100年
春の夕げは静かにやってくる。自室に1人、年配者のGWは賑やかか、孤独かに分かれる。
今年のGWは1人になってしまった。
少し寂しくもあり、ホッともしている。今年、なにか完結し物語を作り上げたいと思っていた。家族がいると、そんなことに構っている時間はなくなる。
静かに、本を読み、小説を書き、溜まってしまった思い出を処分しなくてはいけない。
どこからともなく、沈丁花の甘い香りが漂ってくる。
お気に入りのピアノ曲を再生する。気持ちをアゲる。
そうしながらも、朝の一件を思い出す。
最後の法王 ファティマの予言 復活祭
暗く忍び寄るヒトラーの影。
ため息が出てくる。
恋愛小説を書こうと決めていた。でも、私は道を間違っているのかもしれない。
今から100年前。1925年江戸川乱歩が作り出した明智小五郎は、日本を代表する名探偵に成長する。
そして、この年、乱歩は作家一本で生活することを決意するのだ。
これがどんなに大変なことか、乱歩の不安、夢、期待、絶望…
我々、WEB作家なら、その思いが心に沁みてくると思う。
彼は、当時、いかがわしいと思われていたミステリー作家としてエログロという部門で執筆を始める。
エロをかく。
それは、手っ取り早く人と金にありつける禁断の行為である。
一度、それをするとエロ作家として経歴が残るし、どう頑張っても純文学より下品に思われる。
その上、セカンド作品が爆死したら、もう、地獄を旅する気持ちに違いない。
乱歩が人生の分岐を歩んだこの年は、ドイツではナチ党が運命の分岐にあった。1918年に組織されたこの党は、1925年ヒトラーとともに再結成することになるのだ。
部屋に積もったナチスの本にギョッとなる。
私が突然死なんてしたら、家族は私を危険思想の人物だと思うのだろうか。
そう考えると、さっさと本を処分したくなるが、こんな偶然があるのだろうか?
100年の時を経て、ヒトラーの誕生日に復活祭、そして、翌日、最後の法王と噂されたフランシスコ法王が体調を崩されて天に召されるのだ。
まるで、役目を終えて天に召されたように。
4月20日の復活祭にアメリカの副大統領と会談し、復活祭にも出席されている。
現在の混迷とした世界情勢の中、文字通り、重篤な体調の中、奇跡のように回復を果たし、儀式に参加、そして、アメリカの副大統領との会談。
何か、聖なるものの導きでもあったんじゃないかとか、考えてしまうのは人情だと思う。
昨年、アメリカの大統領選挙は行われた11月に冥王星が星座宮を移動していた。冥王星が宮を移動する時は、波乱が起こると言われていた。
私はその時もまた、自作のメフィストの悪夢を見ていた。
やつは剛がTSする異世界恋愛の登場人物で、自分の登場する、異世界恋愛の物語をさっさと描いてくれと言った。
そして、現在、小説フェスがおこなわれ、執筆を始めようと決めたこの時に、法王の夢を見たのだ。
その物語の登場人物が今回、対で逆の存在の法王のカードの象徴を手に夢に出るって、どういうことだろうか?
生命の樹はアストラル界では上下がたまに変わるという。
上は天国、下は地獄。
上に向かうつもりで間違った道を選択すると地獄に行くこといなる。
そう考えると、この出来過ぎの夢が不安を煽る。
でも、私のようなものでも、騒いでおくべき何かがあるというのだろうか。
クリスチャンでもない、私が。




