4話ファンサービス
『パラサイト』は、一万字程度の短いアンコール作品だ。
私の作品に対しての最高ブックマークは5だ。
二桁無いと底辺作家と呼ばれる世界で、しかし、私には途方もない数字であった。
丸2年。この作品のブックマークを越すことは無かったから。
私は、小説を書くのに不満が溜まると、『オーデション』と言う作品についた、このブックマークを見に行った。
ブックマーク5。
これを越すのが目標になっていた。
ある日、私が『オーデション』の情報を見に行ったとき、ブックマークが減っていた。
衝撃だった
消えたブックマークに、読者だった人物の人生が見えた気がしたから。
3回目の冬を経験した。
つまり、学生なら入学した学校を卒業する…それだけの年月が流れていた。
私のサイトでは、退会するとブックマークも消えてしまうのだ。
私は、はじめの作品が完結出来ないまま、3年を費やしていた事を、ここでしみじみと感じたのだ。
終わらせよう。人生は有限なのだ。
童話『ハッピープリンス』の死んでしまった燕を思い出した。
剛も良い歳になっていた。来年はオリンピックがある。華やかなこの年に、無理をしても長い夢だった泊まりの旅行に行くことを決めた。
それは、未完の物語を何とか終わらせる…小説家としての活動の区切りをつける…そんな意味もあった。
昔、母が好きだったファミリードラマのように、最終回のスペシャルですべての問題が解決する…
それは無理でも、高校3年の甲子園を目指すような…
完結しなくても、『やった』感をだして区切りをつけられる…そう考えた。
web小説の甲子園…
それは、公募の大賞を目指す事に違いなかった。
私は、自分のサイトが開催する…少し大きな公募に作品を投稿することにした。
入選しようが、しまいが、これで一区切りをつけようと考えたのだ。
既に書き始めた少女向けの作品が7万字に差し掛かっていた。
これを本命になんでも、応募しようと覚悟を決めた。
剛と来年、名古屋に行くことを確認した。
本気で行こう!と、皆で覚悟を決めた。
そして、こんな私を応援してくれた見知らぬ読者に…短い短編のアンコールを。
『オーデション』の最後に書いた、小さな謎の答えをそっと載せて、最後の戦いへと挑もうと考えていた。
私は、未完製造機みたいなところがある。
が、公式の短編イベントは全て完結して投稿できていた。
だから、やれるって思っていた…
私は、前々から気になっていた推理のカテゴリーに挑戦しようと考えた。
ドイルを思えば、書けないと思ったが、
トンデモ歴史物や超常現象のトンデモ解明でも、私のサイトの読者は受け入れてくれる事に気がついた。
面白くて、ちょっぴりタメになる
そんな短編をそっと残そうと考えた。
あの消えたブックマークの人が、いつかそれに気がついてくれたら…良い物語になるんだけどなぁ…
なんて、ネタ帳に書き記しながら。