冥王の迷宮 39
「特級呪物って…その言い方ひどくない?」
ムッとしながら山臥を見る。
確かに、髪の毛を編み込んだ手編みのマフラーなんて、今考えたら不気味な気持ちもするけれど…
時間がかかるんだから。マフラー編むのって。
ついでに、昔は長いのが流行りだったから大変だったんだよなぁ。
「そうでしょうか…私的にはピッタリ、と言う感じがするのですが…」と、山臥はマジレスし、少し考えてから私を見る。「勿論、誉め言葉ですよ?」
「誉めて無い気がするんだけど…」
「おや?おかしいですね。少女の純粋な恋の欲望を純粋に詰め込んだ最強の護符だと申しましたはずですが…」
「タリズマン?特級呪物って言ったじゃない!」
「まじないを漢字で書いたら…」
「(°∇°;)!」
そうだった…呪ないと書くんだっけ…
「昭和のオジサンじゃないんだから、漢字を出さなくても…」
なんか、負け惜しみを言いたい気分だ。
大体、漢民族の漢字の成り立ちを西洋の悪魔が説教に使うのがもう、ダメな気がする。
「そんな時代に、西洋魔術を魔改造して作り出したまじないを使って作られているのですから、漢字の意味がしみるのですよ。
『呪い』とは、神、もしくはチート魔術に祈りすがる様子です。
ひと針、ひと針、相手を思いながら編み上げ、恋を語っり願われた、手編みのマフラー…まさに、特級呪物に相応しいではありませんか!」
何も言い返せなかった…
なんか、違うと叫びたいが、間違ってるとも言いがたい…複雑な気持ちが込み上げる。
確かに、毛の生えたマフラーなんて…不気味と言われたら不気味だけれど、そこに込められた気持ちの美しさを知らないから言えるのだ。
「そうですね、確かに、気持ちが純粋な分、そこにこもった気持ちに畏怖の念を感じてしまうかもしれません。」
「い、畏怖の念…」
なんだか、少女漫画でもホラージャンルに突入しはじめる。
「はい。そして、その強すぎる想いの為に、時に作り出した自らが恐怖し、封印しようとするのです。もったいない。」
山臥に憑いた何かが染々と感想をのべた。
「もったいないって…」
と、言いながら、確かに、殆どのマフラーは自分用か親へのプレゼントに化けた事を思い出した。
手編みのマフラーを好きな彼に贈りたい、でも、きっと、迷惑に違いない。
昭和少女は時に図々しく、そして内気で優しい性質を持ち合わせている。
「まあ、ともかく、この山臥さんは違いますよ?
ゲームに例えるなら、ウルトラ・スーパーレアカードのようなマフラーを二桁単位で毎年もらっていたのですからね。」
何かがとり憑いてる、設定の酔っぱらい山臥。見ている私には自慢してるようにしか見えない。
「ウルトラレア?だからどうしたのよ。」
ふて腐れる私に山臥は苦笑する。
「チーターなのですよ、彼は!」
「は?歌でも歌うの?」
頭が混乱する。チーターって動物の方?歌手の方?
「チート、貴女が必死で調べていた異世界ファンタジーに登場するワード。そのチートを使う者をチーターと言うのです。」
ああ、やはり、これは山臥ではない。チーターの発音がなんか変だもん。
「えー?アンタのスキルって『笑顔』と『かっこよさ』じゃない?確かに、脚は長いし運動神経はあるんだろうけれど…」と、ここまで話して、ある可能性に気がついた。
私は山臥を見つめて、ドキドキしながら聞いた。
「まさか、アンタ、あの電光掲示板だせるの?」




