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舎弟


 「失礼しますよ。お話が終わったようなので、あっしの話を聞いてもらいたんですがね?」

惚ける私の前にやってきたのは、猫背の少し強面のじーさん。

ノストラダムスの予言の本の精だ。


「やってきたわね。でも、もう騙されないわ!私にはネットと、このペンダントがあるんだからっ。」

月の星占いの本の精からもらったペンダントを見せた。

毎回、こんな変な構成文を書きながら、でも、私だって未完を増やしてるだけではないのだ!

それでも、異世界ファンタジーに投稿する夢は諦めてはいない!


 と、いうか、書籍はなんて無理っぽいと気がついた8年目、もう、全ジャンル攻略するくらいしか、やった感、エンディング感を出すパフォーマンスが思いつかないのだ。

 つい2年前くらいは、モーニングの代金を稼いで名古屋に行ったら、いい感じに終われると思った、

 それで、未完とか、そういうのを消し飛ばすくらいの勢いが出ると思った。

野球少年のように、甲子園に行けなくても、その成果でいい感じのエンディングが演出できるって思ってた。

が、それは無理そうなのがわかった。

 そして、7年も書いていれば、それなりに読んでくれる人も出てくるし、ブックマークをくれる人もいる。

 その、ブックマークが外れないのだから、こちらも負けるわけにはいかない。泣かせてやるんだ。読者を!そして、退会するときには星の金貨のような、評価という流星群が流れる様を目撃するんだ。

 悔しいけれど、興味がある物語なら読んでくれる人がここにはいる。初めは宇宙人を呼ぶくらいに遠い存在だったけれど、今は幻の大魚『タキタロウ』くらいは存在を感じられるようになった、読者という名のUMAが。

 人生、最期まで宇宙人には交信はできないと思う。でも、自分の作品のファンにはきっと、思いは届くはずなんだ。ファン、いる。多分、宇宙人よりいる確率はある!

 子供の頃、夏のスペシャル番組に感化されて町内の子供達で空に手を伸ばし、宇宙人を呼んだ。

 結局、UFOは来なかった。あの時は10分で諦めたけれど、今回は、既に7年も続いてる。

 剛の夢を乗せて私はきっと、未知と遭遇する!多分…


 それに、ここでファイドアウトをしたら、自分が後々気にかかる気がする。思い残す事なく終わるには、なんか、『やった感』は必要なのだ。

 で、異世界ファンタジーは書こうと思っている。

 いまだに、あそこのシステムがよく分からないけれど、少しづつ考えている。若い人との共通の話題。webで小説を書く。これからファンタジーの種を作り出してる。私、頑張ってる。うん。頑張ってはいるんだ。


 まあ、とにかく、そんな感じでファンタジーのアイテム作りを絶えず開拓しなくてはいけないのだ。

 現実にあるエピソードを象徴に物語のアイテムは作られる。

 私にとって、本のから貰ったアイディアや情報は、さまざまな形に加工される。と、いうか、そう、意識するようにしている。

 ホロスコープの情報はペンダントに加工され、心に保存される。いつか、私があの、黄金の匂い溢れる夢の人気ジャンルに足を踏み入れるその時まで。


 おっと、脱線した。が、予言の本の精は大人しく私が落ち着くのを待っている。


 「それで、やっとあっしも話が出来るってもんです。克也さんが図書館で読んでいた本は、たぶん、あっしの舎弟しゃていじゃないかとおもうんでさ。」

予言の本の精はそう言ってキセルを取り出した。そして、ゆっくりとそれを吸い出した。

 キセル、かぁ。

ふと、キセルは児童小説の登場させられるんじゃないかと考えた。タバコの扱いは日本はもとより海外も厳しい。でも、アナ玉を舐める名探偵というのは、なんとも情けなく感じる。せめて、キセルやパイプをなんとか出来ない物だろうか。


 「舎弟って、あなた、シリーズ物だったわね?」

私は昭和に人気を博したレジェンド作品を思い出した。このシリーズの凄さは初めの本が20年50版以上を刷り上げたということにある。

 古本ですら、20版とか、本当に初版を主にか狩るどころか、1桁にも出会えないというところにある。だから、ところどころで訂正がかかって、同じ題名の本でも、版に違いで色々と楽しめる、本当にレジェンド級の作品なのだ。

「へい。さようで。」

予言の本の精は低姿勢だ。

「どう言う事?」

「惑星直列と世界の滅亡はあっし達の縄張りですぜ。」

本の精の目が光る。

「そうね。でも、そうかしら?」

私は少し考えた。確かに昔は人気の本だった。私がこの本を知り合ったのも図書館が初めだった。だから、去年、ソ連のミサイルで世界が滅亡する予言を読んだところからなので、この予言本を信じるという感覚にはならなかった。

 それどころか、本屋に売ってる新しいものと、図書館の古いものを比べて、『怪しい』とか思っていたくらいだった。

 でも、それでも全巻定価で買わせる勢いがこの本にはあった。

 新世紀 新しい時代と共に一度は捨てたこの本を古本で買い、年老いた現在、いまだに謎を追い求めるくらいに。


 「へい。間違いありやせん。」

「断言するわね?でも、違うわよ。あなた達は図書館の棚には置いてないもの。」

そう、一度、図書館で検索したことがある。初版本が残っているかと思って。

でも、もう、所蔵されてはいなかった。

「いいえ。多分、そうです。いや、舎弟ではなくとも、それに影響を受けた輩

(やから)には違いありやせん。」

本の精は自信満々だ。

「理由はなんなの?」

ここは、所蔵の事実ではなく、理由が大事なのだ。

 予言の本の精は、ゆっくりとキセルを蒸して、それから、少し穏やかに話を始めた。

 


 

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