どうも、勉強中です。
ゴールデンウィーク中に更新したかったので間に合いました…よかった…。
でも少し短めです。やっと話が進んで書きたいとこ書けそうなので、次は早めに上げられたらと思います。
思うだけ。(ˇωˇ)
「あら、オズはもう紅茶の入れ方をマスターしたの? 凄いわねぇ」
シンシアさんが用意したのとは別の、子供でも持ちやすい程度の小さめなティーポットを手に取った俺を見て奥様はそう微笑んだ。片手を頬に当て、子供の成長を目の当たりにした親みたいな視線がむず痒い。
「まだ奥様方にお出しするレベルではないのですが…練習で自分の分は入れさせていただいてます」
「まあ、貴方の入れた紅茶が飲める日が楽しみだわ」
ヒューバートさんやシンシアさんを中心に、使用人の皆さんはとにかく色々なことを俺に挑戦させようとする。俺が将来的にお嬢様付きの使用人として何でもこなせるように、経験を積ませようということらしい。色んなことに手を出しすぎていて、始めは知識がごちゃごちゃして失敗ばかりだったが、最近は段々と慣れてきたのか先輩方の助けなしでもこなせるようになってきた。
まだまだ精進しなければだが、賄いのスープを任される程度には力をつけている。近々パンの焼き方を教えてもらう約束を料理長に取り付けたので、この調子でいけば主菜…いや(賄いの)メインを任される日は近いやもしれない。
少し得意になっていると大人達の視線がまた生暖かくなっていることに気付く。…駄目だな、オズとして生活するようになってからどうも身体に言動が引っ張られてる気がする。周りはその方が子供らしくていいとは言うが、こちとら精神年齢は20歳を超えてる。気付いた時の羞恥心がヤバい。
「お嬢様、ケーキは何になさいますか? 料理長はフルーツタルトがおすすめだとおっしゃって……お嬢様?」
「えっ?」
話題を変えようとお嬢様に茶請けを勧めるが、なぜか上の空だった。いつもなら嬉しそうに寄ってきてケーキを選びだすというのに。
もしかしてお腹が減っていなかったのだろうか? お昼の量が多かったか? ならクッキーなど小さなものを用意すべきだった。漏れそうになる舌打ちを我慢し、きょとりと目を瞬かせるお嬢様に向き直る。
「すみません、すぐになにか軽いものを用意します。何がよろしいですか?」
「あ、わわ! ちがうの、ちがうの! ケーキはいただくの!」
「しかし……」
慌てて否定するお嬢様に思わず眉根が寄る。いそいそとケーキを選びだす様も、なんだかいつもより元気がないように感じた。思えばここ最近、どこか物憂げというか、何か考えているように押し黙ることが多かった気がする。
俺はお嬢様に掬われてここにいる。だからお嬢様が何かに困っているなら、手助けがしたい。どうしたら憂いの種について吐…教えてもらえるのか、頭を抱えそうになったとき。ふふと、思わずと言ったように声が漏れた。奥様だ。
「まあまあ、エピったらお見合いのことを悩んでいるの?」
「おかあさま!」
「…お見合い、ですか?」
真っ赤になって声を張り上げる娘の姿がおかしかったのか、奥様は口元を隠してついには笑い声を上げた。
「そうなの。この間、いいお話をいただいたの。だから近々顔合わせをしましょうってことになってね。エピは歳の近い人はオズくらいしか知らないから、不安になってしまったのよね?」
「もう…オズにそんなこと、いわないでください…」
頬を膨らませ、上目遣いにこちらを伺うお嬢様は百点満点に可愛い。が、いつもなら口から溢れてくる褒め言葉が詰まったように出てこない。理由は簡単、俺はめちゃくちゃ動揺していた。
分かっている。貴族が幼少期のうちに婚約を交わすのはよくあることで、身分が高くなればなるほど申し出は当然多くなる。寧ろ公爵令嬢のお嬢様が七歳になるまで、そういった話が上がってこなかったのはかなりのヘアケースとも言える。ただ単に旦那様がふるいにかけすぎて候補が残らなかっただけな気しかしないが。
だがしかし、令和を生きていた日本の高校生男子としての感覚が早すぎない? というのである。幼児だぞ。そんな早くから相手をあてがう必要あります?
まあ、幼い頃からの許嫁とか、そういう系統の恋愛ものの良さというのも分かるには分かる。前世の妹がそれ系が好きでよく語っていたので。理解はしてないが、その需要の高さは知っている。しかしフィクションだからいいのであって……!
そんなことをもだもだ考えている間に、奥様とお嬢様の話は続いていく。そもそも婚約云々に対して反対はないのだけど。先程言ったように旦那様が散々ふるいかけた結果に選ばれた相手だ。相応の家柄と能力を持っているのだろう。お嬢様が将来的に幸せになれるのなら俺が口出す必要がない。というか余地がない。異を唱えたとして、なんの力もない俺の発言で何が変わるというのか。
まあ理性的な部分がそう判断したとて、やはり現代っ子の感覚は独りでにぐちぐちと文句を募らせるのだが。まあ、もしかしたらお嬢様が相手方を気に入らないかもしれないので。このもやもやはその時くるまで胸の内に秘めるとして。
「まだ相手の方に会わせてあげられないけど、婚約が決定したらオズもご挨拶するのよ。それまでに礼儀作法、きちんと覚えておくのよ」
いつの間にやらカリキュラムが増えていた。そちらの方が問題である。