カタリ派
しばらく、本の精の話を聞いていた。
ザビエルはスペインとフランスの国境近くに住んでいて、ポルトガルの王家にも面識があるようだった。
サンフランシスコはスペインからの移民が18世紀には多く住んでいて、イエズス会の宣教師も沢山いた。
スペインにはイエズス会の信者が多そうだしファティマの少年、フランシスコも何某かの縁が想像された。
本の精は言った。
「前法王のヨーゼフはベナディクト会に縁があるからベネディクトを名乗ることにしたんだ。名前の選定には自分の歩んだ軌跡やサポートする人間への想いも加算される。
例えるなら、小説やろうで書籍化した作家が、ミステリーの有名な賞を取った途端、江戸川乱歩がルーツとか、名前をそれっぽいものな変えたら、ファンは反発するだろう?
それと同じだよ。」
確かに、一理はある。が、WEB小説の作家って、割と考えずに名前をつけちゃうから、ニュルルン・ほい とか、るるんチャン なんて名乗って書籍化、ミステリー大賞を受賞したら、もう少しまともな名前をつけたいとは思う。
なにしろ書籍化、アニメ化したら、個人情報は身内にはバレちゃうし、この年で、るるんチャンとか名乗っていたのはネットに闇に沈めたい。
それに、私はヤロウで乱歩を大真面目に追っかけてるけど。
「そうだね。」
とりあえず、同意する。今は私の活動とかはどうでもいい。早く物語を終わらせないといけないんだ。
「そう、前法王ベネディクト16世の時代には沢山の問題が起こった。それはスキャンダラスな内容もあって、カトリックの腐敗を唱える人物も現れる。
これらのガス抜きも兼ねて今ままでにない、新しさのある人選をしたのだと想像できる。
イエズス会から向かい入れ、清貧の聖人 フランシスコを名乗ったのもそのためだと思う。」
本の精霊は少し自分に酔うように演説する。
「それ、なんか、覚えてる。2012年とか、時代的に退廃した雰囲気があったもん。」
私は2012年を苦々しく思い出す。
自作の昆虫サスペンス『パラサイト』は初めは普通のサスペンスミステリーだった。
妻を殺して失踪宣告のできる7年後、2019年に埋めた妻の死体が7年に一度、咲き誇る花と共に蘇る…よくあるサスペンスだった。
が、2019年からの逆算で更新しながら書いていたので2012年の呪いにハマったのだった。
2012年はマヤの予言で人類が滅亡するとか言われていた。
ああ、ショクダイオオコンニャクって所でやめときゃ、なぁ。
かえすがえすも後悔が込み上げるが、それでも、この作品は、たまに読んでくれる人がいる。
大概、完結とともに私の作品は読めれなくなるんだけれど、この作品は違った。だから、気持ちはいつも複雑である。
脱線した。
お陰で私は2012年をおさらいすることになった。
ここに来て、また、『パラサイト』が並行してついてくるような感じが不気味だった。ヘットフォンを外す。
気がつくとふけゆく夜に、私の背後まで闇が忍んで来ている感じがする。
不気味な気持ちに慌ててヘットフォンを装着し直した。
「ねえ、聖フランシスコって、どんな人なの?」
私の質問に本の精が雄弁に話だす。
聖フランシスコ
アッシジのフランシスコは1182年から1226年を生きた人物である。
生まれはわりと裕福な家庭で、メフィストがいう通り名前に由来は「フランス人」程度の意味で、あだ名のように使われていたようだった。
この人は、フランスはプロバンスの人らしく、スペインよりイタリアのひととの交流が多いみたいだった。
彼の人生の転機の一つに1200年初頭の戦闘があるらしい。
と、ここで、本当に嫌な予感が走る。
過去の記憶が一つのワードをうかぶ上らせる。
カタリ派…
私は検索を始めた。




