11話特典
昭和48年11月初版
昭和48年12月50版
ある日、古本屋の100円コーナーにあった本の裏に書いてある情報…
本好きなら、きっと、この情報で凄いと思ってくれるだろう。
私だって驚いた。
初版から、1ヶ月で50版って…凄いわ。
が、三島先生のこの本は、それ以上の希少価値がある。
この、初版に近い本には、魚人間の写真が載っている。
三島先生は、この魚の写真をノストラダムスが予言して、予知の証明のように書いていらした。
だから、アンチはこの掲載された魚の写真を三島先生の予言の解釈の間違いの指摘に使った。
魚の写真は後に捏造写真と判明し、その後に刷られた本の写真は人魚の像と差し替えられたのだそうだ。
その話を聞いてから、私はこの本を探していた。
その魚は、ミステリーまがじん『みぃ・ムー』でも取り上げられていた気がする。1メートルのバッタの衝撃写真と共に。
探した。が、見つからなかった。
図書館にあった本ですら、3桁も刷られた後のものだから。
昭和48年…1973年の本なのだ。
もう、その本に会うことは無いと思っていた。
が、いきなり、ちょっと街の大型古本屋の100円コーナーで、こんなにあっさりと見つかるなんて!
世紀をこえての出会い。
しかも、WEB小説家デビューした年の…ノストラダムスの誕生月の事だった。
速攻で購入した。
特別、内容に真新しい事は無いが、この本が、こうして流れて来るまでの物語を想像した。
12月…持ち主に何かがあったのだと思った。
40年近く時を重ねた本の内容を考えると、持ち主の購入時の年齢は、20代か、10代後半。
現在、60歳にはなっているかもしれない。
老人ホームに引っ越したのか、それとも、亡くなったのか…
本は、それほど汚れてはいなかった。
経年劣化とヤニ焼けの茶色い紙の色に、少し渋いオヤジを想像した。
コーヒーが好きで、当時、流行した茶色のガラスのコーヒーカップを愛用しているような…
本が語る物語と、これからの小説ライフに胸がときめいた。
終わり方を忘れたように、物語は混乱していたが、私は、ちゃんと書ききろうと考えた。
三島批判を聞くたびに思った。それでも、『予言者』は面白かった、と。
この本には、先生による、ノストラダムスの時代劇がチョッピリ挿入されていた。
あれは良かった。
あそこだけでも抜き出したら、ひとつの物語になるんじゃないかと考えた時もあった。
が、1巻でミシェルが一人で見たハレー彗星を、他の巻では婦人と見ている矛盾があって、そのままでは使えなかった。
自分でまとめて書いてみよう。ツヨシをモデルにしたノストラダムスを三島エッセンスに溢れた舞台で。
ああ、そうです。
そんな事、してる暇なんてありませんでしたよ…
書けば書くほど問題と登場人物が増えていって…
後回しにしていたけれど、命短し連載長し、もう、何でもいいから書き始めようと思った。
ここまで来たら、昭和のセンセイのような、いい人間を意識なんてしなくていいのだ。
昔、祭りの屋台で出会った占い師が言ったように、私の人生に書籍化作家のような華やかな役回りなんて無いんだろうから。
でもっ。
私は、フリマでは成功した部類にいると思う。
魔法は使えないけれど、人の不要品をカネに変えてきた…いわば、レンキンジュツシなんだから。
千円で売る。
私の特別短編をつけて、アンタを札の価値をつける人物のもとへ送り出してあげる。
私は本に誓った。
この本の情報から、今風な面白い物語の種を拾って話を作ろう!
なぜか、私の設定文を読んでくれる読者はいた。
その中の一人に、刺さる最後の作品を、ミステリー大賞を目指しながら作ろうと考えた。
ツヨシが逝った現在、やたらめったら、おかしな目標を立ち上げた。
そうして、ここで話を更新し、なんか、手応えが見えてきた。
私は、持っている古本を最後のフリマで売ろうと考えた。
今は100円の価値も怪しい本たちを、10倍の千円の価値までのしあげる。
その為のミステリーを、いざ、探そう。
やる気がみなぎる。
何やら、名古屋の古本屋が特設してくれる位の有名人になる私のサクセスストーリーが、ボーカロイドの歌声にのせて、ネット動画のように脳裏を流れた。
浮かれる気持ちで、本を調べた。
本屋の特設は無理でも、インターネットのフリマはある。
最初で最後のネットフリマに向けて、この本の価値を調べた。
多分、三千円は…劣化を差し引いても三千円はするとみた…
なんか、去年、ツヨシのために、せめて500円を稼ごうと、自分の作品を売ろうとして、どうにもならなかった記憶が込み上げる。
3月にも…彼岸の花代を稼ごうと頑張っていた。
現在、300円…
私が、七転八倒をし、必死で調べ書き続けた、私の全作品を使ったとしても作品が300円…
それを、それを奴は、本箱で静かに眠っているだけで、10倍の価値を作り出していたのだった。
千円でこの本を売ったら、きっと、すぐに売れるに違いない。
買った人が特典の私の短編を読まずに捨てて、転売するビジョンが見えた。
ノストラダムスも…こんなふうに未来をみたのだろうか?
馬鹿げた事を考えながら、これじゃ、特典ではなく、いらない付録じゃないか、と、突っ込みをいれた。
根性があるヤツは、泥沼に落ちても、やがて、美しい蓮の花を咲かせるんだ。
父の好きな説教の文句だ。
ああ、とうさん。今なら、今なら論破出来る気がする…
とうさん。それわね、蓮の…蓮の花の遺伝子があるからなんだよ。
石はね、池に落ちたら沈んでしまうし、
サボテンは、水の中で腐ってしまうんだよ。
しばらく、何もする気になれなかった…
がっ、いつまでも沈んではいられない。
とりあえず、この本はなんとか廃棄は免れそうなのだから。
付録の短編つきで、ご、五千円!びた一文負けないわっ。
そうして、今日も更新をする。
これはフィクションです。現在フリマの活動はしていません
Siriが読み上げしやすいように改変しました




