1917年 22
ベルフェゴールは上機嫌に炭酸ジュースを私に渡して微笑んだ。
「ああ、楽しい。あなファティマの聖母をパチもん扱いするとは!
やっぱり、アナタ、好きだわ。」
「ぱっ…パチもんって…」
私は絶句する。確かに、ちょっと怪しいとは思ったけど、パチもんなんて考えてはない。
うん。そこは訂正しないと!
「私、ファティマに、何かが出現したとは思ってる。
ちょっぴり、怪しいとは思うけど…。」
私は強く主張した。
「ちょっぴり、ふふっ。」
ベルフェゴールはからかうように笑う。
「うん。私、ジャンヌダルクに囁いた天使は人間の可能性を考えるけど、ファティマの聖母は人間のでっち上げではない気がするんだよ( ̄〜 ̄)」
私はベルフェゴールに説明を始めた。
「確かに、ファティマの聖母は怪しいよ。
でも、どうしても、人間の仕業とは思えないエピソードが続くのよ。」
そう、私はこの話はあまり好きではなかった。
基本、マリア像が泣いたりする奇跡の話とかは興味がなかった。
なぜかは分からない。多分、キリスト教徒ではなかったからかもしれない…
だから、驚愕や、感動すべきシーンに共感できなかったからかもしれない。
読みたい本は沢山あって、こずかいは限界がある。
だから、ファティマの聖母の本は買わなかった。
それを、21世紀になって手にすることになる。
五島先生の本は、やはり、はじめからドラマチックで面白かった。
これを買わなかったのかが不思議な気がした。
現在でも、ネット動画の都市伝説で取り上げられるこの予言が、オカルトブームと共にスポットが当たるのが、1981年5月である。
ファティマの聖母は、人類に色んなメッセージを送る。
中でも、日にちの指定がある予言がファティマの第3の予言と呼ばれるものだ。
聖母は1960年を過ぎたら公表しなさいとメッセージをルチアに託す。
SNSなんて無い時代、ルチアは教皇にメッセージを託すが、公表されることはなかった。
都市伝説では、あまりの恐ろしい予言に、教皇は失神して予言を封印した…なんて言われた。
「で、1981年にどうしても、それを公表させたいと考える人物が現れて、ハイジャックをおこすのよ。」
「それ、ガチの人的犯罪じゃん。」
ベルフェゴールは鋭い突っ込みを入れてくる。
「まあ、そうなんだけど…この話をしないと、なんで、ファティマの予言が広まっていったのか、わからないからさ。聞いてよ。」
私は苦笑した。
「いいわよ。」
ベルフェゴールは、からかうように私を見つめる。
「やりづらいなぁ…まあ、なんだ、うん…とにかく、ハイジャックをおこしてまで、世界に知らしめたい何かがそこに書いてあったらしいんだよ。」
私は焦りを誤魔化すように強い口調で言った。




