1917年 33
部屋は素敵だった。
城にしては、こじんまりとし、ホテルと考えるなら、スイートクラスの部屋。
上品なピンクの装飾品にベッド。
そこに、イラストの一部のようにベルフェゴールが馴染んでいた。
「どう?アガルでしょ!」
ふわふわのピンクのドレス姿のベルフェゴールは、可愛らしく笑う。
憎らしいほどかわいい…けど、
「あがらないわよ。もう、場面が変わっても、ファティマと滅亡話でしょ?」
ため息が出る。そして、メフィストをちら見する。
なんでアイツが登場てくるのよ。
「テンション駄々下がりは、ヨハネ23世のところで間違ったからでしょ?」
ベルフェゴールにからかわれて、なんか、もやる。
そう、wikipediaの情報によれば、ヨハネ23世はファティマの予言を見なかったらしい。
「いいのよ〜別に、内容を見ていなくても、1960年にマリアさまからのメッセージがあるって事実だけで。
それだけで、私の考えた位の予測は可能だし、ローマ法王って、聖職者でしょ?手紙を見なくても、中身が分かったりするかもしれないじゃん。」
そう、少女のルチアだけにマリアさまがやって来るとは限らない。
メッセージを開けなくとも、ヨハネ23世は霊的な何かを感じたのかもしれない。
「透視?ローマ法王をエスパーにしちゃ、まずくない?」
ベルフェゴールにゲラゲラ笑われて、絶句する。
いたたまれずに飲んだお茶のお代わりをメフィストが、すました顔でなみなみとついで行く。
「奇跡って言ってよ…エスパーじゃなくてさ。
もう、なんでも良いけど、とにかく、この予言は2000年にヨハネ・パウロ2世によって、一部、公開されたのよ。
内容は、80年代のヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂の事だと解説されて、オカルト民はがっかりしたのよ。」
私は、当時を思い出していた。
2000年プーチンが大統領に当選する
1996年大統領に当選したベンヤミン・ネタニヤフは、大衆の支持を得られずに政治の大舞台をおりる事になる。
そして、現在、こんな状態になっていると思うと、時代は繋がっているんだと思ってしまう。
「がっかり?しっかり金儲けの間違いじゃないの?
現に、あなたも色々買わされたじゃない。」
ベルフェゴール、辛辣である。
「そんなに買ってないわ…五島勉先生の古本だけよ。」
と、言いつつ、関連した本は生涯でいくつも買ったんだろうな、と、苦笑いが込み上げる。
そして、本の知識と次元について思いを馳せる。
本の知識は、その中に書いてある事だけで完結していると思いがちだ。
一度読んで、思い出すこともなければ…それは、一時代を写す、1枚の絵画のように奥行きを感じさせない。
が、長い年月を経て、再びそれに触れたなら、
時と言う次元が加わって、違う見方が出来るようになる。
ヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂…
それだけ聞いたら、凄くスケールが小さく感じるかもしれない。
が、しかし、ここに、本が語る背景を加えると、ゾクリと来るような、想像力を書き立てる物語を垣間見ることも出来る。
ヨハネ・パウロ2世暗殺未遂は、1981年5月13日。
ファティマの聖母がはじめて姿を現したのと同じ月日。
と、言うのも凄いけれど、その前に、ファティマ第3の予言の為にハイジャックがあったのだ。
ハイジャックまでして、人々にその存在を知らしめようと、なぜ、犯人が考えたのか…
確かに、不可解な出来事なのだ。




