番外 教えておくれよブラバッキー
「ジンジャーエールを頂戴(>_<。)」
私は本の精霊に叫ぶ。
精霊は、驚いた顔をして、黙ってジンジャーエールを取りに行った。
私は、また、不必要なダンジョンに突入することに頭を抱える。
が、行かないわけにはいかない!
だって、彼女を知らなきゃ、先がかけない。
そう、全ての…近代のオカルトのネタ元的存在。
ヘレナ・ペトロヴナ・ブラバッキー
1831年生まれの神智学協会の創設者。
近代オカルトを語ると必ず登場する女性である。
少女時代、オカルト雑誌に度々登場する彼女の写真が嫌いだった。
なんか、怖いし、胡散臭く感じたのだ。
そして、彼女が何が言いたいのか…何度読んでも理解できなかった。
大概、ラノベのオカルト好きとか、専門家と言うのはオカルト全般に興味を持っているように描かれるが、実際は、割りと守備範囲は狭くて仲が悪い。
例えばタロットカードが得意な占い師でも、易占いは全然だめとか。
なんでも、紙のカードを使うタロットカードは水属性の人が(主に女性)
易占いは火の属性の人が(主に男性)が優勢なのだそうだ。
と、言ったうんちくにも、また、それは違うと反論が出てくる。
と、まあ、色んな意見がある中で、私は、ブラバッキーと言う人が苦手だった。
理論的にではなく、感情的に、何か、怪しく感じたのだ。
チャーチワードのムー大陸を信じているのに、
ブラバッキーのレムリア大陸は理解できなかった。
そんな感じで分からない。そこに理屈は無いのだ。
少女時代、けっして沢山とは言えないこずかいを費やし買ったオカルト雑誌なのに、その大事な数ページの記事を読み飛ばすくらいだった。
だから、まさか、この年で調べる事になろうとは思わなかった。
まあ、ブーたれても仕方ない。
彼女が近代オカルトの先駆者なら、理解できないと、数話の未完がエタってしまう。
はぁ
「なに、不景気な顔をしてるんですか?」
妖精がふざけ半分に私に聞く。
「あんた、UFOの本よね?」
私は妖精を睨んだ。全くの逆恨みである。
が、妖精は私の気持ちなど気にする風でもなく笑う。
「さあ、ある人は政治の陰謀、また、ある人はUFO、そして、インチキ作品とボヤいたやつもいやしたね。」
妖精は事もなくそう言ったが、100円まで値下がりするにはそれなりの長い旅があったに違いない。
古本は…大手の古本屋は、基本、内容より、外見で商品を判断する。
表紙のヤケや、帯の有無が基準になるのだ。
妖精の依り代の本は、100円コーナーに並んでるには綺麗な部類だった。
ヤケも、本棚でのクセもついてない、帯までついている本だった。
私のところで劣化はしたが、それでも、綺麗な姿を保っていた。
彼の持ち主はタバコを吸ったりはしないようで、ビジネス本によくある『ヤニヤケ』と言われる茶変色はなかった。
20年以上経過したとは思えない綺麗な本だった。
「あなたの持ち主は…どうだったの?」
私の質問に、妖精は少し驚いて、それから私になんとも優しい笑顔を返してこう言った。
「さあ…ワタシにもわかりませんね、何を考えていたのか。」
妖精は懐かしいものでも見るように目を細めた。




