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第7話 食料調達しました



 あれから何日かはプリエラに看病してもらいながら過ごした。

 献身的に尽くしてくれて本当に感謝しかない。

 僕にできることならなんでも言ってくれと言うと「それでは保留で……」と言われてしまった。


 まぁ、プリエラの言うことだ。

 そんな大事にはならないだろう。


 後、プリエラはホワイトベアを仕留めたことを皆には言わないで欲しいと言っていた。

 魔物の森で生きる上で上位の魔物を倒すことができる者は喉から手が出るほど欲しい存在だろう。

 それを隠すというのは良く分からないがプリエラの頼みなら仕方ない。

 このことに関しては黙っておこう。

 他の四人には倒れていたホワイトベアを運んだと説明してあるらしい。

 そもそもあの大きさのホワイトベアを持って帰る時点でおかしいのだが特に怪しまれず、ただただ感謝されたようだ。


 そして、僕が動けるようになってから今まで音沙汰が無かった他の四人と久し振りに顔を合わした。

 一番初めに会ったのはリーダー的存在のファナだ。


「プリエラを助けてくれたことには感謝するわ、でもだからと言って余りプリエラを惑わすのは感心しないわね」


 久しぶりだというのに随分な言われようだ。

 まぁ、傍から見たらよそ者の僕を自室に招き入れ看病してるのは明らかにおかしいからな。


「別に感謝する必要はないよ。僕は僕の意志でプリエラを助けただけだ。プリエラにも無理はさせてないんだけどね」


「そう。今はそういうことにしておいてあげる」


 そのままファナは何処かへ行ってしまった。

 初めて会った時に不干渉条約なるものを結んだため、普段は接することがないのだが、今回はプリエラのことだから仕方なくという感じだろうか。

 ファナは恐らくこの集団のリーダーだ。プリエラを気にするのも当然と言える。


 次に会ったのはアイリスだった。

 アイリスはプリエラ曰くみんなのお姉ちゃんポジションらしい。


「プリエラちゃんを助けてくれてありがとう」


 それだけ言って何処かに行ってしまった。

 あの目は僕のことを全くと言っていいほど信用していないな。

 というか他の四人に対しても僕ほどではないにしろ完全に心を許してはいない目だ。

 おっとりとした印象のある子だが、何か訳ありな感じだ。

 まぁ、人は誰しも幾つかの秘密は持っているもの。

 それを詮索するのは野暮というものだ。


 次に来たのはミーちゃんだった。

 この前会ったときはプリエラを心配して泣いていたが今は凄く笑顔だ。


「プリエラちゃんを助けてくれてありがとう~!ミーはね~ミレストリアっていう名前なんだ~仲良く……ハッ!仲良くしちゃダメなんだった!」


 ミーちゃん、ミレストリアって名前だったのか、初めて知った。

 最初は物凄い笑顔で話しかけてきてビックリしたが途中でハッと何かに気づいたように逃げ去っていった。

 僕が話す暇すらなかったな……

 多分、元々元気な子なんだろう。

 プリエラのことを一番気にかけていたのは恐らく彼女だろうし、その無事が分かって嬉しいに違いない。

 僕も純情そうな子に冷たく当たるのは良心が痛むので話しかけて来たら応えるくらいはしよう。


 そして、一番の問題と思われていたカナリナは完全に僕を無視している。

 僕もそれで問題ないし、これが正しい形だろう。


 この四人はこれで良いとして、問題はプリエラだ。

 僕と仲良くすることでプリエラが他の四人との仲が悪くなるのは避けたい。

 慕ってくれるのは嬉しいがそれでプリエラが悲しむのは見たくない。


(必要以上の接触は避けた方が良いのかもしれないな)


 ◇◆◇


 動けるようになった僕はとりあえず食料の調達から始めた。

 ここ数日はホワイトベアの肉ばかりを食べていたがそろそろ他の物も食べないと栄養が偏って良くない。

 それに魔物の肉は多少腐りにくいにしろ、そろそろ腐る頃合いだ。

 腐らせてしまうのはもったいないのでその処理もするつもりだった。


 そういえば最近はプリエラが僕に料理を教わりに来るようになった。


 僕は誰かに教えることは好きなので喜んで教えてあげている。

 最初は刃物を使うときも危なっかしくて見てられなかったが今では様になってきた。

 肉に火を通すことを覚えたのは成長と言わざるを得ない。


 それにプリエラに料理を教えることで他の四人の食事も多少はマシになるだろう。

 最近はマシになってきたが、あれほど痩せているのは正直見ていて辛い。

 プリエラが他の四人にしっかりと食べさせれば僕が四人を見ることで心を傷めることもないのだ。

 まさに一石二鳥、三鳥というわけだ。


 そういえばプリエラはそこまで痩せていないな。

 初めて見たときは他の四人より酷かったと思ったのだが今は肉付きが良くなっている。

 パラセートの影響で細くなっていたのだろうか……

 そして、そのことにより新たな問題が浮上してきた。


 ボロボロの布みたいな服なので肉付きの良いふとももとか胸とかがチラチラ見えて非常によろしくない。

 どうしても視線が誘導されてしまう、まさかとは思うが魅了の魔眼でも持ってるんじゃ無いだろうか。


(ば、バレてないよな?)


 こういう視線に女性は敏感と聞く。

 このままではダメだ。


 僕の理性が生きているうちに新しく服を新調しなければならない。

 僕は服の新調の重要性を再認識する。



 さて、今は食料を探しに外に出ている。

 幸い近くが森だから食べ物には困らない。

 もちろんきちんとした処理をした上で食べられるようになるものがほとんどだ。

 処理を間違えば最悪の場合は死んでしまうので、こういう知識は自給自足をする上で必須となる。


 僕が歩いていると前から桃色の髪を揺らしながら誰かが歩いてくる。

 あれはミーちゃんか。

 その手には溢れんばかりの果物や植物がある。


「あー、ってダメなんだった!」


 ミーちゃんは僕を見て声を掛けてくるが、この前会った時同様、直ぐに走り去ってしまう。

 その去り際、ミーちゃんが持っていた果物を一つ落としてしまう。

 それを見た時には声を出していた。


「ちょっと待ったァ!!」


 僕を避けようとしていたミーちゃんだったが僕の大声に驚いたのかビクリとして動きを止める。


「ど、どうしたの?」


「どうしたもこうしたもあるか!今持ってるもの全部見せてみろ」


 僕はかなり強い口調でミーちゃんに荷物を見せろと言う。

 男の僕が小柄なミーちゃんに詰め寄る様はカツアゲにしか見えない。


「こ、これはミー達のなんだから、あ、あげないよ」


「い・い・か・ら!とりあえず見せろ!」


 僕は半ばひったくるようにしてミーちゃんから荷物を奪う。

 そして、その中身を見て戦慄した。


(おいおい、ここまで食べられないものばかりを集めるのも難しいぞ)


 そこには死に直結するような劇薬は無いまでも人間が食べれば身体に不調をきたすものばかりが集められていた。

 もはや食べられないもの博物館でも開けそうなレベルで色んな種類がある。


 ここまででかなり動揺してしまった僕だったが少し冷静になる。


(落ち着け、何も僕が知っていることが全てじゃない。もしかしたら僕が知らないだけでミーちゃん達はこのどうしようもないものを調理する方法を知っているのかもしれない)


 世界には様々な食文化がある。

 僕の価値観で食べられないと決めつけられるほど僕は偉くない。

 それによくよく考えればミーちゃんはこれを食べるだなんて一言も言っていない。

 もしかしたら爆弾でも作るのかもしれない。

 冷静になった僕は少し怯えているミーちゃんに笑顔で話しかける。


「驚かせてしまってごめん。これって何に使うのかな?」


 怯えた表情で僕を見ていたミーちゃんだったが質問には応えてくれた。


「た、食べるため……だよ?」


 そうかー、食べるためかー。

 うーん……


 落ち着けよ、僕。

 まだ希望は残ってるぞ。


「ちなみにどうやって食べるのかな?」


 僕が笑顔で続けるとミーちゃんもいつもの(と言ってもそんなに長い付き合いではないが)調子を取り戻したのか元気な声で言った。


「野菜はねー、生で食べるのが一番なんだよ~」


「アウトォオオオオ!!!!」


 僕の大声に再度ビクリとするミーちゃん。

 急な叫びに困惑している様だ。


「嘘だろ!?嘘だと言ってくれ。まさかこのいかにも毒々しいキノコも人の叫び顔みたいなニンジンも全部生で食べるのか?そもそも美味しくないし、食欲も湧かないだろ?」


 僕が早口でまくし立てているとミーちゃんの困惑具合も一段と上がる。

 だからこそなのだろうか、ミーちゃんがポツリと呟いた言葉は嘘偽りのない心からの叫びだろう。


「だって、他に食べられるものがないもん……」


 その言葉を聞いて僕も落ち着く。

 食べられるものがない……か。

 確かになんでこんな所に住んでいるのかは分からないがここは決して豊かな場所ではない。

 周りは森に囲まれており、いつ魔物が襲ってきてもおかしくない。

 植物だと思ったものが急に大口を開いて噛みついてくるなんてこともある。

 そんな環境で農作なども出来ないとなると確かに食べられるものは少ない。


 それに僕は小さいころから冒険者ギルドで本を読み漁ったり師匠から話を聞いたりしていたから知っているだけで、教育を受けているようにはみえない彼女たちに食べ物を見極めろというのは酷というものだろう。


 もし僕が何も知らずお腹が空いて森にいたら、やはり彼女たちのようになんでも食べただろう。


 そう考えるといきなり怒鳴り散らしたのが申し訳なくなってくる。

 実際、ミーちゃんは泣く寸前だ。


「分かった、知らないことは出来るはずがないな。怒鳴ったりしてごめん。でも食事ならホワイトベアがあるだろ?」


「それはもう食べたもん……」


 え?食べたの?まだ一週間経ってないよ?

 あの大きな魔物を食べ切ったの?


 いや、分かった。

 僕の常識で考えるのを止めよう。

 このままでは話が進まない。


「そっか、それなら仕方ないな。じゃあさっきのお詫びも兼ねて食べ物を探すお手伝いをさせて貰うよ」


 流石にこの植物を他のみんなに食べさせるわけにはいかない。

 ミーちゃんに少しだけ食べられるものと食べられないものの見分け方を身に着けてもらおう。


「ほ、ほんとに!?、いや、でも……」


 多分ミーちゃんは僕との接触を避けるように言われているのだろう。

 それなら少し背中を押してやろう。


「美味しいものを持って帰ればカナリナも喜ぶと思うよ」


 その指示をミーちゃんにしたのはファナかカナリナだと思っている。

 その中でもカナリナに絞ったのはファナが僕に話しかけて来ているからだ。

 リーダー的存在のファナが自分で言ったことを破るとは考えにくい。

 それにアイリスが話しかけてきたことからもファナがリーダーとして徹底している訳では無いのだろう。


「そ、そうかな?」


「もちろん」


「カナリナちゃんが喜ぶなら問題ないよね!」


 どうやらビンゴだったようだ。


 そんな訳で僕はミーちゃんを率いて森の中に食料を探しに行くのだった。



プリエラとは友達になったライアスですが未だ他の四人とは冷たい関係が続いています。


前の話辺りから自分の常識との違いでツッコミが多くなっているライアス。

ミーちゃんの持っている食べられないモノを見かねたライアスがミーちゃんに食べ物の見分け方を教えることに。

果たして、教育は成功するのでしょうか。


次回、ミーちゃんに食べ物の見分け方を教えます。

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