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9話地獄

思えば、私の子供の頃、地獄は身近な存在だった。

ブラウン管の向こうの近代モダンなヒーローと戦うのも、地獄からの来訪者だった。


ばーちゃんは、子供に善悪を語るとき、地獄を持ち出していたし、昔話には、そんな地獄を旅する話があった。


令和の現在、地獄と言うと、なんだか特殊な感じがするが、私が生まれる遥か前、1919年西條先生が、児童小説を書こうと思い立った頃もまた、地獄と子供は近しい関係だったのかもしれない…


そして、もっと昔、中世のフェレンッェで、1人の男が名作を世に産み出すのだ。


名作…と、書いては見たけれど、思うに、当時の人達は、彼の作品をイロモノ程度に考えていたに違いない。


そう、私の目指す『なろう系ファンタジー』と言う奴を見るような気持ちだったに違いないのだ。


ダンテ・アリギエーリ。

後に、彼の作品はイタリア語の元になり、数々の名作、作家に影響を及ぼした巨匠である。


こういう人物を例にあげると、なろう系と呼ばれる文学と並べたもうな!と、ネットの批評家に叱られる。

シン曲を『かみきょく』と呼ぶような奴等に、ダンテを語る資格なし。

と、言いたいのだろう。

神曲ではない。シン曲である。

うーん…片仮名にすると、これもまた、サブカルチャーっぽくなるなぁ。


まあ、漢字に変換する際も、『かみきょく』のほうが今はサクサク変換できる時代ではあるが、昭和の時代、この字を見て、『かみきょく』と発音する人間はいなかった。


この、あまり使われない単語は、ダンテの作品『神曲』の為にあったようなものだからだ。


が、まあ、ダンテの人生は、まさに、ラノベの主人公のようである。


フェレンッェの裕福な家に生まれたダンテ。

少女に熱烈な初恋をしたが失恋。

大学を出て、政治闘争で負けてフェレンッェを追放される。


そこで、ダンテは北イタリアを旅しつつ、執筆活動をする。


1318年、流浪の旅を終わらせて、安住の地を得るが、1321年病気で亡くなる。

奇しくもこの年に『神曲』は完成する。


ネットのファンタジーのように無双もチートもなく、追放されてケモミミ美少女とキャッキャうふふと楽しむことは無かったが、彼は、後のヨーロッパ、及び、現在のネトゲの世界観の根幹とも言える地獄の概念を作り出す。


そして、初恋の美少女、ベアトリーチェと、彼の世界で夢想はしたのだ。


女性として、彼の人生を考えると、ダンテの妻のジェンマを思い、いつまでも初恋の女を思いながら、ブツブツ妄想を垂れ流す…

こんな旦那は嫌だな。と、素直に思う。


と、同時に、良い歳をして、恋愛の文章練習の為に作り出したキャラクターと色々書いてる自分の行為が突き刺さる。


痛い!


痛いんだ、文学ってやつは。



まあ、それはともかく、こんなに偉大な作家のダンテも生前は泣かず飛ばずだったらしい。

気持ち的には、私と同じような底辺人生だったと思うと、どことなく、親近感を感じるし、

新しいことは、その時代には理解されないものなんだと、変な勇気も持たせてくれる。


ダンテ…ドゥウランテの名前の意味は『永続する者』らしい。


生前、小説の評価が低かろうと、彼の作品は、ゲーテ、そして、昭和の日本の漫画のモチーフにもなり、こうして、ネット文学大賞の最先端でも話題になる…名前に偽りの無い人物だ。


これだ!うん、これにしよう!!


『トミノの地獄』の明るい解釈を目指す私は、ダンテにインテリシェンスを貰い、不気味なイメージをイタリアのオペラ座のようなきらやかなイメージに改変を試みた。


ダン・ブラウン先生の『インフェルノ』を読み、そして、映画を見た。


映画は、イタリアロケがふんだんに盛り込まれ、ロマンチックな世界に…

少女漫画のような華やかな世界に引き上げてくれると考えていた。


が、忘れていたのだ。


この『インフェルノ』は、ダンテの物語ではなく、主人公は現代の学者先生で…人口を減らす謎の組織とパンデミックと戦う話だったことを…(>_<。)


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