番外 教えておくれよブラバッキー10
「君は、サンタクロースは俺にはいないといい、子供にはいると言う。おかしいとは思わないか?」
と、山臥が聞いていた。
「何が?」
と、不服そうに答える。山臥は必要以上にドラマチックに盛りたがるのだ。
「矛盾しているじゃないか?」
と、山臥に言われて、私は頭が痛くなる。
「もう、そんなの普通でしょ?それとも、アンタは幼児を前にサンタクロースなんていないと言える?」
と、強く睨んでみるけれど、私の親も『うちは仏教だからサンタは来ない。』と断言したし、それも正しい答えの1つだとも思った。
けれど、それはとても、寂しい正解…
子供時代に会えなかったサンタクロース…
その思い出が切なく胸に込み上げる。
「答えはどうでもいいんだよ。問題は、答えはいつも1つではないと言うことだよ。
人は、無意識に2つの反する答えを同時に正解として認識し、人によってオートマティックに使い分けているって事さ。」
山臥は、トレンディドラマで昔見たような、なんか、キザな感じに『オートマティック』と言った。
「オートマティック…」
思わず呟いてしまう。
「そう。俺はこの現象をサンタクロース・シンドロームと名付けたんだ。」
山臥はコーヒーのCM見たいに右手でコジャレた感じに持ち上げてウインクを投げる。
これを、田舎のファミレスでやってのけるんだから恐ろしい。
いつもなら、周りが気になるところなんだけれど、今回は、サンタクロース・シンドロームに心を奪われた。
要するに、人は複数の正解を無意識に持っていて、その状況で使い分けることに疑問を持たない。
サンタクロースがいるか、いないかは、質問されるまで答えは決まっていない。
例えに、シュレーディンガーの猫を使わない所が凄いわ(-_-;)
2つの違い答えが混在すると言われたら、シュレーディンガーの話を思い出してしまう自分に、Web小説生活の長さを感じ、恋愛小説で一発当てるには、やはり、サンタクロースが飛び出るくらいじゃなきゃ、難しいのではないか、と、心配にもなるし、山臥が羨ましくも感じる。
1か月前からクリスマスを夢見るような、娘時代が遠く感じた。
懐かしい、ニューミュージックのクリスマスナンバーが胸をよぎる。
温かく切ない気持ちになりながら、なんでこんな話を始めたのかを思い出す。
宇宙人…サンタ、宇宙人とか言い出さないわよね?
私は、19世紀のオカルトと天使と宇宙人にサンタクロースも追加される恐怖に包まれた。
「ねえ、まさか、サンタクロースが宇宙人なんて言わないわよね?」
思わず言葉がキツくなる。
宇宙人と天使とブラバッキーだけでも辛いのに、クリスマスシーズン前にサンタを宇宙人になんてされたくないのだ。




