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冥王の迷宮 34


これば…マジでヤバイやつかもしれない…


少女時代の感覚が甦る…

昼休みの教室の窓辺。私の時代は『こっくりさん』が流行っていた。


こっくりさんで呼び出すのは主にキツネとされていて、10円玉に手を置いてコックリさんを呼び出すわけだけど、雰囲気にのまれて憑依される子がたまにいた。

それで、集団ヒステリーがおきたのだ。


憑依…気持ちがJCに戻り恐怖が込み上げる。

何か、オカルト関連の様々な記憶が脳裏の奥底でカサカサと動くのを感じた。

落ち着かなきゃ。


ああ、馬鹿馬鹿しい。そんな心霊現象なんてあり得ない。あんなもんは心理的なものなのだ。

コックリさんの集団ヒステリー事件にしても、保険の先生が対応しておさまった。特別お払いなんてしなかったし。


それに、コイツは酔っぱらいで、さみしがり屋で気を引くためなら何でもやる…いや、これはイツモの奴ではない。

とにかく、正気に戻さないと。


私は軽くため息を吐き、山臥の両腕を掴んだ。

そして、睨んだ。

こう言う時は、平気で相手を凝視できる自分を再認識した。

「ほら、コンビニついたんだから、早く買い物してきなよ。酔っ払い。」

私はいつもの雰囲気で話しかけた。

こう言う時、変にオカルト用語を叫んだりするのは、相手をその世界に引き込むから、やらない方が良いのだ。

小説やドラマは、逆にオカルトの世界に客を引き込みたいから連発する。

ドラマとかを思い出して、そんな言葉を発すると、そこから面倒事になるのだ。

何も無かったように、普通に話しかけるだけで、軽いやつは解けてゆく。


が、今回はしつこかった。山臥はフフン、と、愛しそうに私を見て、それからハグをしてきた。


「はははっ、君、心配してくれてるんだね!嬉しいよ。」

「き、君?」

全く、山臥は無意識でも、女好きする台詞を心得ている。

ついでに、少女漫画でこんなシーンがあった事を思い出していた。


生真面目な少女と、少し不良の少年…少年を心配し怒る少女に無防備に抱きつく少年…


ん、なもん、少女漫画の世界でしか無いと思っていた。

確かに、色々とオッサンになってしまっているが、抱きつき方とか、なんか、仕草にかつて、美少年だった面影が匂いたち、私を懐古趣味に誘う。


「まったく、さあ、起きて!帰る時間だよ。ほら、」

私は山臥を引き剥がした。

小賢しい性質は、少女時代から変わらない。

これは現実で、コンビニの駐車場には監視カメラもついている。

知り合いばかりの田舎のコンビニで、オッサンとオバサンが抱き合っていたなんて噂を流されたら迷惑なのだ。


「つれないなぁ…」

「当たり前でしょ!全く、ほら、変な噂になるから、早く車をおりてよぅ!」

私は意識して山臥の腕を2、3回叩いた。

普通はこれで正気に戻るのだ。

が、今回の山臥は、しつこかった。助手席に座り直し、そして、フロントガラスを見つめながら、愚痴り出す…と言った一人芝居を始めたのだ。

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