1917年 26
なんだか、面倒くさい流れになってきて、私はベルフェゴールを盗み見た。
彼女は私に何を求めているのか…
ベルフェゴールはマイペースに紙パックのジュースを飲んでいる。
「飲みたい?」
私の視線に気がついて、ベルフェゴールは、紙パックを自慢する。
「いらないよ。」
私は、ため息を着いた。
「あら、美味しいのに〜フルーツ牛乳って言うのよ。」
悪魔にフルーツ牛乳をドヤられても…
「そうなんだ…それはともかく、話の続きをしようよ。」
私はあせる。気がつくと…既に師走!
この年に全てをかける予定がぁ…壊れて行く(T-T)
「勿論よ。早く貴女の話が聞きたいわ。」
ベルフェゴールは、楽しそうに微笑む。
「そう期待されても…」
話すことなんて…いや、何を話したら満足して消えてくれるんだろう?
マグカップでコーヒーをがぶ飲みしたくなってきた。
私の気持ちが分かったようにベルフェゴールがコーヒーを淹れてくれた。
「そんなに警戒しなくても…ファティマの予言と西条八十の物語をしてくれればいいのよ…面白く。」
「面白く…ね(T-T)」
「あら、その顔、シブイ〜」
ベルフェゴールは、キャッキャと笑う。
私は、諦めて話を戻した。
「面白いかどうかはわからないけれど…なんか、面倒に巻き込まれてきた事はわかってきたわ(T-T)」
そう、この話は思ったより面倒なのだ。
1917年、ポルトガルのファティマで少年少女が見た聖母は、なぜか、ロシアを指名で危険を語る。
これは、共産主義と言う、新しい国家の形に警告したのか…と、考えていたけれど、この年、ロシアは革命で混乱していた。
ロシアから沢山の難民が国を追われ、そこにはユダヤ人もいた。
彼らは聖地イスラエルを目指し、それは新たな問題を生む。
そこに漬け込んだのがイギリス…
バルフォワ宣言が、現在のパレスチナ問題をややっこしくする1つだと、言う人もいる。
2023年現在、本当に困ったことになっていた。
私が大賞落選してから一月がたつと言うのに、戦争は終わらないし、私の連載も終らない(T-T)
それも、こんなに政治が絡むと、もう、金にもならない(>_<。)
わぁぁ…っと叫んで逃げ出したいけれど、剛を質にとられてるからやめられない。
「それにしても…私に何を書かせたいのよ?私にはなんの力もないわよ。」
そう、これだけ書いても100円にもならないのだ。私はコーヒーをがぶ飲みした。
「力なんて…ルチアも無かったわよ。しかも、一緒にマリアを見た2人はすぐに天国へと逝ってしまって。」
悲しそうなベルフェゴールの姿に胸が痛くなる。
そう、ジャシンダ、フランシスコの2人の従弟妹は、1919、1920年と続いて亡くなっている。
そこからの長い時代をルチアは1人で生きて行くのだ。
「そうね…ルチアを思うと、『トミノの地獄』のモデルだとしたら…姉が一番辛い気がするわ。」
切ない気持ちの私をベルフェゴールは、目を細めて見つめていた。
「あら?死んだ人間も辛いわよ。言ったじゃない?和洋折衷の世界観だって…。
早死した子供は、賽の川原で石積みするんでしょ?日本は。」
ベルフェゴールに言われてハッとした。
現世でいきるのも辛いけれど、亡くなった人も、生きてる人の辛い様子を見るのは切ないのだ。
「そうだね。」
ふと、剛を思い出した。
剛もまた、私が小説を続けているのを悲しげに見ているのだろうか?
ま、無いわな。
なんだか、笑いが込み上げる。
剛の事だから、きっと、面倒くさそうにこう言うのだ。
『嫌ならやめちゃえばいいでしょ?』と。




