第64話 元孤児院に帰りました
ジャイアントビーを倒した僕は合流したアイリスの背中に乗って元孤児院を目指していた。
銀狼状態のアイリスは五メートル程ある巨体で、通常の銀狼がせいぜい二メートルまでにしかならないことを思うと、明らかに異質な大きさであることが分かる。
そんな巨体にも関わらず、しなやかな動きで素早く駆け抜ける姿はなかなかお目に掛かれるものではない。
僕はそんなアイリス、いや銀狼のときはハクと呼んだ方が良いのか……ハクの背中に乗りながら少し昔のことを思い出していた。
「こんなこと前にもあったよね」
以前元孤児院の近くにドラゴンが現れて、撃退したときもハクと一緒に元孤児院に戻ったのを思い出す。
あのときは、まだお互いに遠慮している部分もあったけど、それから色々あってアイリスともかなり仲良くなった。
僕を乗せているハクは楽しそうに唸っている。と言っても、傍から見れば威嚇しているように見えるかもしれないが……
「うん! ライアス君が撫でてくれてたら百人力だよ」
ハクは銀狼状態のときでも人間の言葉を喋ることが出来る。
そして僕を乗せるにあたって一つお願いを提示した。
それは僕を乗せている間、背中を撫でてくれというもの。
これも以前の焼き写しのように思えてきて、苦笑いをしたものだ。
「ハクは本当に鼻が良いよね」
「うん。ライアス君はもちろん、みんなの匂いだってわかるよ」
今、僕はここがどこか分かっていないけど、ハクはその優れた嗅覚でみんなの居場所、ひいては元孤児院の場所が分かるらしい。
本当にハクが来てくれて良かった。
僕一人だと簡単には帰れなかっただろう。
僕が高速で流れる景色を眺めていると、ハクが少し心配そうに尋ねてきた。
「ライアス君は大丈夫なの?」
「え? なんのこと?」
そこでハクは一度言葉を詰まらせる。
「ライアス君の、師匠のこと……ライアス君、師匠のこと信用してたんでしょ?」
そこで僕は先ほど、アイリスが抱き着いてきたことを思い出した。
あの言葉にはそういう意味も含まれていたのか……
アイリスも信頼していた人から裏切られた経験を持っている。
だからこそ今回の件で僕への心配も大きかったのかもしれない。
「うん。正直、今でも少し信用している部分はあるよ。だから今回のことで少し裏切られた気分にもなった。でも僕はもう一人じゃ無いからね。」
そう。僕は一人じゃない。
仲間に裏切られて、パーティを追い出されたときは本当に落ち込んでいたけど、今は違う。
アイリスを初め、みんなが居る。
元孤児院の改装も急がれる今、落ち込んでいる時間は無い。
「うん! いつでも甘えてくれて良いからね」
満足そうにハクは一度吠えると、また一定の速さで走り始めた。
今も目の前に迫る木を危なげない動作で避ける。
最初はこれが怖かったけど、慣れれば風も併せて清々しい気分になってくる。
……
師匠か……
僕はもう一度自身を育ててくれた恩師を想う。
確かに僕は師匠をまだ敵だと割り切れない。
でも、それとこれとは別だ。師匠がみんなを害そうとしてくるなら、その時は──
──敵対する覚悟は出来ている。
◇◆◇
「ライアス君、そろそろ着くよ!」
ハクがそう言うと、森を抜け見慣れた建物が目に入る。
外から眺めるとやっぱり不格好だけど、妙にこの建物も悪くない気がしてきた。
しかし、どうにも建物の周りが荒れているようだ。
中には木が倒れているところもあったので、ここでなんらかの戦闘があったのが容易に想像できた。
僕の気も急ってくる。
建物の前でハクから下ろしてもらった僕は感謝だけ述べて、そこでハクとは別れた。
みんなが気になるというのもあるし、このまま一緒に居れば、ハクも人間の姿に戻りにくいだろう。
元孤児院に入ると、視界に二人映った。
一人はファナ。
そして、もう一人は……
「は、はじめまして……」
ティナだった。
いつも寝顔しか見てなかったけど、こう見るとファナとかなり似ていることが分かる。
緊張しているのか、視線を彷徨わせながらも挨拶をしてくれた。
ファナがここで何も言ってこないということは、ひとまずみんなは安静にしているのだろう。
本題に入る前にしっかりと挨拶をしておくことにする。
「はじめまして。ライアスと言います。えーと、ファナの妹さんで良かったのかな?」
「はい……あの……助けてくださり、ありがとうございました……」
まだ僕には慣れていないようだけど、ティナは感謝の言葉を述べる。
恐らくファナから説明があったのだろう。
僕がティナの件で出来たことはそんなに多くは無いけど、感謝は受け取っておこう。
「うん。どういたしまして」
そこで会話は終わりとばかりにティナはファナの後ろに隠れてしまった。
そのティナに代わるように前に出たファナは小さく笑みを浮かべる。
「おかえり、ライアス。戻って来てくれて安心したわ。とりあえずみんなも無事よ。今はそれぞれの部屋で寝かせてあるわ」
ファナの言葉を聞いて、ようやく僕も胸を撫で下ろす。
後でみんなのところにもお見舞いに行こう。
「ありがとう、ファナ。アイリスは外に居るよ」
「礼には及ばないわ。やっぱりアイリスが迎えに行っていたようね。それより今回の件、何が起きたか説明してくれるのかしら?」
そういえば、ファナは僕達が師匠と話しているときには居なかった。
ファナからすれば、急にみんなが傷ついて帰ってきたようなものだろう。
その説明を求めるのは当然の流れだ。
「そうだね。今回の事件は僕の師匠が原因なんだ」
「ああ、あのやたらに雰囲気のあった女性はライアスの師匠だったのね。貴方と面識があるようだったから、なんとなくは察していたけれど……」
「今回の件は僕の警戒が足りてなかったから起きたことだから、ごめん」
「いえ、貴方が謝る必要は無いわ。それにあの強さは知っていてもどうこうできるものじゃないと思うわ」
「もしかしてファナも戦ったの?」
「ええ、挑発に乗る形だったから、お世辞にも褒められた行為じゃ無かったのは自覚しているけれど、手も足も出なかったわね」
魔力の封印が解かれたファナでも太刀打ちできないか……
でも、師匠と戦ったにしては、外傷とかが少ない気がする。
そんな僕の考えが読まれたのか、ファナは一つ息を吐くと続けた。
「貴方の師匠の目的は私たちへの攻撃では無いわ」
自分達への攻撃では無く、別の理由があるとファナは言う。
それは僕も一度は考えたことだ。
師匠は享楽的な性格で読めない行動を取ることは多かったけど、そこには何らかの理由があることが多かった。
だからといって今回のことを全て好意的に受け止めることは出来ないけど、行動の裏に隠された意味は考えた方が良いかも知れない。
「ファナから見て、師匠はどう映った?」
「そうね。正直、私は自分の力を過信していた部分があったわ。魔力が戻ればなんでも出来るとすら考えていたほどよ。でも今回の件で色々と反省点が見えてきた。そのことを考えれば訓練の類に見えないことも無かったわね」
実際に対峙したファナがそういうのだ。
このことは心に留めておこう。
「それにみんなは気絶していたけれど、ほとんど傷は無かったわ。私も含めてね。貴方の師匠が手を負傷していたとはいえ、そもそも攻撃という攻撃をされなかったもの」
つまり守りに徹していたというになる。
あの師匠が攻撃の隙すら見つけられないなんてことはあり得ない。
確か師匠は「殺しはしない」と言っていた気がするし、本気では無かったのだろう。
それにしても、師匠が手を負傷していたのか……
正直、あの人が攻撃を受けて傷を負うところは想像しにくい。
誰かは分からないけど、凄まじいな。
「そっか。みんなも大きな怪我が無くて本当に良かった。師匠は帰ったの?」
「ええ。本当に嵐のような人だったわ」
師匠は結局僕に何も言わずに帰ってしまったのか。
これで終わりでは無いだろうから、また警戒しておかないとな。
僕は話が一区切りついたのを見て、今度はティナのことを聞くことにした。
ティナは巨人族の里から帰ってくる間もたまに起きたりはしたけど、とても話せる状態では無かった。
「ティナはもう大丈夫なの?」
僕が名前を呼んだことで、怯えるようにファナの後ろに隠れるティナ。
「ええ。体調はかなり回復してきているわ」
ファナはそれ以上は言わないけど、その言葉に含まれている意味は分かった。
体調は回復したけど、他の部分ではまだ何らかの不調があるということだろう。
今は本人を前にしているから言えないこともあるだろうけど、後でそこは聞いておこう。
「そう。それなら良かった。ティナちゃんもゆっくりでいいからね。何か分からないことがあったら、いつでも言ってね」
一応ちゃん付けをすることで、少しだけ距離を離した。
ティナはやはり怯えながらだけど、しっかりと頷いてくれた。
ティナにとっても住みやすい場所になるよう努力はしないといけないな。
◇◆◇
ファナと別れた僕は寝室で休んでいるというみんなの元へ向かった。
まずは一番近い部屋であるカナリナのところに行く。
「カナリナ、起きてる? 入っても良いかな?」
「ライアス!? 無事なのね!」
僕がカナリナの部屋に入ろうとすると、カナリナの方から飛び出してきた。
恐らく部屋着に着替えて寝ていたのだろう。
いつも身嗜みに気を遣っているカナリナがいつに無い程、焦っていた。
僕の顔を見ると、すぐに安堵したようにため息を漏らす。
「良かった。無事だったのね……」
「うん。何とかね。カナリナの方は?」
「あたしも怪我とかは無いわ……ってちょっと待ってなさい!」
カナリナはそこで自分の服装が乱れていることに気付いたのか、部屋の中に戻ってドタバタと準備している。
僕はカナリナの部屋の外で待ちながら、先ほどの反応を思い返す。
凄く心配してくれていた。
僕も心配だったけど、カナリナも同様に僕のことを心配してくれていたのだ。
そのことが嬉しいのと、不安にさせたことに申し訳なくなる。
しばらくして、カナリナから部屋に入ってきていいと言われたので、カナリナの部屋に入る。
僕は入って早々、頭を下げる。
「今回の件、僕の不注意が──」
「──頭を上げなさいよ。今回のはライアスのせいじゃないわ。それにアンタの師匠の考えも何となく分かったもの」
「ありがとう。でも、師匠の考えって?」
そこからカナリナの考えを聞いた。
どうやら、カナリナとミーちゃんがこの場に残って戦ったけど、どちらにもアドバイスのようなことをしていたらしい。
カナリナ自身にも思うことがあったのか、より一層これから励んでいきたいと言っていた。
これはファナが言っていたこととも繋がっている。
やはり師匠は何らかの理由で僕達を強くしようとしているとしか思えない。
師匠の言葉を借りるなら、師匠を殺すためとなるのだろうか……
「そっか。そんなことがあったのか……」
「あたしの話はこんな感じよ。それよりアンタの話も聞かせなさいよね」
僕がどこかに飛ばされた後の話が気になっているのだろう。
僕は先ほど、一緒に戦った者を思い出しながら今日あったことを話す。
「えっとね。飛ばされた先で女性の冒険者に遭遇したんだよ。結構初心者っぽかったけど妙に肝が据わってる人だったかな」
話を聞いているカナリナは少し面白く無さそうに眉を寄せていた。
この話は長くするべきじゃないと判断して、次の話題に移る。
「まぁ、そのフィーリアさんとジャイアントビーっていう大きな蜂の魔物と戦ったんだけどね──」
「──え……今、なんて……?」
「ん? だからジャイアントビーっていう」
「その前よ」
「もしかして、フィーリアさんのこと?」
僕の口からフィーリアという言葉が出た時、カナリナは大きく目を見開いた。
もしかして知っている人なのだろうか。
そういえば、カナリナの昔のことは聞いたことが無かったな。
「フィーリアって、もしかして茶髪で黄色い目をした私より少し年上の人?」
「そ、そうだね。もしかして知り合い?」
「フィ、フィーリアはどこにいるの?」
カナリナは一歩僕に詰め寄って、問いかけてくる。
「フィーリアさんとは森で別れたけど」
「そ、そっか。ごめんなさい、少し取り乱したわ」
カナリナは姿勢を正すと、昔の話をしてくれた。
「これはあたしが子供の頃の時の話よ」
カナリナの話を纏めると、貴族の娘として生まれたカナリナは魔力こそあったものの、魔法を使うことが出来なかった。
結果、その場所では生きづらくなり、意気消沈していたところに現れたのがフィーリアさんだと言う。
ここまで頑張ってこれたのもフィーリアさんとの約束があってのことなので、出来れば会って話をしたいとのことだ。
そんなことがあったのか。
……
でも、こう言ったらあれだけど、カナリナの口調を聞いてると貴族の娘だとは思えないな……
それを本人に言うのは失礼なので、そんなことはおくびにも出さずに話を聞き終える。
「そっか。フィーリアさんはカナリナにとっては恩人なんだね」
「ええ。彼女が居なかったら今のあたしは居ないわ」
「それなら近々フィーリアさんが居る街に行くつもりだから、付いてくる?」
どの道、カルーダの街には行かなければならなかった。
正直、あまり行きたくないという気持ちもあるけど、一番近い街がカルーダなので、このトラウマは克服しなけらばならない。
それに時間も経っているから、あまり顔を見られないようにすれば気付かれないかもしれない。
僕が聞くと、カナリナは目を輝かせて聞いてくる。
「え? 良いの!? でも、街ね……」
カナリナは少し人に対して恐怖心を持っているのだろう。
今さっき聞いた話でもそんなことを言っていた。
それでもカナリナは顔を上げると強い目で見つめてきた。
「あたしも連れていって欲しいわ」
「分かった。それじゃあ一緒に行こうか」
もともとは少人数で行くつもりだった。
まず見た目でエルフと分かるファナは連れていけないし、ティナの面倒を見る必要もある。
ファナだけを残すのも心配だし、行くメンバーは考えないとな。
「それじゃあ、他のみんなのところにも行って来るよ」
「ええ……それじゃあ、後でね」
僕はカナリナと別れて次に近いプリエラの部屋に行く。
先ほどと同じように部屋の外で声を掛ける。
扉が開いているからといって、確認なしに入るわけにはいかないからだ。
「プリエラ? 入っても良いかな?」
「はい。どうぞ、入ってください……」
プリエラに促されて部屋に入ると、プリエラがベッドで寝ていた。
「すみません。身体に、力が入らないので、このような体勢で……」
「そんなの気にしないよ。それよりどこか痛めてたりはしない?」
「はい。魔力を使い過ぎたみたいです……」
どうやらプリエラは魔力不足で寝込んでいる様だ。
怪我は無いようだけど、魔力不足もかなり疲れが溜まる。
恐らくプリエラも師匠と戦ったのだろう。
「ごめんね。プリエラにも心配や迷惑を掛けた……」
「いえ、ライアスさんが無事なことは知っていましたから……」
そこで言葉を止めたプリエラは僕を手招きする。
導かれるままにベッドの前に行った僕の手をプリエラが掴んできた。
しばらく何も言わなかったプリエラはポツリポツリと切り出した。
「悔しいです……負けてしまいました……」
プリエラの眼は前髪に隠れて見えない。
師匠だったから……そんな慰めは彼女も求めていないだろう。
僕は彼女の頭に手を乗せると、ゆっくりと撫でる。
「僕はプリエラが無事で戻ってきてくれたことが一番うれしいよ。師匠と会う機会は今後、間違いなくあるだろうからさ。今度勝てるように頑張ろうよ」
僕一人では師匠に勝つことは出来ない。
それでも、みんなの力を合わせれば、出来ないことは無いと思う。
しばらくして、プリエラも落ち着いたのか、手を離してくれた。
「すみません。取り乱しました」
「うん。いつもは頼りっぱなしだから、こういう時くらいはいつでも頼ってくれて良いからね」
プリエラにはずっとお世話になっている。
戦闘面では適わないからこそ、精神面では助けてやりたい。
その後、プリエラと別れた僕はミーちゃんの元に向かった。
ミーちゃんも師匠と戦ったみたいだから、無事と知っていても本人を見るまでは心配だ。
「ミーちゃん、入っても良いかな?」
「……う、うん……」
ミーちゃんは少し遅れて返事をしてくる。
その様子もどこか歯切れが悪そうだ。
僕が部屋に入ると掛け布団、と言ってもほとんど布のようなものだけど、それに包まって顔だけを覗かせながらベッドの上で座り込んで居た。
どこか怯えたように掛け布団を握りしめており、その目も潤んでいる。
どこか痛めているのだろうか。
僕が話しかけようとすると、ミーちゃんの方から切り出してきた。
「お、怒ってないの?」
ん? 怒ってる?
僕が何でミーちゃんを怒るのだろうか……
あ、もしかしてミーちゃんを庇って僕が前に出たことを言っているのか。
ミーちゃんなら自分のせいで、なんて考えている可能性もある。
「うん。怒ってないよ。それに僕の方こそごめんね。みんなに心配と迷惑を掛けちゃって」
僕が頭を下げるとミーちゃんは今にも零れそうな涙を堪えながら走ってきた。
「ミーのせいで、お兄ちゃんがどっかに行っちゃって……」
僕はその小さな体を受け止めて、包み込む。
「大丈夫、どこかに行ってもすぐに戻ってくるからさ」
それから大きな声で泣くミーちゃんが落ち着くまでその背中をさすり続けた。
◇◆◇
「それでね。ミー、何もできなかったの」
あれからミーちゃんが落ち着くのを待ってから、師匠との話を聞いていた。
どうやらミーちゃんも戦ったみたいだけど、手も足も出ず負けてしまったという。
「そっか。確かにミーちゃんは優しいから、自分の力を活かしきれていないのかもしれないね」
僕の言葉にミーちゃんは俯く。
恐らくミーちゃん自身も理解していることだろう。
ミーちゃんは好んで戦いをするタイプでは無い。
でも、それはミーちゃんの美点でもある。
ずっと冒険者をしていて、戦闘と隣り合わせで生きてきた僕ではそんな考えにはなれない。
「でも、そこがミーちゃんの良い所でもある。ミーちゃんは戦い方を知らないだけだから、そこは僕と練習していこうか」
「うん!」
僕の言葉を聞いて、ミーちゃんは目を輝かせた。
今、師匠に叩きのめされたミーちゃんに対してこのまま何もせずに居たら、考え込み過ぎて良くない方向に向かってしまうかもしれない。
だからこそ、何か前に進んでいるという意識が必要になる。
それにミーちゃんが自分の身を守れるようにも、僕が出来る範囲で教えよう。
と言っても今のミーちゃんに勝てる存在って結構限られてくるんだけどな。
それからミーちゃんと別れた僕は自分の部屋に戻ってきた。
自分のベッドに横になり、今日のことを振り返る。
ティナの救出作戦が終わったばっかりだっていうのに、また新たな問題が舞い込んできてしまった。
師匠のこともそうだけど……
僕は先ほど、元孤児院の前の木が倒れていたのを思い出す。
ミーちゃんはすぐにやられたと言っていたから、アレをやったのは消去法でファナになる。
自然を愛しているファナは自分から森林を破壊したりはしないだろう。
──やっぱり、ファナは魔力を制御できてない




