フランス
「フランシスコなんて、履いて捨てるほどいますぜ。日本のヒロシくらいメジャーな名前ですよ。
でも、内閣総理大臣にヒロシはいませんでしょ?」
参戦してきた未完の登場人物メフィストが聞く。
「そう、だっけ?」
内閣総理大臣の名前なんて、そんな覚えてない。
「そうですよ。全く。異世界人の私すら、それくらい常識ですからね。」
と、悪魔に説教される。
「すいませんね。私、人の名前、覚えるの苦手なんだもん。」
アイドルも5人とかいると覚えられないんだから勘弁してほしい。
「それなら、カイム殿下のことも忘れてくださいよぅ。やっぱ、年上がいると面倒なんです。」
メフィストは未完の登場人物に文句を言い出す。
「関係ないじゃん。もう、帰ってよ。私もGWの間に終わらせようと頑張ってるんだから。」
文句を言う。私だって予定通りに書きたいわ。でも、予感がするんだもん。
「では、私もここでアシストします。早く、こちらの話を始めて頂かないと。」
メフィストは優雅に紅茶を飲み出した。
全く、面倒な妄想だ。7年の創作活動で上手くなったのはこんな事くらいだ。
「うん、静かにしていてよ。それにフランシスコには意味があるはずでしょ?」
そう、ローマ法王の名前は就任時につけられる。意味がないわけはない。
「ありますよ。フランスって意味です。」
メフィストはフテ臭っるように言う。
「フランス?」
「はい、イタリア風味にフランス、そうですね、フランソワとかの方がイメージ湧きますかね?まあ、フランソワをイタリア風味に言うとフランシスコになるわけです。」
メフィストは自慢げだ。
「フランス?イタリアなのにフランス??聖書の聖人の名前じゃないの?」
私は混乱した。なんとなく、キリスト教の聖人は紀元前とかの聖書の人物から出来上がっているもんだと思っていたから。
「アッシジの聖フィランチェスコが有名です。」
本の精霊が穏やかにそう言った。
「そうなんだ。フランチェスコ…なんか聞いたことあるわ。清貧なお坊さんだったのよね?でも、ファティマの聖母の選んだ人物と同じ名前は、なんだか気にはなるわ。」
そう、法王の名前は就任の時に決められるのだから、これに気が付かないわ毛でもないと思う。
ファティマの聖母に選ばれた少年少女は3人。そして、男の子はフランシスコ1人である。
私はこのエピソードに『トミノの地獄』の構成を見た。
姉とトミノと妹と…
ファティマの聖母が1番に教えた秘密。
それは地獄が存在すると言うことだった。
「マジレスしますがね、本当に考えすぎはいけませんよ。では、質問です。」
メフィストが立ち上がって自慢げに私に問題を出してきた。
「日本に布教しにきたザビエルのファーストネームは?」
「フランシスコ!あ。」
反射的に叫んで、バツが悪い気持ちになる。
「ね、よくいる名前なんですよ。特にイエズス会には。だから、とっとと進みましょう。何が気になるんです?」
家庭教師のようなメフィストに、悪魔にキリスト教のことを教わるなんて、なんとも屈辱的な気がした。
 




