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2話 古本

私は、確かに考えた。

小さな田舎の古本屋から世界が見えるとかなんとか…

しかし、そんな文言、昭和のオカルトミステリーでは前奏みたいなもんじゃんか。


私は、2012年マヤ歴の本を見つめた。


アポカリプティック・サウンド…


この本によると、2011年8月11日にウクライナのキエフを襲った怪音が始まりだって書いてある(>_<。)


2023年現在、これは洒落にならない。


あーあ。もう、どうしたら良いんだか。


私は頭を抱えたくなる。 が、今、抱えているのは頭ではなく大量の古本…

しかも、一番安い100円の本だ。


大手の古本は、値段をゆっくりと下げられ、100円で売れなければ廃棄処分されてしまう。

私は、このギリギリの場所にいる100円本に惹かれるのだ。


そう、今を見逃せば、明日にはあるかどうか分からない、一期一会の空間がそこにはあるのだ。


2012年マヤ歴の本

これだってそうだ。


この本は、ペラペラの薄い紙の表紙の、コンビニ本と言われる部類の本だ。


コンビニ専用で売られているそれは、普通の書籍と違い、雑誌のように時がたてば撤去されてしまう。


世の中には、古本を嫌う本好きもいる。

古本では、作者に著作権が入らないから。

しかし、私は逆に考える。

要らなくなったらゴミになる…こんな意識がついたら、『本』は、宝物から、ポテチのビニールのような消費物になってしまう。


そうなれば、内容さえ読めれば良くなり、電子文庫でいいや、と、なってしまう。と、思う。

本はポテチのビニールとは違う。

中身を読み終わっても、その物自体に物語がある。

なんにせよ、古本屋にある時点で、誰かが定価でこの本を買ったのだ。

ある日、コンビニの本棚でこの本を見つけて…ワンコイン…弁当を買えるだけの対価をこの本に与えた人物がいる。


どんなレビューより信用があるじゃないか。


私は、この本をいつ手に入れたのかは忘れた。が、多分、2015年以降だと思う。

2015年…様々な計算によるワンチャンが消えて、ノストラダムスとマヤ歴がインチキ判定された年。

それまでは、もう少し高く売られていたに違いないのだ。


1999年人類滅亡…しなかったところから、人類滅亡説はノストラダムスからマヤ歴の終わりにシフトして、都市伝説は2012年に延命した。


ほんの裏側には発行日が載っている。

2012年1月。


人類滅亡の映画とか、ネットなんかも話題だった気がするが、311から激減したフリマ等のイベント、仕事の激減で、そんなマクロな話を気にする余裕はなかった気がする。


少なくとも、請け負い仕事の剛は、ハローワークに通っては明日の仕事に頭を悩ませていた。


剛からすれば、恐怖の大王が降臨しなくても、仕事が見つからなければ、同じ事だ。


でも、私は密かに2012年と言う年に深い感慨を覚えていた。


小さな頃、ノストラダムスが世紀末の地獄絵図を予言するスペシャル番組に思いを馳せた頃からの日々がよみがえる。


私の世代には、1999年は特別な祭りのような熱があった。

世紀を無事に越した時、12年は長く感じられたが、気がつけば、もう、その時がやって来たのだ。


10代の私が、夜空を見上げながら、真剣にその年に思い悩み、その後に訪れた世紀末から既に12年。

マヤ歴や太陽風や極移動なんて不気味な話が、大河ドラマのテンプレのように胸に迫ってくるのだ。


この本を初めに買った人は…何を思ったのだろう?

コンビニ専用本は、書店と違い、回転が早いので、発行日から、前後数ヵ月の間に買われたと予想される。

コンビニ本は、男性がよく買うから、たぶん男性で、忘新年会やパーティーのネタを仕入れるために買ったのだろうか?


それとも…克也のような探求者だったのか…


『いや、俺はそんな一般向けの雑誌なんか買わないよ。それらは、上の奴等によって検閲されているからね。真実は…そんなところにはないのさ。』


克也なら…そう言うに違いない。


が、上の奴等とやらに検閲されたと克也に批評されそうなこの本は、出版10年を経て、2023年、冒頭ブッチギリで現在の不安を煽りまくっていた。


今から3年前には…久しぶりにページを開いた私をエタの迷宮に引きずり込むだけの力を放ちながら。


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