1917年 25
虹…雨のあと、晴れた空に現れるそれは、運命の好転を表すと言われている。
方舟から陸地に着いたノアも、また、人類の滅亡を乗り越えて、その虹を希望の未来を思い浮かべながら、仰ぎ見たに違いない。
何しろ、神様は人類の罰を、ここまで派手にはしないと虹に約束したのだから。
それだけ聞くと、もう、凄い怒りを神様にぶつけられない気持ちがしたけれど…
でも、確かに、虹って雨のあとに出るものだ。
空気中の水蒸気に太陽の光が反射して出来る。
そう、雨が降らなかったり、水蒸気がない状態になれば…虹は出来ないのだ。
神様の約束を続けるためには、気象の安定が必要で、近年の異常気象の状態で、空気が乾燥してくれば、虹の約束も無くなってしまう…
そんな事考えたこともなかった…
「確かに、気象の変化を付け加えれば…ファティマの聖母の予言も…法王が失神するような内容になるかもしれないわね。」
私はなんだか泣きたくなってきた。
世界の情勢は良くないし、昔の予言本はイスラエルの核戦争とかわめいてるし…まあ、黙示録の影響で、西洋風味の物語は、大概、中東で何かが勃発するんだけど…気持ちのいい話ではない。
「あら?世界の話でひっくり返ったか、なんて分からないわよ?
法王ったって人間なんだし、バチカンの黒い噂なんて千年前からエピソードてんこ盛りじゃん。
自分の保身の為に公表してないだけかもよ?」
ベルフェゴール、悪魔だけあって辛辣だ。
「まあ…確かに、ファティマの予言第3の予言は、後に公表された内容では、法王の暗殺の件…と、確かに、見方を変えたら、凄く私的なないようなんだけどさぁ〜」
私は、たまらなくなってきてコーヒーにウイスキーを少し混ぜた。
ローマ法王は、世界のキリスト教徒の模範であり、人格者。
私的な欲を捨て、異教徒も含めた世界の平和を祈ってる。
そんな風に考えていた。
そんな風に考えながら、魔女裁判に怒り、十字軍の蛮行を嘆き、
中世の乱れた話を聞きながら、ルターの教会批判に共感もした。
共感しながら、法王は聖人だと、何となく考えていた。
確かに、私も滅茶苦茶だった…
ローマ法王も人間で、長い歴史を紐解けば、信者ですら、しょうもないと言っちゃう人物だって登場する。
例えば、テンプル騎士団を解散させたフランス王は、法王をバチカンから自分の領土に住まわせたし、
人間の醜い色々が沸き上がるから、法王を選出するときは、属せと隔離する…コンクラーベの伝統が生まれたのだ。
「何、薄気味悪い笑いを漏らしてるのよ?」
ベルフェゴールに言われてハッとした。
「ごめん、なんか、自分の考えが滅茶苦茶だった事に気がついてさ。でも、やっぱり、私利私欲でファティマの予言を隠していた…と、言うわけでもない気がするんだよね。」
私は、今まで調べてきた色々を思い出していた。
『パラサイト』は、感染ホラーの物語として、私は、作っていた。
が、途中、色々あって変更を加え続けた。
そのなかに、ファティマの予言、マラキの予言も含まれてくる。
2019年から7年前のエピソードを盛る関係から、2012年を探さなくては行けなかった。
私は、マヤ歴の物語で夢中だったけれど、この前後、マラキの予言も随分と噂になっていた。
次の法王を決めなくては行けなかったからだ。




