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冥王の迷宮 24

スマホで検索してみる。

冥王星について。

そして、この年代にドラマチックで珍しい天体ショーがあった。

惑星の順番が変わったのだ。

天王星、海王星、冥王星…この順番で回っていた惑星が、1979年から1999年まで天王星、冥王星、海王星の順番に変わったのだ。

こんな事は、ちょっと、前までは考えられなかった。

軌道の順番が変わる…

いつか、惑星がぶつかったりしないのだろうか…

そんな話を学校でしたのを思い出した。


その時、先生はちゃんと冥王星の異質な軌道について話して下さったに違いない。

冥王星は、他の惑星と違い、ちょっぴり斜めの楕円軌道なのだ。

だから、海王星とぶつかったりはしない。


なんて、説明されてもその不気味さを理解なんて出来なかった。


「なんかさ、こんな時、例えは大切だよね。」

私は、冥王星の軌道について山臥に聞く。

「確かにね。」

山臥の凄いのは、冥王星の軌道なんてマイナーな話でも興味があるような笑顔でついてきてくれる事だ。

「天王星までの惑星は、レコードのように水平にならんでいるわけよ。」

「レコードは、古いんじゃないかな?」

「(ーー;…まあ、そうね…CDは…まだイケるかな…まあ、とにかく円盤なわけよ。」

ああ、レコード…昭和レトロの仲間入りかぁ…

「ふふっ、CDより、レコードの方があってるみたいだけれどね。」

山臥はからかうように私を見て、ワインを口にする。

「まあ、例えるなら、二次元よ。」

「二次元?」

「うん。海王星までの惑星の軌道に高さがないと考えると、冥王星は高さがあるわけよ。」

と、説明して山臥を見た。あまり、理解は出来てないような顔だ。

「つまり…電車に例えるなら、今までの惑星が在来線なら、冥王星は新幹線みたいなものかな。」

山臥は意味もなく格好よさげに言った。

「そうね、冥王星だけ、高架線や地下と繋がってるわけよね。」

新幹線、剛と乗りたかったな。と、寂しく昔を思い出した。

「地下と繋がるか、なんだかゲームみたいだね。」

山臥が笑う。そう、ゲームファンタジーの表現力を磨きたいの!素敵な返しに会話が弾む。

「ゲームで使われるダンジョンって、元々は、地下世界みたいなものらしいんだけどね、冥王星…プルートも地下の世界を統べる神様でね、惑星プルートの名前とその神を思うと、凄く、考えられた名前だと思うのよ。」


そう、プルートは、古代地中海文明で崇められた神、ハデスの別名とも呼ばれている。

基本は、地下世界、死者の世界の話が多いが、ハデスは地下から採取される宝石や鉱物の神としての性格もあるのだ。


プルートはメジャーな呼び名ではない。

そして、20世紀に9番惑星としてこの名前が決まった由来についても諸説あるようだ。

が、私は、パーシバル・ローウェルの頭文字PLとトンボーのTOが入った名前…PLUTOと言う説がお気に入りである。


Web作家なので、そこまでトンボーがパーシバルに義理立てする感情に様々な想像もしたくはなるが、まあ、それを差し引いても、準惑星に降格を心配するトンボーの気持ちはちょっと同情したりもする。


「最近は、様々な異国の神々の名前も採用されるけれど…冥王星を思うと、1つの文化にまとめるのも…意味があるような気もするわ。」

オレンジジュースを頼みながら、山臥に冥王星の説明をする。

「アポフィス…とか、エジプトの神だっけ?」

山臥は少し前に流行った小惑星の名前をあげる。

「アポフィス…そうね。ギリシア神話に関係ない名前だと、関係性の暗喩(アナグラム)はいれられないもの。」

暗号(アナグラム)?」

「うん。日本は俳句とかに表の意味とは違う内容を忍ばせるじゃない?」

「木の『松』を想い人を『待つ』と重ねるように?」

と、酔って色気の増した瞳で見られると…光源氏はこんな風に会話に艶を添えるんだろうか…と、山臥の手先を観察する。


イラストでもそうだけど、そこそこ書くようになると手先の表情が気になり始めるのだ。


「うーん…西洋は絵画でそれをするんだよね…」

「ダ・ヴィンチのモナリザのように?」

問いかける山臥の真っ直ぐに見つめる眼差しと、女ウケしそうな例えに呆れながらも参考にするわたしがいる。そう、山臥、オカルトを語ってもロマンスを忘れない…

商業恋愛小説家とは、そうでなきゃいけないんじゃないだろうか?


「うん。そんな感じ。冥王星の名前のモデルは、冥王ハデスなんだけどさ、死の国を統率する…この特異な役職の為に他の神々と離れて暮らしていたのよ。」

そう、ハデスはギリシア神話でも特異な神様なのだ。

この神の名前をつけるにあたって、様々な説があるにしても、それに賛同した天文学者には、そこにパーシバル・ローウェルの頭文字以外の何かを入れ込んだと思う。

冥王星の軌道の異質な感じをプルートの名前に含めたのでは無いだろうか…


「確かに、死の国の神なんて、少しビックリするからね。でも、日本の月読神だって死者の国を納めていたハズだよ。」


はぁっ…(///ー///)


なんだろう?恋愛小説で味噌おでんを狙ってるせいか、なんか、山臥の挙動にドキッとさせられる。


月読命(つきよみのみこと)は、漫画で超美化されたんだよ…

それを言うなら、冥王ハデスだってイケメンだもん。」

そう、ハデスに恋される乙女の漫画は連載から短編まで様々にあった…

でも、プルートは記憶にないな。

「確かに。俺もその役やらされたことがあるよ。」

山臥はウインクをして、気持ち良さそうに白ワインと糠漬けを追加注文した。

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