番外 教えておくれよブラバッキー6
かっちゃん…克也の毒舌が懐かしく感じた。
理由は思い浮かばないが、なんか、克也に会えば先が見える気がした。
令和の現在、おっさんになっても、『何か』を探求し続ける彼に会いさいすれば…
私は借りてきた柳田国男の本を読み始めた。
彼は役人の経歴のある民俗学者であり、現在に続く妖怪ラノベの原点でもある。
上品さとアカデミックな雰囲気を…私のキャラにも身に付けるためにも…
柳田先生を知る必要が私にはあった。
現在、ゲームにアニメに、サブカルのキャラクターのイメージに妖怪や怪異は浸かってしまったが、もとは、子供の教育と、文字を管理出来ない層の歴史の口伝の意味合いがある。
昔々…それは、本当の殺人事件であったり、戦いの歴史であったり…
その中でひっそりと姿を消した人達の物語だったりする。
グリムはそれを書籍化し、それは民族としての意識を強くした。
良い影響もあったが、反面、ヒトラーのような人物にも影響を与えた。
柳田先生の研究は、日本と言う民族の根底を調べるものであり、そして、文字を長期間管理する術を持たなかった人々の記録を紙に残す作業でもあると思う。
知ってる?カッパは宇宙人なんだよ。
不意に、子供の頃、夢中になったオカルトの記憶に腹が立つ。
何もかも…あんなに綺麗に見えた宝物の知識が…
この年齢になってゴミと化した事が腹立たしかった。
カッパや雪女の物語は、小説や口伝で表現することが出来る。
でも、私が子供の頃、夢中になった、UFOやら超能力、謎の騎士団の話は、
web小説の底辺でも、語るのが難しい代物に化していた。
私は…私の記憶に自信が無くなっていた。
それなのに、山のような疑問や謎で、書き始めた物語は膨張していた。
色々と文句はある。
が、これを乗り越えて先を書きたいと強く思う。
あの頃、決して裕福ではなかった父から貰ったこずかいを、金儲けの為に作られた嘘の情報につぎ込んだなんて思いたくなかった。
それで終わらせたくはなかった。
頭の中で、父や、友人の批判の声が聞こえる…
『そんなものくだらない』
少女の私はその言葉を踏み越えて、オカルトミステリーを夢見ていた。
そこには確かに、何か、魅力があるのだ。
まだ、誰も見た事の無い宝の地図が隠されている…
そう考えた…私の純情がっ、人生の最終段階で、ネット社会のゴミと化すなんて、あまりにも残酷じゃないか!
ついでに、不人気で、ほとんど評価もつかずに、未完でフェイドアウトなんて…あんまりじゃないか(ノД`)・°・
柳田先生の本を読む。
このままで終わらない。
完結して評価もらって…貰えなくても、味噌おでん分の金を稼ぎ、自己満足満々のあとがき書いて、威風堂々と退場する。
それぐらいの夢は見てもいいはずだ。
はずなんだ!
暗くなる図書館の読書スペースの窓の向こうで落ち葉がもの寂しく舞い落ちる。
柳田国男が優しげな口調で本から語りかけてくる…
全国に散らばり、その土地で様変わりする物語を追いかける…
そこには、昭和の隠者の姿があった…




