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番外悪霊3

乱歩の『悪霊』の謎…と言っても、本編の答えを私が書いて見せたところで、泣かず飛ばす…どころか、色々、文句が出るに違いない。


こういった、他人が作り出した世界を引き継いでオリジナルの物語を書くことを二次小説とか呼ばれるが、二次小説で嫌われる部類の話が、この、オリジナルの作者の代わりに解決編を作る行為だと思う。


大体、乱歩を愛し、全集を買いそろえ、キャラの隅から隅まで…それこそ、明智小五郎もビックリの情熱で物語を追ってこられた読者からしてみたら、どこの誰かも…しかも、乱歩愛がそれほど無さそうな人間の描く解決なんて、それこそ、ゴミ…見たくは無いのだと思う。


例え、生前、乱歩と懇意にし、仲の良かった横溝先生が話を継いだとしても…それは、ただの二次小説でしかないのだ。


ついでに、『悪霊』の謎についてなら、多分、世代を越え、プロ、アマ問わず、物凄い人数が、この謎に挑戦したに違いない。

発表されたもの、発表はされても、限定された場所(文化祭の文集)等を含めたら、現代のRPGのシナリオを遥かに越える奇想天外な結末が考え出されたに違いない。


こっちは、それを知らなくても、パクリ疑惑をかけられるかもしれない。


だから、本編の解決はリスキーだからやめようと初めから考えてはいた。


春の推理で、私は、未完の物語を読者に依頼されてオーダーメイドする…そんな話を作っていたので、『悪霊』もそんな雰囲気から考えていた。


解決編を、理論ではなく、依頼をする読者の胸にある結末を当てることでスカッとした話にしようと考えた。


が、時は過ぎ、今は、ホラーとして考え直さなきゃいけない。


そして、使える時間は短いのだ。

ホラーの部分は、なんか占いでごまかすにして、

謎の部分は、なんか、いい感じの話を考える必要があった。


今では、文豪とか、偉い作家のように持ち上げられる乱歩。


でも、生前は、エログロと言う言葉と共に、大衆小説の代表のように思われていた。


まあ、平たく言えば、我々、web作家のような身分だと思う。


ドフトエスキーとか、芥川龍之介の様な、表紙から重苦しくて、なんだかありがたい雰囲気のする部類の作品とは違う。


昭和の始め、文学青年が、ドキドキしながら隠れて読む…そんな部類の話だったに違いない。


ファンの人は否定するだろう…

が、100年前の乱歩先生は、家族を引き連れ、実家でニート生活3ヶ月で作家デビューを果たした、そんな先生は、口々に美辞麗句を投げ掛けるファンより、我々、web作家の嘆きに共感してくれるに違いないのだ。


江戸川乱歩…本名、平井太郎からの破格のキラキラネーム…で暗号推理もの『二銭銅貨』デビューした彼は、家族に言えない悩みを抱え、頭を悩ませていたからだ。


そう、小説を書く人間は、とにかく、大賞をとるために全てをかける。

が、艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えて、晴れて作家デビューを果たした先で待つのは、プロとして、毎回、結果をだし続けなければいけないと言う現実なのだ。


これについて、私は、経験がないし、経験できる未来も無さそうなんだが、

晴れて書籍化したweb小説家の経験談を拝見すると…悲しいほどの地獄絵図を垣間見た気持ちになる。


そう、受賞は…素人からの卒業ではあるが、

プロ生活のプロローグでしかないのだ。


受賞を果たし、作品が世にでて、そこから見える景色が、美しい山々の光景とは限らない。

断崖絶壁の深い谷底かもしれないのだ。


少なくとも…乱歩は悩んでいたらしい。


まてよ、気のきいたトリックが浮かばねぇ…(○_○)!!


と、言ったかどうかは知らないが、乱歩は随分とはじめの方で、既に、ミステリーの要と言えるトリック等が浮かばなくなっていたようだ。


まあ、この辺りで、大概の作家は脱落する。

が、腐っても江戸川乱歩…エドガー・ポーをもじった名前は伊達ではない。


乱歩先生は、進路を変えた。

本格ミステリーとか、トリックが思い浮かばないなら、心理サスペンスを書けばいいじゃない。


マリーアントワネットを思わせる、コミカルな表現をしてみたけれど、

こんな事を実行できるのは、才能があるからだ。


マリーの言葉に、民衆は暴れたけれど、

本格推理も心理サスペンスもかけない私も、そんなん言われたら暴れるに違いない。


まあ、それはともかく、乱歩先生は、このピンチを乗り切り、後に明智小五郎と言う、日本の推理小説を代表する名探偵を産み出した。

1925年『D坂の殺人事件』である。


そんな、乱歩先生にこの、世紀を越え、ネット小説の最前線で蒸し返される惜点(おてん)として残されたのが、『悪霊』と言う物語だ。

それは1933年、デビュー10周年の終わり近くに舞い込んだ話だった。

自分の才能を発掘、デビューさせてくれた雑誌社からの執筆依頼…


これが後に未完となり、物議を醸すのだから、乱歩先生からしたら、この依頼こそ、悪霊付きの物語なのかもしれない。


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