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ヴェルトアーデン交響譚  作者: 乃東生
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第四章

私のいる場所は並び連なる世界の隙間。漆黒の闇は優しくはあるが音もなく色もなく。

周りを取り囲む世界は色鮮やかに光輝き、でも私は観客のごとくそれを眺めるだけ。


私の手から生まれ出た物ものは、最後はフレイの腕の中へと還る。

流れるように繰り返される循環。だけどそこにも時折綻びは生じる。



揺蕩う闇の中に人の姿を見つけた。

隙間から漏れ出たものは、同じく何処かで空いた隙間へと消え、本来ならばこの場に留まることはない。


それは本当にたまたまの偶然。


私は彼と出会った。



ただ見ているだけだった世界の住人。

それに触れてしまったことが私が犯した最初の罪。罪の始まり。







彼を追い求め世界に降りた私には、もう絶対的な力はない。


だからこの世界は私に優しいように。自分を守る為に、力ある者達は私に敵意を向けることのないように謀り、そして彼と再び出会うまでの永遠を手に入れる為にあの氷室を作った。


私が活動するのに必要な生命は瘴気の中の魔力。黒く染まる髪は罪。それを取り込んだ証。

効率の悪さは「始まりの魔女」に出会ってからは格段に改善され、

目覚めるにあたって何事も無かったかのように白く抜ける色は、その方が都合が良いと判断したから。



そう、全てがあさましき計算のうち。




だけど表層の意識だけはただ純粋なラーウ()


罪にまみれたままで彼に会いたくなかったから。





人びとが私を呼ぶ声がする。


痛い、辛い、苦しい、助けて。

幸せになりたい。愛して欲しい。金持ちになりたい。生きたい。お腹いっぱい食べたい。綺麗になりたい。死にたくない。あいつが憎い。殺したい。優しい恋人が欲しい。夢を叶えたい。健康になりたい。成功したい。



望む。願う。求める。


祈る想いが私を呼ぶ。




でも私にもうそんな力などない。


私自身が同じであるのに。

彼に会いたいと望み、願い、求めたのだから。






その祈りの大半は純粋であっただろう。祈りも力となる。だけどこの地にあるのは歪んだ力。


かの魔女は『望むな、願うな、求めるな』と弟子に言った。その通りで。

歪んだ力では真っ当に叶うはずなどなく。


吹き出した想いが天へと向かった。



複雑に絡まり醜く縺れ。

一度掻き消えた()()()、色を変えて顕現する。



ラストの章です

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