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ランチ

穏やかな水曜の昼だった。水曜定休の私はランチを男と食べている…

と言うか、男の方はソーセージとビールを昼間っから楽しんでる。


男の名前は山臥やまふしと言う。若い頃、フリマにハマった時の仲間である。

彼はロマンスグレーというより、江戸川乱歩の『白髪鬼』と言う小説の恐怖で一夜で白髪になったっ人物の様な白髪で、永遠の55才なんだそうだ。

そう言われて時から、わたしはその事を考えることはしなくなった。

どちらにしても、人間離れしてるので年齢とかは意味がない気がする。


なんで、山臥とランチをする事にしたかといえば、小説のネタとここ最近の熱帯夜と悪夢から解放されるためだ。

ついでに、7月の初めのあたりで地震が来るとか言う予言が終わる前に記事を書いて目立ちたいとか、そんなバカな気持ちもあってご飯を食べる事にした。


山臥は半農の無職で、でも、どうにか生きていた。

顔にシワが増えたとはいえ、若い頃、女にモテたと言うだけの雰囲気は残してる。


「君から突然のメール。嬉しかったよ。」

と、ビールを飲み終わって山臥は昭和の色男の様な照れ笑いをうかべる。

「うん、ちょっと、夢見が悪くてね…」

私はぶっきらぼうにそう言って、それから、反省する。

WEB界隈、最近流行りは *少女小説*ああ、小説を書き始めてから何度も夢見た、少女時代の夢を私は書きたいと頑張ってる。


でも、なんか、書けば書くほどオカルト界隈に流れるのだ。


もう、この変な小説を完結し、そして、蜃気楼の様な少女小説の世界を書き殴る…じゃなくて、爛漫の少女の夢を花開かせたいのよ!

確かに、最近は悪役令嬢とか、溺愛とかが流行りらしいけれど、公募の金賞を狙うんじゃなきゃ、まだ、勝算はある話なのよ。

だって、私は人口の多かった昭和生まれなんだもん!

私が見たいなら、同世代で見たい人がある程度いるに違いないのよ。

昔と違って、ネットを使えばある程度の同士に出会える時代なんだもん。

夜空に手をかかげてUFOを呼ぶよりも、生産的で確率がある行動なんだもん。

うまく昭和のテンプレを作りさえすれば、私にだって浮上のチャンスはないわけではないのよ。


WEB小説は、電子や直接のフリマの様な同人イベントもあるみたいだし、たまには都会に出てファンの人達とお茶会するの。なんか、有名なホテルの、最近流行りの英国風のティーパーティーみたいなのをするんだわ。

人気とお金を儲けて、少女時代に好きだったあの先生…は無理だろうけれど、そのアシスタントをしていた絵師さんに挿絵を描いてもらって。そして、そして…絵師さんを囲んで懐かしい昭和少女の話をするのよ。

あああ…素敵。


「失礼、君が返事をしてくれないから、ビールのお代わりを頼んでしまったよ。」

大ジョッキがてーぶるに置かれる音でハッと我に帰る。

イカン、最近、睡眠不足で意識が飛んでしまう。

「…私、そのビール代は払わないからね。」

照れ隠しを兼ねて少しキツめに山臥に言った。

山臥は無職状態だったし、春頃、羽振りが良かった頃に奢ってもらって迷惑もかけたので、今日は私が奢る事になっていた。

「ふっ、心配しなくても大丈夫さ。無料クーポンを使うからね。」

と、山臥は胸ポケットから60年代のアメリカ映画の俳優の様にスキットルボトルでも取り出す様にスマホを取り出してみせた。


(´⊙ω⊙`)…

「山臥サン、スマホデビューされたんですね!!!!」

私はなんだかドキドキしながら黒革のスマホケースを見た。

「はぁ。仕方ないんだよ。時代と、お客様担当のルミさんに言われてね。」

と、満更でもない様に山臥はケースを見せびらかした。

「そうなんだ。良かったね。」

と、私はここでジュースを取りに行く。今日はやけに暑いし喉が乾くし、こっちもフリードリンクを貰っってこなきゃ、やってられない。それに、山臥のスマホ自慢なんて聞いてる場合じゃない。小説を進めないといけないんだから。

そう考えながら、自慢げにスマホを見せびらかしていた剛を思い出していた。

剛の為にWEBで小説を書き始め、結局、どうにも出来なかった。

『悪霊』の考察文書いた時には、すでに亡くなっていた。私は…剛を悪魔の扮装をさせて物語にだしたまま、どうしたっけ?


〈酷いよ…そのまま 忘れちゃうなんて〉

剛は三角の小さな豚耳をつけて作業服で台車に座って文句を言う。

〈ごめんね、結末、つけられなくて。〉

私は心で剛に謝る。でも、あの時は、本当にどうしていいのか、わからなかった。

そして、今回も、終わる気がしないわ!


「酷いな、それだけ?」

甘える様な山臥の言葉に苦笑で返す。

「だって、あんたは『アイ トウ 愛』で、スマホ主義じゃないんでしょ?」

私の皮肉を…山臥は面白そうに笑顔で受けた。

「そうだったね。わかった。」

と、山臥は昭和のイケメンスマイルにウインクを私に飛ばした。

「……… それより、話を聞いてくれる?私、小説を書いてるんだけれど、江戸川乱歩の『悪霊』について話したじゃない?」

私はそこから、最近、投稿した物語ことを説明した。


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