラダムスを調べ直し、結構、怪しげな本の知識を真面目に信じていた事に気がついたから。21世紀、いい年をして、知る子供の頃の夢の真実は私をやさぐれさせた。
私だってやってもいいじゃん。
なんて、なげやりに思った。
犯人が宇宙人でもナマハゲでも、話が面白ければいけるなんて考えていた。
が、そんな簡単なものではなかった…
7年。行方不明者の相続が認められる…失踪宣告の年に合わせて作り始めた物語が、とんでもない方向に走り始めていたからだ。
「別にいいよ…。それより、スマホ買わないの?」
まずは、世間話から始めた。
いくら克也と言っても、いきなり2012年人類滅亡ネタを1年ぶりに会って話すのはためらわれた。
克也は私の隣に座り、懐かしい前のめりの猫背姿であっさりとこう言った。
「買わないよ。5Gは、使うと心を支配されるんだ。」
克也は相変わらず、そんな私の斜め上を走っていた。
それを見て、電波系の都市伝説を世間話のようにサラリと語る克也を頼もしく感じていた。
これならイケる!
奴なら、この、しっちゃかめっちゃかの物語が連れてきた、怪しげな謎をうまく解きほぐせるに違いない。
私は嬉しくなった。
缶コーヒーを二つ買い、そして、図書館が閉館するまでの30分を有意義に使う事に頭を使った。