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冥王の迷宮 25



不思議な巡り合わせを感じながら烏龍茶を口にした。

かつて、敵だった少女に愛された美少年の成れの果てを目にしながら。


少年時代、少女の初恋を砕きまくっただろう彼もまた、美しい少女の恋心を愛し、砕く役割に心を痛めた時代もあったのだと理解ができた。


人間の心は二次元では語れない。

国語の辞書のエロい単語に鉛筆の傍線をいれながら、美しい王子の心をあわせ持つ事も可能なのだ。


残酷に恋心を砕く、美しき少女漫画の悪魔にも、自らが打ち砕く美しい心に、心を痛める気持ちも持ち合わせていられるのだろう…

すっぱりと砕く…複数の少女に恋された少年の、それは誠実な答えかもしれない…と、いま、悟った。

現在、私は、天文学と占星術、科学とオカルトの一見、対立しているような関係の底に繋がる真理を体感していた。


最大の敵とはまた、最大の理解者なのだ。



「80年代、冥王星が関心を集めたの。」

私は山臥を見つめながら、占星術師の気持ちを自分に纏う。

そして、目の前の山臥に天文学者の器を重ねた。


科学とオカルト、一見、対立する関係の奥底で繋がる真理を思い浮かべる。


我々は等しく数値的世界構築(ピタゴラス)の信徒…

反論しようと肯定しようと。


「そうかな…俺、当時はサッカーに夢中で記憶にないな。」

山臥は照れながらいう。


サッカー(///∇///)…

全く、少女漫画のイケメンかよっ。


なんか、山臥と話してると調子が狂う。

少女時代なら、絶対に話す事の無かった人物と話している事をしみじみと感じる。


「おい、顔、赤いぞ?酒飲んでないよな?」

山臥は不安そうに私を見る。

「飲んでないわよ。ちゃんと見てたでしょ?もうっ、少し、環境に酔っただけよ。ちょっと、席、外すわ。」

そう言って席をたつ。本当に山臥と話すと調子が狂う。

確かに、最近の流行りはロマンス、悪役令嬢もの。

でも、今は冥王星についてまとめないと。


そう、冥王星…洋名プルートと名付けたのは、発見者の関係者。天文学者達である。


ついでに、冥王星の惑星記号も、他の惑星のような古来からのものではなく、PとLを合わせて新しく作り出した記号である。


この惑星は、発見から複数の状況が異質だった。そして、興味深く感じる。

だからと言って、80年代のオカルト占星術を聞いた頃のワクワクは消えていた。


だって、プルートとか名付けたのは天文学者だし、20世紀の発見だ。

諸説あっても、結局、発見者のトンボーが、パーシバルの頭文字PLがついてるって、そこを決め手につけられた名前だ。


1995年冥王星が守護星座さそり座に戻るとか言われても…

そんな事、ラノベの設定に毛が生えた程度の事のように思えてきた。


少女時代、大切にしまったロマンチックな星占いの世界の魔法が色褪せて見える。


ついでに、冥王星は準惑星に降格してるし(T-T)


私の神秘の世界とこずかいを返して欲しい…とも思うが、ここまで楽しめたとも言えるから、諦めるしかないだろう…


諦める…とも、ちょっとちがうか…


席に帰りながら、インチキとミステリーがゴーラウンドする頭を抱えてしまう。


ああ…確かに、本当に、これは皆、偶然だ。

冥王星って、日本名だとなんか地獄の王のイメージだけど、プルートは地下資源の神なのだ。


ゲームで言うなら、ダンジョンの宝石魔王のようなものだと思う。


「何、考えてるの?」

山臥に聞かれて苦笑した。

「冥王星について、考えていたんだ。」

私は頭のはしにこびりついた何かを引っ掻くように言った。

「また冥王星?」

山臥はクスクスと笑う。

「うん、今日はね、冥王星なんだよ。」

少し、含みのある笑顔で返す。

「そうか。」

山臥は楽しげに笑いながら私を見た。

「うん…まあ、ワインでも飲みなよ。一杯、奢るよ。」

気持ちを切り替えるように私は注文ボタンを押した。

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