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冥王の迷宮37

昭和は清貧が尊ばれた。

あるものを工夫して何かを作り出すのが格好良いとされた。


確かに、私にはジャーナリストのコネもミステリースポットを旅する金も

なんか良い感じの秘密結社の老師の推しの子にもなれなかった。


でも、小賢しいさと想像力だけはそこそこあった。

ついでに、小学1、2年の夏休みの自由研究を提出できなかった卑屈な記憶があった…


よく、小説家が昔は文章を書くのが苦手だった、なんて体験談を目にしたけれど、それは間違いでも無いと思う。

私も廊下にたたされ、発表会で変な歌を歌ったり、謝ったりした経験から、思い出す度に自由研究について考えた。


漢字の書き取りは書いていれば終わる。が、自由研究とは、自由な分、誰かサポートがいないと不自由なのだ。

だから、自由な企画力が必要になる。それをずっと反省し、どうすれば良かったのかを考えた。


そんな経験から私は自分プロデュースの発表の企画を意味もなく作る癖がついていた。

何故、『みぃ・ムー』はミステリーの公募なんてするのか?

それは、雑誌の売り上げをあげたいからだ。

では、売り上げをあげるための文章が書ければ、特殊魔法もジャーナリストのコネも使えなくても良いんじゃないだろうか?

そう考えた私は、スーパーの掲示板に答えを見つけた。

そこには新製品のお客様の感想が載っていた。


感想…雑誌の実践付録の実体験のレポート。

皆、この付録を見ながら、『こんなのやる奴いるんだろうか?』と考えるに違いない。

スーパーの新商品だって、誰か、食べた人の感想が知りたいと思う。

実践付録を真面目にやる奴の体験談。面白おかしければ、一考、編集の人の目につくかもしれない!

100万は無理でも、なんか、読者欄に登場するあの編集の人から手紙とか貰えるかもしれないじゃないか!!


アホな子だったと思う…でも、当時、テレビや雑誌のレアなプレゼントはカードゲームのスーパーレア級の影響力があった…


大人だって、テレビ局のジーンズとギターの為に物凄くハッスルしたのが戦後の昭和だ。


私もグッズ欲しかった。

どちらにしても、付録の実践はするんだから、それをレポートするか、しないかの差でしかないし、私は仲間が欲しかったのもある。


当時、KGBやCIAが本気で超能力の研究をしてるってテレビや雑誌や漫画で噂が広まっていて、実践付録も超能力とかの面白い実験が沢山あった。


簡単なところでは、ESP検査をはじめとしたサイコキネシス、テレパシー実験。

神を呼び出したり、ヨガの入門やルーン文字などの特殊な文字や図形を使った護符の作り方。

怪しくも実用的な宝くじの当たる方法なんてものもあった。


当時、私はサイコメトリーに興味があった。

サイコメトリーとは、物の記憶を読み取ると言うもので、物や植物に話しかけて記憶を作り、それを第三者に伝える実験について書かれていた。


当時、私はこの実験を真面目にやりたいと思い立ち、同士を探していた。

遠方で超能力に興味があり、そして、サイコメトリーの能力がある人物を。


現在、スマホが普及し、手紙を書くのも面倒な時代になり、物に語りかけて不確かな情報を伝えなくても、メールで世界の裏側まで個人の情報が届くのだから、こんな実験を真面目に取り組む自分を思い出すと笑える。


宇宙には行けないまま死ぬ事にはなりそうだけれど、21世紀…やっぱり、時代は変わり便利になったんだなぁ…と、しみじみ考えた。


が、まあ、1980年代。

蠍座に冥王星がいた頃は、有名どころの映画のスパイも靴底に通信機を隠していて、それを見てキャッキャうふふと騒いでいたんだから、当時の私は真剣だったのだ。うん。


まあ、そんなこんなで実践してみた。


正直、天下のミステリー雑誌『みぃ・ムー』の頭のよさげな編集者が田舎の小娘の実体験レポートなんて歯牙にもかけないと思っていたけれど、

こうして小説を書き出すと、あの当時のレポートをとっておかなかった事が、かえすがえすも残念だ。


まあ、そうは言っても…上手く書けなかったのだ。

例えば、ESPの実験をするにしても、ミステリー大賞に応募するレポートを作るとなると様々な問題が発生するのだ。

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