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ゆうげ


 穏やかな日曜日。私は田んぼのカフェにいた。

晴香と約束を知っていたのだ。晴香は少し遅れて喫茶店にくると私に笑いかけた。

 「まった?」

気さくな笑顔に心が和んだ。

「ううん、私もさっき来たんだ。」

と、私も笑った。

 私たちはケーキセットを頼んで、世間話を少しして、そして、私は今来ている小説について話し始めた。


 「私、今回の小説書いたら、名古屋に行こうと思うんだ。」

名古屋には行きたいとは思っている。が、小説は完結できない気がした。

晴香は静かに私の話を聞いていた。

 私は話した。本来の物語の構成を。

 


 『普通に書けばいいじゃない。』

心に残ってる剛の言葉通りに、等身大のやつの話を書こうと思っていた。

でも、なんだか書き出すと、雲行きが怪しくなるのだ。

「そうね、名古屋、一緒にモーニングできるといいわね。」

晴香は穏やかに笑う。

「うん。本当はもう少し、小説でお金を稼ぎたかったけれど、本当に難しいんだもん。来年は9年めだし、もう、この辺りでなんか区切りはつけたいんだよね。」

私は話した。

 

 確かに、私の話は人気はない。それに完結してないし、色んな難がある。

でも、私にも完結でき、そして、大衆に共感が得られる物語のプロットはある。web小説を書く話だ。

 正直、異世界ファンタジーで1発当てたいとは思う。が、それは結構難しいのだ。そして、万人受けはしない。

 が、中高年が、人生の終わりに電子書籍で人生を振り返るというのは鉄板だし、ここに墓仕舞いとか、思い出の整理について書けば、興味のある人が出てくると思う。

 終活や墓仕舞い。人生の整理と、残したいものについては、中高年の興味をひけると思うからだ。

 そう、この世はネットの時代。想いを残す人は何もリアルワールドの住人とは限らないからだ。


 「私、テンプレを作ろうと思っているんだ。普通の私の物語は、平凡でつまらないかもしれないけれど、それでも、多くの人に共感できる流れなんだと思うんだよね。

 だから、私の話をベースに、自分の物語を電子書籍化してみませんか?みたいな雰囲気で作ろうと思ってるのよ。」

と、説明しながら不安にもなる。普通 簡単に言ってるけれど、小説を書いてるとなんか、変の方向に流れてゆくんだ。

 剛の話だって、普通に描きたかった。

 法王の崩御で思い出しながら、ごく平凡な剛の物語を…

 それが、なんで人類の存亡と惑星パレードに流れるのか、泣きたくなる。

「別に、普通じゃなくていいんじゃないかな?」

一通り話を聞いてくれた晴香が控えめにいう。

「え?」

「うん。私たちのメンバーって皆んな個性強いじゃない?特に男性人。」

晴香が少し渋い顔でコーヒーカップを手にする。

「あ、ああ。剛とか、克也とか、山臥さんとか。ね、」

私もため息が出てくる。確かに普通の物語をするメンバーではない。

「でしょ?随分、変わっていたもの。山臥さんは酔っ払うと怪しいし、克也さんは相変わらずなんでしょ?」

晴香の言葉に頷いた。

「うん。今年、8月に惑星がパレードで人類が滅亡の危機なんだそうだよ。」

私は手短に克也の活動を話した。

「相変わらずね。この間、道で出会って、なんか細かな書き込みのある

住宅地図をもらったわ。困ったら、こっちに逃げろとか言われた。」

晴香は疲れたようなため息をつく。

「ああ、私も2012年にもらった。クリスマスプレゼントだと思ったら、うちが倒壊する預言書だった。」

なんだろう、笑いが込み上げる。

「でしょ?これで、普通を考えるのは難しいとおもうわ。」

晴香は呆れながらそう言って、「卯月さんの子供の頃の話なら、おm白そうだけれど。」と続けた。



 私たちはそんな話をしばらくして、そして、別れた。


 結局、なんの解決もしなかったけれど、それでも、何か、得た気がした。

とにかく、書いてこう。

 面倒な展開ではあるけれど。

 特別か、普通かなんて、主観でしかないんだから。


 ふけゆく夜に一人、私は物語を書き始めた。


 惑星のパレードの話は、予想を超えて面倒な展開になってきた。

 とにかく、180度の間に惑星が入るのは、それほどめずらしいと言う訳でもないようだった。


 初めは驚いたけれど、地球より内側を回る、水星と金星は太陽と共に見えるから、土星と木星の動きの遅い惑星が近い距離にいれば、ホロスコープの片側に寄るのは、そんなん珍しい事でもないようだ。

 

フランシスコ

ベネディクト16世

ヨハネパウロ2世

と、亡くなった日に惑星が片側に寄っていたので、不気味な気がしたけれど、ホロスコープの180度に6つくらいの惑星が入っていても、それほど珍しい訳でもないようだった。

 でも、さまざまなホロスコープを見てきた私には、そう言われても、納得が出来ない気持ちもあった。

 ここにきて、ヒトラーの誕生日のホロスコープも半円に惑星が寄っているように見えたし、ケネディの誕生日も、ファティマのセイバが現れたのも、なんだか半円に集まって見える。

 でも、クロウリーのホロスコープは惑星がバレけていた。この方が普通に思えるのに、なんで今回の登場人物はこうも惑星が寄るのだろう?


 こうなると、気になるのが法王の誕生日のホロスコープである。

 もう、誕生日も調べて、片側によっていたら考えないことにしようと思った。


 

 

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