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 ことの顛末はこうだ。

 雛酉さんは成仏の手順を間違えた。花岡和男さんを自分の体に乗りうつらせたまま、成仏させてしまった。和男さんの魂は無事に天国に行ったのだが、和男さんの現世での「姿」が雛酉さんの魂に擦りついてしまった。雛酉さんの魂は、現世での「姿」を二つ持つ状態になり、5分ごとに雛酉さんの元の姿と和男さんの姿が入れ替わるらしい。

 幽霊だった和男さんの姿は普通の人には見えないが、霊感がある僕には見えてしまう。だから今朝から僕だけに、雛酉さんと和男さんが入れ替わるおかしな光景が見えていたのだ。


「引いたよね?」


 雛酉さんは野太い声で僕に言った。たしかに制服を着た和男さんが、もも毛の生えた太ももを露出させる姿はかなり情報過多な絵面だ。でもそんなことで僕が雛酉さんを嫌いになるわけがない。


「そ、そんなことないよ。その姿でも雛酉さんには違いないし。そ、それに、ずっとこのまま入れ替わり続けるわけじゃないんだよね?」

「わからない。お父さんが言うには、その可能性もあるみたい」


 雛酉さんの暗い顔をしてうつむいた。たとえ霊感がある人にしか見えないとはいえ、5分ごとにおじさんと入れ替わるのは、思春期の少女にとって辛いはずだ。


「ねえ羽生くん。私、転校するね。隣の席がこんなのだったら気が散ると思うし」

「待って雛酉さん! 僕は隣の席がどうだろうと気にしないよ。それに」


「私が気にするの! 羽生くんにだけは、こんな姿見せたくはなかったのに」

「えっ? それって」


 僕は困惑した。目の前の雛酉さん(和男さん)が、僕を恋焦がれるような目で見ている。嘘だ、今まで消しゴムを落とした時くらいしか、会話したこともなかったのに。まったく、女心はわからない。


「……っ!!」


 雛酉さんは顔を真っ赤にして僕から目をそらした。(察しなさいよ……)と言わんばかりの雰囲気だ。こういう時、なんと言えばいいのかわからない。すると雛酉さんはは恥ずかしそうにしながら、こう言った。


「あのね、羽生くん。お父さんから聞いたんだけど、「姿」を成仏させるには、その姿に似つかわしくないことをする必要があるみたいなの」

「似つかわしくないこと?」


「うん。和男さんの、おじさんの霊がいちばんしなさそうなこと。たとえばその、男の子と、つ、付き合ってみる、とか?」

「ええええっ!!」


 僕は驚きと嬉しさで心臓がはち切れそうになる。かくして僕は、五分ごとにおじさんと入れ替わる憧れの美少女と付き合うことになったのである。


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