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冥王の迷宮 36


「悪いけど…アンタと出会う頃には既に熟女だったよ…それに、その頃、東京で働いてたんじゃないの?」

それだけ伝えた。

乙女から老女って…確かに、最近、白髪染めは面倒くさくなったし、白髪もシワも増えたと思うけどさ…

老女はないよなぁ(T-T)

切ない気持ちを噛み締める。

「冥王星の蠍座時代…私はあなたを見かけたのです。」

「はぁぁっ?」

頭が痛くなる…

バブル時代は都会でブイブイ言わせてたって、それが鉄板ネタなのに。

私は努めて冷静に言った。

「なにふざけてるのよ。冥王星の公転周期は248年よっ!蠍座時代は1980年代!そんな昔にアンタが私を見るはずは無いわ。」

叫んだ。叫んでみて違和感を感じだ。冥王星の蠍座時代とか一般の会話で叫ぶ自分と山臥に!


おかしい。確かに、さっき冥王星の話してはいたけど、普通、このテの話でオカルトに興味ない人間が時代を表現するためには使わない。


いや、占星術が好きな人でも12星座は話しても、冥王星の世代についてポンポン会話に使うのは、そうとうガチの人で、会話の受け手もそれなりに知識が必要になる。

なんか、さっきから無視していた違和感がどっと絡み付いてくるような息苦しさを感じる。


何か、何がおこってるの?


ふと、吊り橋から谷底を見たような悪寒が背中をかける。


山臥は静かに私を観察していた…

そして、事態を理解して落ち着いたタイミングで、とても優しい笑顔で私を懐かしいものを見つめるように目を細めた。


「そうですね…あれは星の導くマボロシ…

惑星直列とハレー彗星が同時に見られた世紀末の奇跡なのでしょう。」


え…


山臥の言葉に…少女の私が…記憶がよみがえる。


冥王星が蠍座に移動する頃…私は夢見る少女だった…


夜空には謎が隠れていると信じていた…

そして、いつか、世界の不思議に挑戦したいと夢見ていた…


ミステリー大賞の公募に応募したかった…


雑誌『みぃ・ムー』に載るような記事を作りたかった…


でも、私にはジャーナリストの知り合いも秘密結社の人事の人に見初めて貰える能力も持ち合わせていなかった…


だから…あきらめた…?


うちは貧乏で…

だから…


小賢しいこの私が…あきらめた?


いや、違うわ…ミステリー大賞は10年近く公募されていたし、私は貧乏だけど変な想像力は人一倍あったのだ。


コネも金もない私は、実践付録のコーナーに目をつけた。

そう、自社の雑誌の体験談…『やってみた』をレポートしようと考えたのだ。

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