1917年 17
「ふふっ。面白かったわ。でも、その話は脱線ね。」
ベルフェゴールは、楽しそうに温かい紅茶のおかわりを入れてくれた。
「だっ…脱線なの?」
私は叫んだ。このまま、上手く終われない悲しみを。
「そうよ。だって、これ、『パラサイト』の謎解きの物語でしょ?」
ベルフェゴールは、当然、と言わんばかりに私をせめる。
「そういう分けでもないけど…」
と、慌てながら、それを言うなら、『パラサイト』にベルフェゴールは、登場しないと心でボヤく。
「そうなの?でも、西條八十とも関係は無くない?」
「いや、いや、それ言ったら、ベルフェゴールだって関係ないじゃない!」
私は叫んだ。叫びながら、ふざけて剛をベルフェゴールなんかにした事を後悔した。
「あるわよ。」
ベルフェゴールは、すまして言った。
「え?」
「なに、ボケた顔してるのよ?私、ベルフェゴールよ?」
ベルフェゴールは、自信満々に胸に右手を当てて可愛らしくどやる。
「見えないけど…ね。」
何となく、ベルフェゴールのドヤリに癒されてつい、笑った。
「もうっ、これ、地獄の話でしょ?私、悪魔なんだから。しかも、偉いのよっ。」
キュン(*'ω'*)
かわいいっ。ああ、あの黒髪をツインテールにしてみたい。
「そうね、確かに。でも、それを言うなら、『聖書の予言』だって、ハルマゲドンの話だわ。
90年代の混乱する中東の話と聖書の暗号が、いま、この状態で再確認すると、なかなか、考えさせられる本よ。」
私は悲しいニュースと20年前を思い出す。
「確かに、でも、あなたは、ハルマゲドンなんて、あの話に盛らなかった…いいえ、『核兵器によるハルマゲドン』なんて考えなかったはずでしょ?」
ベルフェゴールの言葉に胸がつまる。
25年の大阪万博に向けて作った話だった。
混乱する世界の中で、でも、未来への夢もある話を考えていた。
戦争で街が滅茶苦茶になるような話は考えなかった。
「そうね。確かに、『トミノの地獄』から、ダンテの『神曲』、そして、ダン・ブラウンの『インフェルノ』」
『インフェルノ』
この作品を途中で見つけて驚愕した。
ウイルスとパンデミックとダンテが被っていたから。
もう、『インフェルノ』のパクリとか、言われるんじゃないかと泣いた。
でも、違う。元は、聖徳太子と常世虫の物語だったのだから。
私は蚕を追っていた。
『オーデション』のブックマークのアンコールの意味もあったから。
『肉食の蚕』に匹敵する何かの答えをこっそり披露したかっただけなのだ。
それが、寄生バチからウイルスが加わって…七山七谷越えて、こうなっちゃったのだ。
そこに、2019年の風味付けに『トミノの地獄』を入れちゃって、もう、滅茶苦茶(T-T)
悲しくなってきた。
「まあ、悲しまなくても、クッキー、おあがりなさいよ。」
ベルフェゴールに慰められる…ため息が出てくる。
「ありがとう。私、『インフェルノ』をパクってないし、人類を滅亡させる気もさらさら無かったわ。本当に!」
でも、うっすら、パンデミックの予感をはじめの頃はいれようとした事を思い出して胸が痛んだ。




