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「ええ!! うそでしょ!」


 突然すぎる雛酉さんの告白に、僕は取り乱して後ずさりした。てか雛酉さんの顔が近い! 驚きと恥ずかしさで僕の顔は汗だくだ。そんな僕を見て、雛酉さんは小さな子供のようにくすくすと笑った。


「うん、うそだよ。冗談」

「え? ああ、なんだ、あはは。よかったあ……」


 僕はほっと胸を撫でおろした。

「でも私の半分は幽霊。これは本当」


 半分は幽霊。雛酉さんの聞きなれない言葉に、僕はまばたきをする。


「半分は幽霊?」

「うん。ちゃんと説明するね」


 そうして雛酉さんは僕をじっと見つめたまま、事の経緯いきさつを話しはじめた。


※※※


 雛酉さんは、生まれつき強い霊感を持つ一族に生まれた。その一族の人々は、誰もが幽霊たちとコミュニケーションがとれ、その特性を生かして霊媒師として活躍していた。一人娘の雛酉さんも霊媒師を継ぐため、修行をしながら高校に通っている。

 幽霊が生まれてしまう原因は、この世に未練があるからだ。雛酉さんたち霊媒師の役目は、その未練の内容を聞き、解決して幽霊に成仏してもらうこと。高校生になってやっと一人前になった雛酉さんは、3回目の仕事で、ある中年男性の霊に出会ったらしい。


花岡和男はなおかかずおさんって言ってね。うちのクラスに花岡さんっているでしょ?」

「うん。テニス部の子だよね」


 花岡さん、ふわふわした感じのかわいい女子だ。雛酉さんと同じで、モブキャラの僕は近づきがたい存在である。


「和男さんは花岡さんのお父さんだった。でも小さい頃に離婚して、それから娘さんに会う事すら許されなくなってしまった。和男さんは娘さんに会えない未練を抱えたまま、去年病気で亡くなった」

「なんかかわいそうな話だね……」


「そうでしょ。私は和男さんの未練を解消するために、一日だけ私の身体を和男さんに貸し出したの。つまり、和男さんに乗り移ってもらった。それで和男さんは私の体を通して、元気に学校生活をおくる娘さんの姿を見ることができ、和男さんは満足そうに成仏していった。だけど成仏の最後の過程で、ちょっとしたミスをしちゃって」


 雛酉さんは恥ずかしそうに顔を赤らめて、綺麗な黒髪を触った。


「ミス?」

「うん。和男さんの魂は成仏できたんだけど、姿の方は……」


 その時、雛酉さんの体からまぶしい光が出始めた。またさっきと同じだ。僕は腕で目をさえぎりながら、雛酉さんの影を見た。可憐な姿が少しずつ変化しはじめる。


「いやっ!」


 雛酉さんは小さな悲鳴を上げて、煙のように僕の前から消えた。そしてそれと入れ替わるようにして、さっき目にしたおじさんの姿が、雛酉さんの制服の内側から浮かび上がった。似ても似つかないその姿をみて、僕は恐るおそるおじさんに声をかける。もしかしてこのおじさんは、花岡さんのお父さんの「姿」なのではないだろうか。だとすると中身は……。


「……雛酉さん、だよね?」


 すると野太い声で、僕の憶測通りの答えが返ってきた。


「うん。中身は私」




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