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冥王の迷宮 31



冥王星が星座を渡るとき…歴史が動く…

それが本当かはわからない。そして、楕円軌道の冥王星は各星座で滞在時期は違うのだ。

うまく歴史にこじつけるのも面倒な気もするけれど、動きが遅かったり、逆戻りをしたりするので、歴史が好きな人なら好きにこじつけも可能なのかもしれない。


それにしても…今日の山臥の酔い方は不気味だ。


「まあ、さ、私はwebの小説で小銭をかせきたいだけだから、こじつけで良いんだよ。」

自分に言い聞かせるように言った。

「本当に、小銭を稼ぎたいなら…こんな変なオカルトではなく、恋愛の物語に力を入れてはいかがですか?」

山臥の丁寧語に不安が込み上げた。

「恋愛!恋愛なんてね、いっぱい更新されてるから、私みたいなのが投稿してもすぐに埋もれちゃうんだよっ。」

とりあえず、思い付いた反論をした。山臥はクスクスと上品に笑う姿がフロントガラスに一瞬写る。

「魅力的な話なら…埋もれたりはしませんよ。例えば…私と貴女の物語とか…」

信号で止まる。赤信号に照らされた山臥が不気味に美しかった。

しかし、人称が俺から私に酔っ払って変わるものだろうか?


何か、オカルトの恐怖を青信号の向こうに揺れる竹林があおる。

「なんか、まるで別人みたいだよ。」

わざと茶化して大声を出した。

思い返せば…酔っぱらうと『自分はっ』と、旧日本兵の話し方にかわるオッサンと飲み会をした記憶がよみがえる。

確かに、まれではあるが、なりきる酔っぱらいは居ないわけではない。

カッパの存在よりは確率はある。


何か、トレンディな恋愛ドラマの主人公にでも『私』呼びのイケメンがいたような気がしてきた。


何か、ものまねを誉めてほしいのかな?


発進前に山臥の顔をチラ見する。

表情からは何も分からなかった。


「確かに、今の私は知的でウィットに飛んでいるイケボの色男。照れる気持ちは分かりますが、淑女に大声は似合いません。」


は?


私は混乱する。混乱しながら竹林の小道を走る。

これを過ぎるとコンビニがあるはずだ。

竹林の向こうのお墓がチラチラと見えるのが不気味だった。

「そう…悪かったわね。」

なんとかそれだけ絞り出すように言う。

「悪くはありません。多少、はしたないとしても、私の貴女に対する愛が変わる事は無いのです。

ああ、それより、そんな事より、私を構ってくれない方が…千倍も心を萎えさせるのです。」

山臥の長台詞は昭和のドラマを思い出させて逆に気持ちが落ち着いた。


誰の物まねだろう?やはり、当ててあげないといけないよね?


「ごめん、降参。誰の物まね?」

不気味な竹林を抜けて私はリラックスしながら聞いた。

「わからないのですね…ああ、嘆かわしい…こんなに私が思っていると言うのに…」

悔しがる山臥を…何となく知ってる気がした。


そんな話し方をする…キャラクターを。

でも、それは昭和のドラマの役者なんかじゃない…

ドキドキしてきた。車をコンビニに止める。

なんか、笑いが込み上げる。いや、まさか…まさか山臥が、私の作品を密かに読んでくれてなんて!


この話し方、よくよく考えたら、私の作品のキャラに似てるっ!

きっと、メフィストに違いない(///∇///)


ああ、今の私のドキドキとときめき、


エンジンを止めて落ち着く。

ああ、他の作家さんは、こんな展開にあった事があるのだろうか…

自作のキャラを…友人がサプライズでモノマネしてくれる…そんなシュチュ。

しかも、一応、元イケメン、イケボなんだよねぇ…

ふふふっ。私みたいな底辺に張り付くヒラメ作家でも、マウントとれるエピソードが出てくるのがweb小説の面白いところよ。


ああ今、私はバブルのクリスマスのCMのサプライズくらいドキドキしてる。

そして、恋の告白の答えくらい、ウレシはずかしの精神状態で舞い上がってるっ!


ああ、何て言うのが正解なのっ…

いや、イヤイヤ、まさか、間違っていたら…死ぬほど恥ずかしいぞ。


どうなの、そこんとこっ。


私は自分でも赤面してるのを感じる。が、思いきって聞いてみる。


「…ねえ、アンタ、もしかして、私の作品を読んでくれてる?」

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