1917年 23
『トミノの地獄』で、なぜ、姉のふるう鞭の朱房を気になったのかは、私にもわからない。
が、ファティマのエピソードから見える、この詩の物語は違う顔になる。
私は『新解釈』では、中国の農神の伝説からエピソードを考えた。
が、キリスト教で鞭と言えば、それは人に向けて放たれるものではない。
自らの罪を悔い改める為に使われるのだ。
1人生き残ったルチアは、後に修道女になる。
ヘップバーンが映画で愛らしい修道女を演じるくらいだから、やはり、昔から、修道女は少女の憧れの職業の1つには違いない。
が、塾女になった現在の私からしたら、修道女として閉鎖的な空間で生きるなんてつまらなく感じる。
私が親なら絶対止めるところだけど、いきなり、聖母が予言を繰り出したりしたら、反対なんて出来なくなるだろう。
ルチアは、どうなんだろうか?
下手な子役アイドルより注目される存在になって。
「何を考えてるの?」
ベルフェゴールは、私の顔を覗き混む。
キラキラの金色の瞳が可愛らしい。
「ルチアは、聖母を見て幸せだったのか…と、思ってね。」
私の物悲しい気持ちになる。その顔を見てベルフェゴールは笑い出す。
「不幸に決まってるじゃない。いやぁーね。」
「いやぁーね。って、あんた…」
「何、慌ててるのよ?あのひと達は、人に罰を与えるのが大好きなんだから。」
ベルフェゴールは自慢げに言う。
「え…そんなこと、マリアさまだよ…」
いくら、悪魔だからって、マリアさまをディすること無いと思う。
「あら、児童小説に例えるなら、あのひと達の話は、昭和版よ。
ヒットして、信者がいても、不幸ばかりの鬱展開で、主人公は泣くのよ。」
ベルフェゴールは、一度、話を止めて私にどや顔をして続けた。
「その点、地獄は令和版よ。エチエチありの、無職でダラダラしてていいし。」
「……。まあ、とんでもない所で、チート爆撃とか…国が消滅とかもアリなんだろうけど。」
私は、なんか、ため息が出た。
「チート爆撃とかなら、アチラでしょ?イキり転生者並みにド派手に殺ってきたんだもん。」
ベルフェゴールは、そこで急に真顔になる。
そうだった…
ベルフェゴールが神と崇められたとき、ユダヤ人を堕落させたと2万人を疫病で虐殺された…と、聖書には記されていた。
 




