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冥王の迷宮 42


「呪文?何を馬鹿馬鹿しい…貴女なら詠唱破棄で召喚出来るでしょうに!」

「え、詠唱はき…」

悪魔大公の言葉に引っ掛かる。

最近のラノベでは魔法の呪文は『唱える』ものではなく『詠唱』すると表現され、しかも、省略可能なのだ。『詠唱破棄』と表現されるが、私にはあまり馴染みがない。

「そうですよ。無自覚さん!」

悪魔大公め、私の額を人差し指でつつくのはやめて欲しい。

さっきから少女漫画の夢シュチュが連発するのは私の心を乱すために違いない。

「誰が無自覚よっ、馬鹿馬鹿しい。ゲーティアの悪魔召喚が出来たら、今ごろ私、ソロモン王の宮廷で無敵チートでスローライフしてるわっ。」

と、叫び、この時、私はやっとつかんだ気がした。


私の異世界スローライフの物語を!


ま、最近はそれも時代遅れとか言われてるんだけれど…

本当に、最近の若者のトレンドは大変だわ。


「ええ。勿論、可能でしたよ。儀式さえ完璧に終わらせていただいたら…ファウスト博士のように…

味噌おでんだろうが味噌カツだろうが食べ放題ですよ。」

悪魔大公は両手を広げて叫ぶ。

深夜のコンビニに車が入ってきて恥ずかしい気持ちが込み上げる。

「シーッ。もう、夜も更けたし大声出さないの!それに、味噌カツと味噌おでんの為に魂をかけたくないわよ。最近、年のせいか胃もたれするし、いいんだよ。」

ああ、確かに、夢には違いないけど…名古屋には行くんだけどさ、味噌カツと味噌おでんとモーニングって、胃もたれしそうなものばかりなんだよな…

旅行に行けると言っても、正直、二泊三日がせいぜいだし、私はエビフライの方が食べたいんだよな…

若い頃なら、エビフライのランチに余裕で味噌カツ単品で頼むんだけど…今はちょっと重いわ。

「儀式さえ完璧に終わらせていただいたら…胃袋のアンチエイジングだっていけますよ。」

今度は密やかに悪魔大公が囁く。


「で、儀式ってなによ?」

さっきから、悪魔大公の台詞が気になって聞いてみる。

「召喚魔術ですよ。別冊みぃ・ムー緊急企画『大魔術入門』を見ながら貴女が魔改造した儀式で行った!」

「あ?そんな事…した…した?したっけ?」

叫びながら記憶が活性化する。

確かに、正月に付録のタロットカードにひかれて買った。『大魔術入門』

で、なんか、やったかもしれない…かもしれないけどさ

「ねえ、そんな、田舎の小娘がチョチョイと呼んで登場するほど悪魔大公ってお手軽じゃないよね?」

私は叫んだ。


1980年代…魔術も社会も大変だった。

パソコンに販売機のお釣りの計算のプログラムをするのに、私がどれだけ泣いて神に祈ったことか!


でも、祈ろうが念を送ろうがパソコンは正しい計算してはくれない。

.を,にかえるとかスペースを全角から半角に変えるとか…間違いを一つ一つ弾かない限り、パソコンは仕事をしてくれなかった。


あの時、私はこの世の完璧すぎる物理法則を体感したのだ。

いいじゃん、同じ点をじゃない…なんて融通が聞かない一字一句正確な世界。

それが昭和の魔術の世界よっ詠唱破棄なんて言葉は存在してなかったもん…たぶん。


「そうですよ。お手軽じゃないから、凄いのですよ。貴女は!」

「またー、なんなのよ、変な持ち上げ方をしても、もう帰るんだからねっ。」

叫び返した。

「帰れないのですよ!あの召喚魔術は未完成で儀式が中途半端だから、私は、呼び出されたまま、貴女の回りで機会を伺うしかなかったのです!」

悪魔大公の言葉に、何か、儀式をしたような記憶が浮かんできた…

蒸し暑い月の夜…私は庭に出て…人知れず何かを願った…

付録のタロットカードを手に…


月を見ながら私は願う…

≪どうか将来ミステリー探求者として様々な不思議を調査する人にしてください。≫


うわぁぁ…( ̄□||||!!


それ、その願い、まだ、有効なのっ…!!!

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