1922年13
そうだった…ツタンカーメン…
ツタンカーメンまで登場したら、また、収拾がつかなくなる(>_<)
私はやらかした『パラサイト』を恨めしく思い出した。
「どうぞ、私からのささやかな贈り物です。」
メフィストがカウンターにカクテルを置く。
それは寸胴の、タンブラーと言うグラスに華やかな桜色の液体でカラフルなピンク系のクラッシュアイスがつめられた綺麗な一杯だった。
私とベルフェゴールがそれに目を奪われていると、タイミングを見計らいながらメフィストが恭しく説明をはじめる。
「雛祭りの特別カクテル『SAKURA☆ジュレップ』です。」
ジュレップ…ああ。 私は納得する。
「ミントジュレップの応用型かぁ。」
ミント・ジュレップとは有名なアメリカ生まれのカクテルである。
バーボンウイスキーを炭酸や水で割った単純なカクテルだが、水割りと違うのは、そこにクラッシュアイスがタップリはいり、ミントの生の葉っぱをいれることにある。
でも、バーボンってピンク色では無いよね?
「ねえ、これ、バーボンじゃないよね?何が入ってるの?」
心配になってメフィストに聞く。優しげに見えても悪魔なのだ。
「ジィレップは、アメリカの南部地方で生まれた飲み物で、ベースのお酒は様々です。ウイスキーベースが有名ですが、ラムやワインもございます。
これはシェリー。私から貴女に送る真心でございます。」
メフィストの長台詞を聞いてベルフェゴールが私の酒を奪った。
「何するのよっ。あんたのグラスはそっちでしょ?」
私は叫んで取り返そうとしたが、その前に飲まれてしまう。
文句を言いたいが、ベルフェゴールは怒りを浮かべながらメフィストを睨むので出番がない。
「全く、油断も好きもない。シェリー酒でアバンチュールを誘うなんて、昭和までじゃなくって?」
「アバンチュール( ; ゜Д゜)」
私は話が異次元に展開するので泣きたくなってきた。
終わらない…ファティマの聖母にツタンカーメンまで加わり、悪魔がなんか喧嘩するし、もう、どうしたら。
泣きたくなる私を無視して、メフィストが上品に微笑んだ。
「失礼ですが…私は貴女の部下ではありますが、プライベートは別物です。
大体、我々は、人間ではありません。悪魔ですから、好きなときに恋のハンターに早変わりさせていただきます。」
こ、恋のハンターΣ(´□`;)
嫌だ。本当に…
私は山臥を思い出して頭が痛くなってきた。
山臥は、自分のイケメンを利用して、何か、して欲しい事があると、お願いが口説き文句になるのだ。
メフィストは、何をして欲しいのか…
面倒くさいなぁ。
「わかりました。それでは、業火に焼かれて消えなさい。」
ベルフェゴールが指をならすと、次の瞬間、メフィストがフランベに(°Д°)
が、本当にステーキのフランベみたく、一瞬の炎で消えてメフィストは綺麗な笑顔で新しいグラスを差し出す。
「旦那様によく言われていますから、消えるわけには行きません。
シェリーがお嫌でしたら、ベースをポートワインに変更しましょう。」
メフィストは穏やかに新しいグラスをベルフェゴールに差し出した。
それをベルフェゴールが、炎と共に消してしまう。
「お前にポートワインなど似合わないわ。そして、もらう義理もない。」
ベルフェゴールが叫び、私は少し離れたところでスマホを取り出した。
こんなふざけた事に付き合ってはいられない。
先に進めないと。本当に終わらないわ。
私は離れたところで話を書こうと考えた。




