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冥王の迷宮 19



12才のバレンタイン。私がボコられることはなかった。

と、言うか、既に、私の事なんか皆、忘れていた。

だって、バレンタインですもの!

好きな人に告白って、それだけで頭がいっぱいになる。


私は、チョコをあげるタイミングと先生に没収されないように相談する女子の囁きを他人事のように穏やかに聞いていた。


なんだ…みんな、ワチャワチャしたかっただけなんだ…


私は、自分が少女漫画の主人公に相談されたように深刻に恋を考えていたことに呆れた。


そして、少女の華やかな恋の夢を遠くに見つめていた。


思えば…この時、私の分岐点だったのかもしれない。


『恋のアストロジー入門』を買わなかったら…私は、あの少女の夢の中でチョコのように甘い恋の夢を見られたのかもしれない。

でも、このイベントでこびりついた占い好きのイメージは、後の人生にも影響を与え、私もまた、はからずも怪しげな占いを披露した事で、占いへの夢から覚めた気がした。


が、私の不安はこれでは終わらない。

バレンタインにはホワイトデーが対で語られる。


1か月後の3月15日。

バレンタインの告白の答えを聞くまでは、まだまだ安心は出来ないのだ。


イケ男は、どうするのだろう?


噂によると、下級生にもファンがいて、紙袋いっぱいにチョコを貰って先生に呼び止められていたイケ男…


そこから1ヶ月、私もイケ男が気になって仕方なかった。


一体、誰を選ぶのだろう?

それとも…誰も選ばないのだろうか?


ホワイトデーを知らない男子も多い時代だった。

バレンタインでチョコを貰って浮かれて終わり。なんて男子も少なくない時代だった。


まあ、弁護をするなら、日々の細かい仕事など、男子としての付加も多い時代、ただ『ありがとう』みたいな意味合いもあったから、相当、ガチの告白でもなきゃ、まあ、流されていたところもあった。


大体、付き合ってもらうのが目的だから、断りの意味があるチョコを貰おうが、貰わなかろうが、フラれるショックでどうでも良いことだった。


そんなチョコの数倍も甘い言葉となにかを友人たちはくれる時代だった。


バレンタインはガチの恋のイベントだった。


そして、田舎の小学男子に恋の告白を上手くさばける裁量はなかった。


まだまだ、男子はみんな子供で、チョコレートは甘いお菓子でしかなかった。

私には戸惑う男子が、そんな風に見えた。


イケ男はどうだろう?


先生は苦笑しながら紙袋に入れて放課後にチョコをイケ男に渡したと噂に聞いた。


先生にしても…モテるからってしかるわけにも、思いのこもったチョコを取り上げるわけにも行かなかったんだと思う。

しかし、次はないと、先生が食べちゃうと、注意も忘れなかった。


思えば…それもあって、ホワイトデーは、それほど盛り上がらなかった。


好きな人に告白された男子は、学校外で告白の返事をし、お返しもないけど、お返しのマウントで、誰も傷つくことも無かったのかもしれない。



イケ男のホワイトデーは、シンプルで格好よかった。

彼は、早めに登校し、チョコを貰った女子の机にマシュマロを1つ置いていった。


そして、彼は伝説になった…


私は、ここでやっと、星占いの呪縛から解放された…


しばらくして、占いを聞いてきた女の子が、私にお礼を言いに来た。


「ありがとう。ふられちゃったけど、想いを伝えられて本当に良かった。」



その言葉は…私の心を優しくいやし、そして、『恋のアストロジー入門』を書いた先生の細やかな心遣いのある文章を再認識させた。


私は占い師にはならなかったけれど…占いは、ファンタジーなんだとそう思わせた。



私は、占いを真面目に披露した経験がある。

だから、占いがインチキで適当ではないのを知っている。


誰だって、間違いを言って袋叩きになんてなりたくはないのだ。

占いには占いの法則がある。

それは、たまには歪んで見えるものもあるけれど、チチウス・ボーデの法則だって、全く正しいとも言えない。


天動説で見える世界にも、地動説では見えない正解があるのだ。


TPOは考えなきゃいけないけれど、占いの本は、ただ、開けば魔法が飛び出すわけじゃない。


同じ本でも、私に読んでほしいと願った少女達と、確かに、私は、その時、きらやかな恋の魔法を体験したのだった…


『恋のアストロジー入門』を見つめた。


そう。全てがインチキのゴミなんかじゃない。

ちゃんと、調べて、夢を詰め込んで開いたこの本は、ちゃんと、恋の魔法を見せてくれた。


ガリレオだけが正解なんかじゃないんだわ。


正解…と言う考えが違うのだ。


あの時、私の占いにお礼を言った少女がいたように、フラれるのが不幸でも不正解でもない。


そして、きっと、今でも…恋する少女が開いたら、この本はちゃんと、魔法を見せてくれるに違いない。

占いを肯定して書いてますが、占いを詐欺の道具として使う人たちも世紀末には多くいました。

ガチの占い好きの知り合いなんて、そうそうできるものでもありませんし、弁護士の偽物は調べられるけれど、占い師の偽物は判別が難しいので、1人占い以外は推奨しません。

 世紀末の事件では、知り合いの占い好きから詐欺にあうとか、色々と世紀末には問題が出て、詐欺師ではなく、素人の占い好きが批判された時代がありました。

 ので、フィクションとして楽しんでください。

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