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第一章
好奇心でたまたま降りてみただけ。
自分には、障りなどど言うものは何も関係ないから。
ただ暗く裂けたその奥底に何があるんだろうと、ふと思った。それだけ。
「暗いな」
魔女は呟く。
永遠と落ち行く奈落。
音も光も吸収される漆黒の空間。
「ちゃんと底もあるし声も出せる訳だが?」
魔女は鼻で笑う。
奥底に住むものは、混沌と闇の世界の住人。
それは異形の者。
「―――ん?」
遠くに小さな灯り。
導くように増えてゆく。
「呼んでいるのか?」
導かれるままにたどり着いた空間。
中央に氷室の台座。
淡い繭のようなものの中で眠るのは、緩やかな漆黒の髪の少女。
「……………異形の者には、見えないな」
魔女は悩む。
触れるべきか、触れないべきか。
その選択から世界が動く。