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冥王の迷宮 11



暦を作り発表したユリウスは得意満面に違いない。まあ、自慢して良いと思う。

広い世界、そして、長い人類の歴史の中で世界的に使われる暦の月に名前が残せたのは2人だけなんだから。


でも、ツメは甘かった…

まあ、仕方ない、仮にどんなに正確なカレンダーを作ろうとも、カエサルの暦は彼が暗殺されたときから間違った閏年を入れられておかしくなったらしいのだ。


それに、100年以上正確に動いていたなら、自分には関係ないわ…

なんて思ってしまう。


実際、今、色々と調べたところでチンプンカンプンだ。

別に、そんなちっちゃな誤差、良いじゃん別に…とか投げ出したくなる。


が、私は、ファティマの予言を追いかけていた。

違和感があった。


聖母は13日に自分に会いに来いと言ったのだ。

その時、私は、ユリウス暦の話を知った。

ちょうど13日、グレゴリウス歴と違うと言うことを!


おかしい…

グレゴリウス13世は、10日しか、暦を動かしてないじゃないか…


と、ここに来て、16世紀の大修正から既に、3日もずれた事に気がついた。


確かに、人の一生で考えると微々たる誤差も、社会で考えると、物凄く感じる…


ファティマの予言から、既に100年が過ぎている。

そろそろ、また1日分のヅレが生まれてしまう。


ユリウス歴、使えないわ(-_-;)


こうなると、長期暦と言う考えが必要になってくる。


どんなに頑張っても、地球の軌道を変えられるわけもないんだから、何度かは閏年でカレンダーを調整する必要がある。

そして、100年くらいで1日も誤差が生まれると、やっぱり、色々面倒だ。

そこで、グレゴリウス13世が作った暦は、400年周期で閏年を調整するものだった。


誤差の調整は長ければ、長いほど入らない方がいい。しかし、忘れられても困るから、いい感じのところで調整できるように考える。でも、400年周期なんて長いものを管理するのは、なかなか難しい。

なぜなら、ひとつの時代、政治の移り変わりは、もっと早いからだ。


そして、ここに来て、コペルニクスが改暦に慎重だったのかの別の意味を思い浮かべた。


この大地、なんか、自由に動いてる?



そう、500年も前とはいえ、私なんかより、ずっと頭の良い人達なのだ。

当時、それを考えた人は他にもいたに違いない。そして、なんか違和感を感じたに違いない。

だって、ユリウス歴は、あの千年以上の…気の遠くなるような長い歴史のあるエジプトの女王監修で作られたはずなのだ。


あの、ピラミッドを作ったエジプトの…


それが、100年ちょっとで誤差が1日も出てくる暦しか作れないなんて、おかしいじゃないか?


そして、なぜ、あの豊かなエジプト帝国は砂漠になってしまったのだろう?


本当に…天体は時計のように正確に動くのだろうか?

そして、そこに終わりは無いのだろうか?


コペルニクスが改暦の相談をされたときは、まだ、世界が丸いことを証明されていない。

でも、太陽が言うほど正確には回ってないことにも気がついた人物はいたかもしれない。

 マヤ人は太陽が明日も昇ってくるかを心配し生贄として人の心臓を太陽神に与えようとした。

少女時代はマヤ人の迷信をバカにしたけれど、長期歴を作り、太陽を観察していた彼らは、地球の公転周期の危うさに気がついていたのかもしれない。


もしかしたら、コペルニクスの頭の中でも、それに近いアイディアが生まれていたのかもしれない。

当時、私のように名もないSF好きの様な吟遊詩人が、そんな話を作っては吹聴したかもしれない。


16世紀、世界の常識は否応無く変わり始めていた。1522年世界を一周したニュースがヨーロッパを巡る。

私の父が少し苦労しながら、月賦(ローン)で買った自慢のテレビから、色鮮やかな丸い地球に胸をときめかせたように、 私がスペースシップの船乗りのアニメにワクワクしたように、

当時の少年は皆、船乗りに憧れたに違いない。


そして、様々に語られる不思議な話に夢中になり、中には危ない思想に触れることにもなったのだろう。

人類の滅亡…世界の終わり

教会への疑惑…


家族を支え、暦書で商業作家になったノストラダムスは、好きに書くだけではすまなくなっていたのかもしれない。


客の好み、時代の流行りを取り入れる必要があった。

識字率(しきじりつ)の低かった時代、ノストラダムスは、新たな客の獲得に自国語…つまり、フランス語で作品を作ることにする。

当時、ヨーロッパでは、誰かが朗読して皆で聴くスタイルだったと昔調べたことを思い出した。


短い四行詩が、サイレント映画と活動弁士(かつどうべんし)を思わせた。



町を渡り歩く芸人、人形や役者が四行詩を演じ、活動弁士が解説をする…


現在でも、動画の配信でノストラダムスの予言は解説されているけれど、彼は、印象的で短い文章を作るのがうまいのだと思う。そして、そこに尾鰭がついてくる。


フランス語を選んだこと、子供に人気だった事もあり(現在でも、人形劇が人気らしい)ローカルで進化し、現在の日本のアニメのような立ち位置でヨーロッパに普及できたのかもしれない。


今でも、ノストラダムスの動画の解説では、恐怖をあおるような内容が多いけれど、当時も、そんな感じで好きに解説をつけられたのかもしれない。


1999年…16世紀の少年には遥かに遠い未来…でも、この年、その遠い未来に意識を向けさせる出来事が発生する。


改暦である。


400年周期で調整の入るその新しい暦の初めの一周は1900年代、千年周期の世紀末に当たるのだから。

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