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1922年8

窓辺が赤く染まり始め、夕方がやって来る。

ベルフェゴールは、窓から差し込む夕日を見つめて、急に笑いだした。


「どうしたの?」

私が聞くと、ベルフェゴールは、興味深げに私を見つめた。

「なんか…凄いわね…」

ベルフェゴールは、染々と私を見ながら、なんか、感動を噛み締める。

「な、何が?」

不気味な雰囲気に、なんだか、嫌な予感が込み上げる。

「作家として、素晴らしい表現力だと思ってさ。」

「は?な、何がっ?」

シドロモドロと考える。ベルフェゴールは、何を言いたいのか?

「ほら、ピオ11世を熱血教師に例えたじゃん?」

「じゃん?」

「うん。あれ、ソ連邦の話じゃなくて、イタリアン・マフィアの事ね。」

ベルフェゴールは、嬉しそうに笑った。

「い、イタリアンって…」

私はたじろぐ、何なんだ、イタリアン…イタリアンって言ったら、ピザとかスパゲッティは好きだけど…

マフィアって!


「イタリアン・マフィアよ。シチリアから生まれた組織…ああっ、彼らを…ツッパリに例えるなんて、斬新だわ。

そして、ローマ法王が熱血教師役とか、カトリックの信者と話しても、出てこない発想よ。」

ベルフェゴールは、なんか、誉めちぎってくるけれど、私はなんか、身の危険を感じる。


ローマ法王に、ま、マフィアとか、そんな話をして大丈夫何だろうか。


「マフィア…って、ローマ法王様とあわせて話して大丈夫なの?」

挙動不審な私にベルフェゴールは、説明してくれた。

何でも、マフィアの始まりは、18世紀に荒れてきたシチリアの警護をローマ法王が地元の兵士などに依頼した。

この頃の法王はピウス7世。敵はナポレオンである。法王領はフランス革命から後、その所有者が様々に入れ替わっている。

マフィアと言っても、複数の組織があり、犯罪組織と言う性質上、本当の事など、私には調べようがないのだけれど。

これについては、諸説がある。が、まあ、シチリアは、ローマ法王とゆかりのある土地で、その信仰も強いものらしい。

で、マフィアの人達も、ローマ法王を一目置いていたのは、確かなようだ。


世界で有数の犯罪組織の彼らではあるが、法王に危害を加える人物は、例え、仲間であっても、かばったりはしないんだそうだ。


なぜなら…お母さんに嫌われるから。


ちょっと、微笑ましく感じてしまう。


「教会と信仰の心を、マンマが持ち続ける限り、マフィアは法王を襲ったりはしないそうだから。」

ベルフェゴールは、何故か嬉しそうな顔をする。

「なんで?」

反射的に聞いた私に、ベルフェゴールは、とても優しげな笑顔でこう言った。

「だって、法王に何かがあったら、マンマが悲しむでしょ?

昭和の不良も、イタリアのマフィアも…

必死で育ててくれた母親の愛情には弱いのよ。」



マフィアに知り合いは居ないので、本当かどうかは知らない。

でも、何となく、真実だと思ってしまうのは、テレビで昔見た、イタリアの母親の優しい笑顔と、自分の母親を重ねてみるからなのかもしれない。


とは、いえ、犯罪組織なので、政権を担うムッソリーニは、彼らを排除しようと努力はしていたようだ。

と、同時に、力をつける彼らと共存しようともしたらしい。


ナポレオンは、法王領を奪おうとしたけれど、

ムッソリーニは、バチカン市国をゆるした。

それは、政権や、自身のはく付けの為なのか…

お母さんに嫌われたくなかったからなのか…


それは、私にもわからない。


「そうね…強面(こわもて)の屈強な男たちを黙らせる母の力…

確かに、マリア様がローマを守って下さったのかもしれないわね。」

私は、ぼんやりとくれる空を見つめた。


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