冥王の迷宮 13
天王星…ウラヌス
昔、この星のポスターを部屋に貼っていた事を思い出した。
1980年代になって、ボイジャーは土星を越えて未知の領域に足を踏み入れていた。
地球では、ほんのちいちゃな光の点である惑星も、探査機がスイングバイを試みられる距離まで近づくとその大きさに驚愕する。ついでに、輪までついている!
ボイジャーのデーターを元に、手書きで描かれた惑星のイラストが当時は売れていた。
当時は、パソコンでちょいちょいとイラストを描ける時代では無かった。だから、手書きと思われる惑星のポスターはなんか神がかって見えたのだ。
エアブラシ、欲しかったなぁ…
ボンヤリと昔を思い出した。
そんな事もあり、地上でも観察できる土星までの惑星と、近代に望遠鏡等で発見された海王星、天王星、冥王星は、分けられて考えられる事が多い。
それは、ラノベで惑星モデルのヒーローを作るときも影響していた気がする。
温かいコーヒーを入れる。私の少女時代はまだ、土星から外の惑星は未知の世界だった。
惑星のポスターを天井に張り付けて、宇宙旅行を夢見た少女時代が脳裏を駆け抜ける。
当時は、海王星、天王星、冥王星は謎と神秘に包まれていた。
冥王星は、2006年に惑星から外れたけれど、ボイジャーの探査予定からも仲間はずれにされていた。
冥王星の軌道だけが傾いていて、上手く合わなかったからだ。
1930年冥王星が発見されてから、この星の異質さを天文学者は感じていただろう。
長い楕円軌道で、冥王星だけが他の惑星の軌道と違って傾いていた。
冥王星は、本当に同じ惑星なのか?
まるで昭和の赤ちゃん取り違えの物語のように、その疑惑をぬぐえずにいた学者も多かったと思う。
それでも…誰もそれを言い出すわけにはいかなかった…
インテリは頭が良い
が、世間体で真実をみる目が歪むのだ。
が、冥王星の話をするには、プロローグとして天王星を語る必要がある。
天王星を見つけたのはドイツのアマチュア天文学者のハーシェルである。
彼は自作の望遠鏡で夜空を見た。
が、彼が見つける前にも様々な人が天王星をそうとは知らずに発見はしていた。
ガリレオも、その仲間にいるかもしれない。
地動説では有名な彼も、天王星の話になると、なんだかゴニョゴニョしてしまう。
それは、惑星は水、金、火、水、木、土の5つ、それに月と太陽の二つを合わせて7つに決まっていたからだ。
惑星はあとはない。
曜日だって、7つなんだから、それでいいんだ。
と、言う雰囲気が当時のアカデミーにはあったらしい。
地動説より、こっちの方が問題な気がするが、天王星に熱意を向ける中世の天文学者の話の記憶は私にはない。そんなものがあったなら、こんなにこの件を調べることもなかったと思う。
まあ、天王星、遠い星である。
肉眼でも見えるそうだけれど、それはいつもとはいかないのだ。
ともかく、学者が研究以外のゴニョゴニョをしてるうちに、アマチュアのハーシェルが天王星を見つけてしまったのだ。
それで、一般人の素直さで、英国王のジョージ3世に捧げられ、ジョージの星と名付けられた。
惑星の発見者に命名権を捧げられ、名を残すなんて…ナポレオンもシーザーもなし得なかった名誉をもらったジョージ3世。
しかし、他国の人や学者のブーイングで名前の変更を余儀なくされる。
ハーシェルも、初めは星を見つけたんだと思っていたらしいので、まさか、自分が惑星を見つけるなんて、歴史に残る発見をしたのが分かったら、名前を変えられるのは、渋々でも諦めるしかなかったのだろう。
ここで、天王星…洋名ウラヌスと名付けるのがボーデである。
昭和の少年少女なら、なんとなく、名前を聞いたことがあるかもしれない…
チチウス・ボーデの法則の名前のボーデに当たる人物。
ヨハン・ボーデである。
しかし…発見者の命名権って…はかないんだね…
まあさ、見つけた人が日本人で、恋人の名前をつけたいとか言って、『ウメ』とか言われても…困ると言えば、困るよね…
水金地火木土ウメ…って、覚えづらいし、
水金地火木土ジョージも語呂が悪いもんな…
現在は、ギリシア神話以外からも星の名前をつけてるけれど…それが長く続くとも限らないのかもしれない…
星は永遠でも…人の思惑は一筋縄ではいかないのだ。




