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フランシスコ


 自室でたくさんの本に囲まれながらファティマの予言を考えていた。

静かな春の夜は更けてゆく。

 イヤフォンで気に入った曲をかける。

 ジャズの音色と共に一冊の本を取り出す。ファティマの予言の本だ。


 この本を擬人化する。

 異世界恋愛の練習を兼ねてイケメンを想像する。

 彼は日本人。年齢は28歳独身。革ジャンと細いジーンズの野生み溢れるキャラクターだ。

 70年代をイメージしたので当時はやったウルフカットと呼ばれる髪型である。が、令和では少し

野暮ったいので、もう少し短く、それでも、襟足ともみあげは長めに、今ふうに整える。

 「俺はオールバックでもよかったけどね。」

彼は少し控えめにそういった。

細めのジーンズはラッパズボンと呼ばれて…今はベルボトムと呼ばれるデザインにする。

 このデザインは、姿勢がいい人が着用すると足が長くみえる。

 少女時代、私ん周りには着こなせる人間がいなかったので、裾が邪魔になって忠臣蔵の『松の廊下』などと笑われる、嫌われアイテムだった。

 が、成人してから、一度、大型バイク乗ってきたライダーが喫茶店に入ってきた時、その美しい座り姿に感動した。

 黒いサングラスを外すと、しわしわのジーさんなのに、それが渋く感じる、モデルのような男性だった。

 ファティマの本の精霊もそんな感じにする。

 昭和風味の、少しワイルドな男臭い細マッチョ。


 「その方が格好いいわよ。時代は回るもん。その髪型の時代が来ると思うのよ。」

苦笑しながらいった。インディアンにしても、ローマ時代の北欧人にしても、長い髪には霊力が宿ると信じられていたらしい。

 あそこまで長くないにしても、長髪の方が神秘的な雰囲気がある。


 「それはともかく、ファティマの予言について少し、説明してくれない?」

私の言葉に、彼はヤレヤレ顔で話始めた。


 「ことの起こりは1916年。場所はポルトガルのファティマと呼ばれる小さな村だ。」

彼の声は低く通って聴きやすい。「この辺りは北アフリカ、モロッコと近いこともあってアラブ人も住んでいて、時に戦争も絶えない地方だった。」

「レコンキスタね。15世紀の終わりあたりまでイベリア半島は混乱していたんだっけ。」

ダビンチや、ボルジア家の話を追いかけていたのを思い出した。

「ああ、ファティマは1158年にムーア人の姫ファティマとオウレン伯の婚姻を記念して名付けられた。『ファティマ』とはイスラム圏の女性の名前だ。」

本の精の言葉に調べたいろいろを思い出す。

ファティマを検索すると、何故かイスラムのお守りがヒットして混乱した。

「時は流れて20世紀。この長閑のどかな村の幼い羊飼いの少年少女の元に天使が現れる。そして、近々、聖母がお前たちに会いに来ると告げる。」

本の精の話を黙って聞いていた。

空想とはいえ、他の人物から聞くと何だか怪しく感じる。

これは本当に天使なのだろうか? 私には人間に思える。

昔、調べたジャンヌ・ダルクの時にも感じた胡散臭さを感じる。

確かにファティマは田舎ではあるが、三大キリスト教の巡礼地 コンポステーラで人が行き来する巡礼地の近くである。

 時は1916年。第一次世界大戦の真っ只中。兵役を逃れるために放浪する、そんな人物もポルトガルやスペインには沢山いたのではないかと思われた。

「そうね。それにしても、キリスト教の神様って羊飼いが好きよね?」

イスラエル王・ダビデも確か羊飼いだった気がするし、調べればもっと登場しそうである。

「まあ、清貧なイメージなんどろうな。日本で言うところの田舎の農夫のイメージなんだろう。」

「そうね、そう考えると、それほど、意味はない気もするけれど。」

と、言いながら、わざわざ聖書で預言を受けやすい職業が選ばれるのも怪しくも感じる。

「子供のできる仕事も限られているからな。天使は3人の子供をメンセンジャーに選んだ。

 年齢の上の者からルチア フランシスコ ヤシンダの3人だ。」

「え?フランシスコ!フランシスコだっけ!!!」

思わず叫ぶ。

フランシスコ、法王様の名前じゃないのっ。しかも、記憶が正しければ、フランシスコを名乗る法王は彼が初めてだったはず!

 何だか、長くなりそうな嫌な予感がいてきた。


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