1917年 32
「メフィスト…なんで…」
驚愕する私とは真逆に、気品と傲慢をいい感じに混ぜたベルフェゴールが、メフィストを軽く一瞥する。
「メフィスト。お茶の支度を。」と、女主人っぽい声色でベルフェゴールは、メフィストに命令し、私には妹のような、甘えた声で誘う。
「さあ、これで、少しは気分が変わったでしょ?
話の続きをいたしましょう。」
ベルフェゴールの言葉に、私は着なれないドレス姿で背筋を伸ばして座り直す。
そして、大人しいメフィストを横目で観察する。
あれは…私のメフィストに間違いはない。
私は、悪魔のキャラを使う前は、何度か神戻しをする話を作って登場させる。
メフィストフェレスは、神の履歴はないが、私が『子供に害を与える光を嫌う者』と言うイメージを新たに植えつけて作ったのだ。
なのに…なんだろう?
この、会社の接待を思わせる雰囲気は!
作者の設定も…悪魔の上下関係を越えることは出来ないと言うことか。
メフィストは、颯爽とお茶の準備を整え、ベルフェゴールは、レースがふんだんに使われた、可愛らしいドレス姿で私に笑いかける。
「まあ、どうしましたの?」
いつのまにか、象牙の白い扇を開いて、思わせぶりに顔を隠しながら私に聞く。
「どうもしないけど…凄いね。象牙の扇?」
「象牙は、もう、扱えませんのよ?これは、リヴァイアタンの生え変わった牙ですの。」
ベルフェゴール、すましながら、聖書に登場する竜の名前を口にする。
「凄いね…、黙示録の竜の牙…って事でしょ?」
私は、昔読んだ漫画を思い出す。確か、黙示録には七つの頭を持つ竜が登場した。
「違うわよ。なんか、一緒にされたりするけど、厳密には違うの。リヴァちゃんは、食事以外は大人しい子なんだから。」
まるで、子犬の話でもするようにベルフェゴールは笑う。
「リヴァちゃん…まあ、それより、話を進めようか。ファティマの話をしないと。」
私は深く息を吸った。
メフィストまで登場したら、マジで長くなる予感がする。
が、なんとか今月中に終わらせたいのだ。
「確かに、『パラサイト』には、マラキの予言もかかわってきていたわよ。」
と、口火をきって説明を始めた。
カトリック初のアメリカ大統領を見つける遥か前、私は、別の事柄でファティマとマラキの予言が重なってくるのを見つけた。
ケネディとヨハネ23世が同じ1963年に亡くなった様に、ここでも同じ年に亡くなった2人の人物が登場する。
それは2005年。
私は、SARSと『トミノの地獄』の都市伝説を追いかけて、その前後の時代を探していた。
ついでに、マラキの予言も探していたから、この年にヨハネ・パウロ2世が亡くなった事をしる。
で、ヨハネ・パウロ2世が、ファティマの第3の予言を公開したエピソードから、ルチアが同じ2005年2月に亡くなっていたことをしる。
聖母に導かれるまま、長い混乱の世紀末を1人で生き抜いてきた、ルチア・ドス・サントス。
3人の中で一人だけ長く生きた彼女は、聖母様に再開して何を話したのか…
普通なら、満面の笑みで逝くところを想像したいところだけれど、実際はそうでもない感じはする。
なぜなら、ファティマの第3の予言のバチカンからの公開内容に、満足はしていなかったようだからだ。
私は、ルチアと知り合いじゃないから、これも、雑誌とかからの情報だけなんだけど、
あの予言がヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂の事だと言われても、納得できないのは、私だけではないはずだ。




