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冥王の迷宮 40


素人web作家生活8年目。

それなに行き着けない夢のジャンル…ファンタジー…

そこで成功すれば、大金も書籍も自由自在と人は言う。


デビュー当時は、特に異世界転生ものは、普通に読める物語を書いただけでPVが楽々稼げる…と、語られていた。


金が欲しかった…短期間でいっぱい…

だから、必死で考えた。でも、昭和生まれの私には、異世界転生もののテンプレを覚えるだけで必死だった。

気がつけばもう…金を稼ぐ必要も、異世界転生を無理に書く必要も無くなっていた。


でも、だからって書き続けた作品を放置も出来なかった。

本当に私の作品を…

剛を一緒に応援してくれた人間が世界のどこかにいるって実感できたから。


この人達をつれて、私は夢の異世界に行って…物語の剛の幸せを見届けたかった。


でも、異世界転生ものって書くのは難しいし、冒頭で登場する、スキルが書いてある電光掲示板の意味も用語も…いまだに理解できずにいた。


「まだ、こだわるのですか?それ。それに電光掲示板ではなく、スキル画面って言うのですよ。」

山臥は出来ない子供に算数を教えるような口調になる。

「まだって…今、初めて口にしたんじゃない。」

そう、小説を書いてる話は聞いてくれても、異世界の具体的な話なんて、山伏、興味を持ってくれなかったじゃない。

「初めて?…まあ、そう言うことにしておきましょう…

で、この世界線でスキル画面なんて出せませんよ。VRヘットセットも持ってないでしょ?」

「VRヘットセット…って、3Dメガネの事?」

「まあ…そんなものですが、3Dメガネで検索してもネットショッピングの買い物すら出来ませんよ。」

山臥はヤレヤレ顔をする。

「3DでもVRでも何でも良いよ。買わないし。」

私はふて腐れて言った。私だって、頑張った。最近のゲームにも挑戦した。

が、今のゲームは酔うのだ。家でテレビ画面を見ているだけなのに、車酔いのようになって、キャラが死ぬ前に私が死にそうになった…あれにさく時間は、私にはもう残ってない。

「『この世界』ではスキル画面は発動しません。物理法則から外れていますから。」

「物理とかもういいよ…何でも良いから帰ろうよ〜

アンタが何者でも…マフラー何枚貰おうと私の知った事じゃないのよ。」

酔っぱらいに付き合うのも面倒になってくる。

「つれないですね?でも、あの愛しき特級呪物に囲まれた『この人』だからこそ、私の様な上位の悪魔の依り代になりえるのです。」

山臥は自慢げに言った。

それにしても…今回のなりきり劇は長いし面倒くさい。

いつもは女の霊を見るだけなのに、悪魔に憑依されるとか…毎回、よく考えるわ。

「もういいよ〜水買ってくるから飲みなよ。で、家に帰るんだよ。」

なんだか面倒くさくなった。

山臥の泥酔姿に馴れた私は奴のホラ話を右から左に流すスキルが向上していた。

小説では支離滅裂に感じる事も、現実世界ではよくある。

私は車を出てコンビニへと向かうことにした。


「もう少し、私の話を聞いてください!」

ピシッと、空気が引き締まる山臥の言葉で不覚にも私の動きも止まった。

「何よ?」

少し恐怖と怒りを感じて叫んだ。

山臥は…私の表情を悲しそうに見つめた。


「貴女も…能力者なのですよ。」

山臥の低く通る声が、空間を引き裂いた…


(°∇°;)……


まさか、80年代SFミステリーのテンプレワードを言われる日が来るなんて!

少女時代憧れた、なんか素敵なワード…でも、この年齢になってからは聞きたくはなかったぁ(>_<。)


死ぬほど恥ずかしい。なんか、巣に戻っていたたまれない。

山臥はなんか、世界に浸ってるから、どう言葉をかけて良いのか分からない。


「そうです。山臥さんは沢山の女性の念を集めて力を持ったシャーマンのようなものですが、貴女は生まれながらの力の持ち主なのですよ。この私を呼び出せるほど。」

山臥の台詞が一言、一言、ささった…


生まれながらの能力の持ち主

シャーマン

呼び寄せ


ああ、怪しい。そして、90年代を懐かしく思い出した。

あの頃、ネットは出始めで普及してなかったから、異世界転生じゃなく、前世が流行ったよなぁ…


織田信長の前世の人によくあったもん。


「なんかさ、もういいよ…能力なんてさぁ…今さら。1999年に人類滅亡してないし、もうさ、お互い前世より来世の心配をした方が良いよ。」

ため息をついた。

20世紀を遠く感じた。


山臥は私を見つめ、しばらく考えてから穏やかに言った。

「そうですね、来世…貴女の転生先に憑いて行くのも楽しそうですが…まずは、今、不完全な儀式を完了し、そして、アストラルの剛さんを何とかする事をお勧めしますよ。」

山臥の落ち着いた様子が逆に私を不安にした。

「剛の…アストラル界って…」

ああ…まさか、まさか、本当に私の作品、読んでくれちゃってる?ねえ、やまふしぃ…


気持ちが混乱する。

頭はガチャガチャする。

確かに、剛の魂をアストラルに連れてくる、そんな話を書いた気がする。

でも、まってよ…あれ、あれはまだまだ未完だし、

いや、まて、前世とか、アストラル界とか、こんなワードに騙されるな私。

そう、現実の会話にそんな用語をポンポン放つ奴は霊感商法を疑えって、言われ続けたじゃないか!


確かに、つじつまは合ってるけど、私の作品なんてネットで検索すれば一発で見つけられるもん。

昔の詐欺師より使いやすいんだから、そんなもんで信じてはいけないわ。

そうよ、最近、回覧板で注意喚起されてたわ、ロマンス詐欺…

山臥、何か企み事をしているのかもしれないわ。

有馬記念も近づいてきてるし、競馬場までつれて行けとか言われるかもしれない。

私は混乱していた。

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