第6話 元孤児院初のお友達
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブクマ、評価に加え、ご感想もいただけました。
とても嬉しく、テンションとモチベーションがシャチホコの尾ひれのように上がっております。
そのこともあり予定していなかった本日四話目の投稿です。
皆様への感謝の気持ちを書くことで少しでも表現できたらと思います。
ここはどこだ?
僕は目覚めるとともに今にも崩れそうな天井を見る。
何してたんだっけ?
確か誰かを助けようとして……
ハッ!ホワイトベアは!?
「いっつ!」
意識が覚醒した僕はホワイトベアのことを思い出し、急いで身体を起こそうとしたが身体中に巡る鈍い痛みに顔をしかめる。
今にも食われそうなところで気絶したんだった。
「……ここはあの孤児院か?」
ここには二回ほど来た記憶がある。
そう、プリエラが居た部屋だ。
「むにゃ~おいしい……です……」
そこまで気付いたとき、僕の横から声がする。
声のした方を見ると同じ布団の中でプリエラが眠っていた。
え?プリエラ?なんでここに居るんだ?
いや、プリエラの部屋なら当たり前か、え?じゃあなんで僕はここに居るんだ?
というかホワイトベアは……?
僕が混乱しているとプリエラが起きる。
「あ、ようやく……目が覚めたんですね……丸一日寝てたんですよ……おはよう……ございます」
丸一日も寝てたのか、だが魔力暴走に陥った後なら仕方ない。
当分は動けないだろう。
僕は横になった状態で目の前でこちらを見つめているプリエラに声を掛ける。
「う、うん。おはよう。プリエラの調子はどう?」
「あなたのお陰で……凄く良いです。ありがとう……ございます……」
そっとほほ笑むプリエラの黒い瞳に吸い込まれそうになる。
プリエラの調子が良くなったのは良いことだが僕には聞かなければならないことがある。
「良かった……うん、本当に良かった。それでなんだけどこの状況の説明できる?」
「この状況……というのは……?」
(説明しなくても分かるだろ!)
ぐううぅぅ……
僕が心の中でツッコミをしている時、僕のお腹が鳴ってしまう。
そう言えば丸一日何も食べてないんだな。
それを自覚するとともに急激にお腹が空いてくる。
「あ……お腹、空いてますよね……今から、ご飯を……お持ちします」
そう言ってプリエラは部屋から出て行く。
この状況の説明が欲しかったがお腹が空いているのも事実。
ここは彼女が戻ってくるのを待とう。
でも待てよ……
ここに居る者たちはかなり痩せている。
満足な食事が摂れていないからだというのは容易に想像できる。
そんな状態の中、僕にまで気を回してもらうのは申し訳ないな。
だが、そんな考えは暫くたってから戻ってきたプリエラの手にあるものを見て吹き飛んだ。
「ご飯……お持ちしました。あんまり、上手くないですが……私が作りました……良かったら食べてください……」
少し恥じらいながら自分で作った?らしい食べ物?を差し出す姿は普通ならとても可愛らしいのだろう。
だが、だが……
なんだ!?その食事とやらの存在感は!?
プリエラの手にはホワイトベアの頭が乗っていた。
プリエラの身長の半分くらいあるホワイトベアの頭の存在感は半端じゃない。
ホワイトベアは何が起きたか分からないというような顔をしている。
恐るべきはその切断面。かなり切れ味の良いもので両断されない限りこんなことにはならないだろう。
当然、刃物の切れ味だけでなく、持ち主の技量も必要となる。
「こ、これはどうしたんだ?」
「僭越ながら……私が仕留めました……あなたの睡眠を……邪魔しようと、してましたので……だ、ダメでしたか?」
「い、いや、ダメじゃない!よ、よくやった!」
思わず即答してしまったがこの子、今なんて言った?
仕留める?ホワイトベアを?
ホワイトベアは上位に位置する魔物だぞ?
それを獲物を狩るみたいなノリで言われても……
それに睡眠って何?
まさか僕が洞穴で気絶してたの睡眠だと思ってるの?
ヤバイ、色々とやばいがとりあえず……
プリエラは怒らせないようにしよう。
僕はホワイトベアの切断面を見てそう心に誓った。
「さぁ、食べてください……」
だが問題はそれだけではない。
これをプリエラは食事と言った。
目の前には特に何か手を加えられたようには見えないホワイトベアの頭がそのままの状態である。
あれかな?ドラゴンの餌かな?
だが生憎と僕は人間だ。
人間には生の魔物の肉はちょっと、いやかなりキツイ。
「頭はあなたに、残しておこうと思ったのですが……お嫌いでしたか……?」
違う、そうじゃない……
「好き嫌いの前にそれは調理はしてるのかな?」
「調理……?調理って何ですか……?」
oh……
今までよく生きてこられたな……
「し、知らないなら仕方ないな。何も手を加えずに魔物の肉を食べると人間はお腹を壊すんだよ」
「そうだったんですか……」
そんな新事実発見みたいな反応をされても困るんだが……
それから僕の指示のもと軽く火を通してもらった。
幸いにもホワイトベアは毒なども無いため、特別な処理をしなくても食べられる。
身体中が動かないためプリエラに食べさせてもらいながら僕が眠ってからの話を聞く。
何でも僕が飛び出した後、プリエラは僕を追ってきたらしい。
そこで洞穴で寝ている僕を見つけたから連れ帰ったそうだ、その時ついでに倒したホワイトベアを持ち帰ったらしい。
ホワイトベアをついで扱いとは恐ろしい子だ。
「プリエラってかなり強かったんだな。それならパラセートにも自分で対処できただろうに」
「いえ、私は……弱かったですから……」
いやいや、ホワイトベアを倒しておいて弱いなんてことはあり得ない。
少なくとも僕の元パーティメンバーでは足元にも及ばないだろう。
あ、今まで忘れていたがこの孤児院には僕を嫌っているであろう人が四人いたはずだ。
その四人、特にカナリナ辺りは僕がここに居ることに激怒しそうなもんだが……
「そういえば、他の四人はどうしたんだ?」
「他の……女の人の、話ですか……?」
ゾクッ!
なんか今、鳥肌立ったんだけど。
プリエラの黒い目がやけに怖く見える。
な、何か、おかしいこと聞いたかな?
「冗談、です。他の四人は……反対しましたが……関係ありません……」
「関係ないって仲間なんだろ?僕なんかと仲良くするよりそっちを大切にした方が良いと思うよ」
これ言ってて悲しくなってくるな……
だがプリエラのためにもこれは言っておいた方が良いだろう。
今までの関係を壊してまで僕と付き合う必要はない。
「確かにあの四人は……私の仲間ですが……あなたの本質を見ようとしてないので……今は喧嘩中です……」
本質って言われてもなぁ。
別に大した人間じゃないぞ。
「でも……大丈夫です……いずれ、あの四人も分かります……」
「そうかな?一応あの四人とは不干渉を約束してるからそうならないと思うけどね」
「今は……それで良いです……私が独り占めできるので……」
独り占めって、まさか少し助けただけでここまで好かれるとは……
だが他の四人と仲良くなれる未来は今のところ想像できない。
「言っておきますが……助けられたからだけじゃ、ないですよ……あなたは……私の運命の人ですので……」
……
不覚にも今ドキッっとしてしまった。
運命の人って占いでもやってるのかな?
「他の四人も……あなたの良さに気付くと思いますが……一番最初に気付いたのは……私です……それが……とても嬉しいです……」
「そこまで言ってくれて嬉しいよ。僕もプリエラとはもう友達のつもりだから困ったことがあれば何でも言ってくれ」
「友達……ですか……今はそれで良いです……でも……」
最後の方は聞き取れなかったがここに来て初めての友達が出来た。
まさか一人になりに来たここで友達ができるなんて思いもしなかった。
「あ、あの!な、名前で、呼んでも……良いですか……?」
「うん、もちろん。これからよろしくね、プリエラ」
「はい……末永くお願いします……ライアスさん……」
だが悪い気分じゃない。
せっかくできた友達だ、大切にしよう。
「あの……私も……食べて良いですか……?」
話が一段落した時、プリエラが「食べていいか?」と尋ねて来る。
そもそもプリエラが持ってきた料理なんだから僕に確認を取る必要はない。
「あ、ごめん。僕ばっかり食べさせてもらって。ちょっともう一眠りするからゆっくり食べてくれ。そこの香辛料は自由に使ってくれて良いから」
「ありがとう……ございます」
僕は食事を取ったことで再び襲ってきた眠気に身を委ねながら新しくできた友達を見る。
プリエラが居てくれてほんとに助かった。
あと数日は動けないためプリエラに頼ることになるだろう。
身体が動くようになったらプリエラのためにもここを住みやすくしよう。
でも今は眠気が限界だ……
僕は眠気に身を任せる。
「おやすみなさい……ライアスさん……そして、いただきます……」
瞼が閉じる寸前、プリエラの黒い瞳が赤く光った気がした。
プリエラと友達になりました。
どうやらプリエラはライアスには見えていない何かを感じているようです。
プリエラについてはまだまだ謎が残りますね。
次回、回復したライアスが指導します
違うヒロインも登場予定です
お楽しみに。