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英雄様のお仲間のトカゲさん

 朝の鍛錬が終わった英雄は「少し狩りに行ってくる」という一言を残してどこかに消えた。宿の店主いわくいつものことらしい。是非とも狩りをしている様子を取材したいところだが、私のような底辺作家が後ろについていける程現実は甘くない。あの英雄のことだ。きっと一般人には厳しいところに行っているのだろう。

 そんな私の事情を考慮して、英雄は一匹の女性を残してくれた。私的にもこの表現はおかしいと思う。一人ではない。一匹なのだ。英雄が「わしの仲間の仲間のようなものを一匹残しておこう」わしが狩りに行っている間に話を聞くと言い。トカゲ、貴様には休憩時間をやる。休むがいい」と言っていたので一匹で間違いないだろう。


 という訳で、今回はトカゲと呼ばれた全体的に黒が似合いそうな女性に話を聞くことにした。


「ひどい、ひどすぎる。この扱いはないよ……」


 顔を手で隠しめそめそするトカゲの姿を見ていると、どうも取材する気になれない。だが、それでもめげずに話を聞くと、思わぬ事実が明らかになった。

 トカゲはトカゲでも、古き時代から生きている空飛んで火を噴くトカゲだった。いや、正直に言おう。彼女こそは英雄にブレスを吐いていたあの古龍種なのだ。

 何故トカゲ呼びされているのか、彼女はそれで納得しているのか、いろいろと疑問は残る。ただ、英雄が狩りに行くときに、土下座していたトカゲの姿を見ているので、力関係はすぐに理解できた。

 きっと言いたくても言えずに心に貯めている思いがあるに違いない。私にだって、私の原稿を没だと言いまくるあのくそ編集に向かって文句を言ってやりたいと思ったことが何度もある。ため込むのはよくないなど適当なことを言ったら、トカゲはべらべらと話し出した。


「もうあいつはひどいってものじゃない。鬼だ、悪魔だ。やめてと言っても修行だとの一点張りでやめてくれないし、こんな格好させるし……なんでオスである僕が人間の雌の姿しなきゃいけないんだよ、畜生……」


 ミルクを飲みつつ瞳を潤ませながら英雄に対する愚痴を吐くトカゲ。その姿はどっからどう見てもはかなげな女性って感じはするが、どうやらオスのようだ。性別を超越する英雄のパートナーも性別を超越した存在になっているらしい。

 もしかしたら英雄と主に行動している私も、いつか永別を超越することができるのではないかという期待感が生まれてきた。

 今後が実に楽しみである。


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