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冥王の迷宮 26



例え、それがただの思い付きだとしても…

偶然は必然にからみとられる。


冥王星を見つけると言うことは、それに見合う技術の向上が必要になるからだ。

そして、それは天文学のみならず、社会全体の進化を意味している。



19世紀なら、穏やかに土の奥に金や水晶を蓄えたプルートは、20世紀の技術と共に不気味な冥王の性格をあらわにするのだ。


プルトニウム…20世紀に発見された放射性元素の恐ろしさを今さら説明する必要もない…


それは、社会生活を豊かにし、そして、その強大なエネルギーは兵器に転用されたなら、一瞬で都市を消し飛ばす威力をもつ。


発見者のグレン・シーボーグは、まさに冥王星を意識してこの元素にプルートにちなんだ名前をつけるのだ。




「なんかさ、頭がこんがらかるよね。

適当につけられた名前に、不気味な意味合いが張り付いて行くのは。」

私は、冥王星の説明をしながらホットコーヒーを口にする。

「それは皆、関心のあるものにあやかりたいと考えるからね。それに、君が言う通り、そんな時代だったのだろう。」

山臥は面倒くさそうにワインを口にする。

「そうね…科学技術は…でも、占星術は…冥王星を蠍座と関連付けたのは、技術とかじゃないわ。」

そう、元々、蠍座の守護星は火星である。

牡羊座と蠍座は同じく火星を守護星としていて、火星…マーズもまた、死の世界を支配していた。


そこで、蠍座の冥王星を守護星に当てたんだと思う。

私の想像だけど、3月の名前にもなっているマーズを同じく3月からの星座である牡羊座からはずすより、さそり座の方がすんなりしたんだと思う。


この、小さな選択が1980年代の占星術に不気味さを加えて行く…


冥王星を占星術にあてる為に、どんな会議や話し合いがあったのかは、私に調べるすべはない。


でも、名前のイメージと共に、軌道と共に歴史をたぐって言ったのだろう…


公転周期248年。

楕円軌道の冥王星は、時計のように同じ期間、書く星座にとどまるわけではない。

約20年、少ないところは十数年と言う所もある。


こんな惑星が中世に登場していたら…ガリレオも混乱しただろう。


確かに、様々な占い師が研究し、惑星を特徴づけたのだろうけれど…


占星術が西洋に復活し始めるのは、18世紀の後半からで、ヒトラーが占星術を戦略に取り入れて痛い目にあってるのを知ると、それほど西洋占星術も成熟していたとは思えない。


「星占いは当たらない…さっき、君は言ってなかったかな?」

山臥はからかうように私を見た。

全く、バレンタインの恋占いは今は関係ないのに!

「そうね、完全に当たるとかは難しいと思うわよ。双子の運命論みたいなもんでさ。でも、1985年にさそり座に冥王星が戻る事、そして、その時、海王星の内側の軌道に入り込み、ついでに1989年、近日点に到達するなんて、理解していたかしら?」

1989年…この年代が胸騒ぎを誘う。

「近日点ってなに?」

「惑星の軌道が太陽にもっとも近づく事よ。」

「ふーん。よく知ってるね?でも、それくらいの計算なら、当時の占星術師も難しくは無かっただろう?248年の冥王星の周期で過去を追いかけて占いの基礎を作るのなら。」

山臥は他人事にワインを飲み、そして、ワインを楽しむように目を閉じる。

「確かに、そうだけど…でも、ここまで出来すぎのストーリーをでっち上げられるものかしら?」

「出来すぎ?1989年に近日点に到達するのが?」

「それもあるけれど…私、アンタに言われて地動説を調べてさ、グレゴリオ歴にたどり着いたのよ。

で、改訂されたのが1582年なのよ。」

「それが、どうしたの?」

「どうもしないけど、グレゴリオ歴は、小さな誤差の修正を400年周期で解消するカレンダーで、その初めの一周が終わるのが…」

「1982年と言うわけか。でも、誤差があるじゃないか。1985年からなんだろ?さそり座に冥王星が行くのが…」

山臥の言い分は正しい。

が、この、胸騒ぎはなんなのだろう?


「確かに、3年の違いはあるわ。でも、グレゴリオ歴の新たな周期と共に、冥王星の新たな周期が始まっているのも確かなんだわ。」

よくわからない不安に突き上げられるように叫んだ。

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