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第1話 追放されました

読んでいただきありがとうございます。

本日2回目の投稿です。

 


「おい、ライアス。今まで黙っていたがそろそろ限界だ。お前は俺たちのパーティーにはいらない。さっさと出ていけ」


 三年間一緒に戦っていたパーティー『竜の息吹』のリーダーであるバランから無慈悲にも突き付けられた決別の言葉。

 だがこれは何も突然のことという訳じゃない。

 前々からこうなることは予想出来ていた。

 それが今回の任務失敗で現実のものとなってしまった訳だ。


 五人パーティーでやってきたが、その中で唯一、戦闘での役割がはっきりしていない僕。

 誰を切るかと言われれば僕と言わざるを得ないだろう。

 戦闘においては確かに僕の活躍は小さいが冒険とは戦闘のみで成り立っているわけじゃない。

 それに今まで一緒にやってきた愛着みたいなものが皆にもあると思っていた。


「そうそう、前々からお前は要らねぇと思ってたんだ。お前を入れるくらいならそこらの町娘を入れた方がマシってもんだぜ」


 僕たちのパーティーの最年長である男、ゴイルからも追い打ちが掛けられる。

 ゴイルが言ってることは僕が料理係を引き受けているからだろう。

 冒険を行うにあたって町の外で食事を取ることも多い。

 そんな時、少しでも美味しいものを食べようということである程度料理に覚えのあった僕が担当するようになった。

 最初は少し失敗しても美味しいと食べてくれていたが一年前くらいからは一度も感謝や賛美の言葉は聞いていない。


「ていうかあんた、よく私たちと一緒に居続けられるわね。役に立ってもないのに居座るなんて私じゃ絶対無理。図々しいにもほどがあるでしょ」


 僕が黙って俯いているとバランの幼馴染であるナージからも酷い言葉が掛けられる。

 役に立っていない……か。

 今まで色々やれる範囲で頑張ってきたがこの言葉は今までの中でも僕に重く圧し掛かる。


「まぁ、あんたが居たせいで今回の任務も失敗したわけだしー、手に入らなかった分の報酬の補償だけしてから出て行ってって感じ」


 僕たちのパーティー最後の一人マルナからの言葉には流石に僕も耳を疑った。

 今回の任務はゴブリンの巣の破壊だった。

 最初は順調だったのに見張り役を買って出たマルナがサボっていたせいで僕たちは囲まれ撤退に追いやられたのだ。

 マルナは反省するどころか僕に罪を擦り付け、任務失敗の違約金も僕に払わせた。

 他のみんなが気付いていないはずが無い。


 いま改めてここに僕の居場所がなくなった……いや、なかったことが分かった。



「そ、そっか。今までありがと……」


「金は置いて行ってね」


 マルナの追い打ちに一刻も早くここから立ち去りたかった僕は持っているお金を置いて立ち去る。


 はぁ、これからどうしようかな……



 だが、いつまでも落ち込んでは居られない。


「よし!」


 僕は自分を奮い立たせるために喝を入れる。

 このままじゃダメだ。

 落ち込んで生きる気力さえ失くしたらそれこそあいつらの思うつぼだ。

 それなら次のパーティーであいつらより活躍して見返してやる!


 僕は早速明日からパーティーを探そうと宿で眠りについた。



 この時の僕は理解していなかった、あいつらの性格の悪さを。



 ◇◆◇




「ギ、ギルド除名ってどういうことですか!?」


「いえ、あなたに関して通報がありまして。まったく働かないのに報酬だけ貰い、挙句の果てに仲間を危険に晒す詐欺師だと」


「そ、そんな……僕は詐欺なんてしてません」


「しかし、複数人から寄せられた意見ですので……」


 あれから一日たって朝一にギルドに向かうと長くお世話になったギルドから告げられた除名の言葉。

 犯人は詮索するまでもないだろう。

 それに、ギルドの受付の人も仕事上丁寧な対応をしてはいるがその目は嫌悪感を隠していない。


「な、何かの間違いです!しっかりと調査を──」


「──おい、どけ!邪魔なんだよ!」


 僕が粘ろうとすると後ろから冒険者が割り込んできた。

 受付の人もその人の対応を始めてしまった為、もう話すことが出来ない。

 僕は仕方なく受付から離れて、周囲を見る。


「ッ」


 痛い、周りからの視線が痛い。

 まるで針を全身に突き刺されているようだ。

 先ほどの受付嬢との会話を聞かれたのだろうか、その視線に友好的なものは無い。


 ふと見た先にバランが居た。

 僕が昨日まで所属していたパーティーのリーダーだ。

 バランはこちらを(あざけ)るように笑っている。


 僕の中で憎しみの感情が膨れ上がる。

 どう考えても今回の件はバランが関係している。

 パーティから抜けてからも嫌がらせをしてくるとは思わなかった。

 もう、バラン以外の人は見えない。


「バラン!!なんで!!」


 僕はギルドの端の方に居るバランに近寄る。

 バランも僕が近くに来たことでこちらに歩いてくる。


 ……


 ガッシャーーン!!


「え?」


 何が起こったんだ?

 僕が近づいて問い詰めようとすると肩に手を伸ばすと急にバランが後ろに飛ぶように倒れた。

 後ろにあった花瓶が落ちて割れ、その破裂音がギルド中に響き渡る。

 その時、視界の端から何者かが割り込んで来た。


「ラ、ライアス!あんた、なんでバランを殴ったの!?」


「良いんだ、ナージ。俺はライアスを信じていたが……これで流石に俺も分かったよ」


「ライアス!バランが仲間を殴れないことを知ってて殴ったわね!許さない」



 なんだ。



 なんなんだこの茶番は。



 目の前には転んだ際に傷ついたのか少し血を流すバランと涙目でこちらを睨んでいるナージ。


 こんなの誰が見たって茶番だって……


 そう思い辺りを見回して気付く。

 ギルドに居る人は全員、僕より後ろに居てこちらが死角になっている。

 それに今も現在進行形でギルドには人が入ってきており、皆の視線が集まるこちらを自然と見る形になっている。


 少しざわついている集団の中から一際大きな声が聞こえて来る。


「あ、あいつ!詐欺師だ!働かずにパーティーに寄生し、仲間を全滅の危機に追いやった挙句、暴力まで振るうなんて!?」


 その顔はローブに隠れて見えないが無駄にデカいこの声の主は分かる。

 なにせ三年間も一緒に過ごしてきたんだ。


 なぁ、ゴイル!



 ◇◆◇



 それからのことはよく覚えていない。

 ただあれから噂はどんどん広まり数日でこの町に僕の居場所はなくなった。

 宿にも泊めさせてもらえず、今は町の近くの森で寝泊まりしている。

 僕は小さいころに魔物に襲われて両親を失った。

 師匠に拾われて何年か森で生活をしていたがその後はこの町のギルドで育ってきた。

 町に居場所がなくなってもどこに行けばいいか分からない。


 今日も当てもなく街を歩く。

 最近はあまり考えることが無くなってきた。

 最初の方こそあいつらを許さないと思っていたが、正直もうどうでもいい。


 唯一の願いがあるとするならば、それは誰の目も届かない遠くに行きたいくらいか、いやそれもどうでもいいかもしれない……


 バサッ


 俯いて歩いていると顔に何かが張り付く。

 何かの紙らしい。


 そこには……


『大特価!!今なら自然豊かな森の中に別荘を持つチャンス!!少しここから離れていますが夏のバカンスにはピッタリでしょう!!今ならお値段なんと1000ルピです!!』


 1000ルピか……

 大体、宿に泊まるのに一泊300ルピなのを思うとかなり破格の値段だ。

 だが気になるのはこの広告がかなり古びていて、さらに値段の部分は何度も後から修正された跡がある。

 しかし、なぜこうなったかは場所を見て理解した。


 ゲーニッヒ森林……通称『帰らずの森』。ここは町からかなり離れており、魔物の強さは森の奥に行けば行くほど強くなるという。

 この森の恐ろしい所は方向感覚を失う所だ。浅い所なら問題は無いが少し奥に行けば目印を付けても迷うことが多いという。

 この別荘とやらはその森の中にあった。

 まだ比較的浅い所なので冒険に慣れている人なら迷いはしないだろうが貴族などが足を踏み入れたいところではないはずだ。

 それに買ったら買ったでその屋敷の管理をしなければならないため、今まで買う人が居なかったのだろう。


 1000ルピ、今の所持金でもなんとか買える。

 正直、もう人は信じられないし、いっそ山奥で暮らすのもいいかも知れない。

 そんな考えが僕の中に芽生えてくる。


 気が付けば僕はチラシに書いてある売り手のところに足が向いているのであった。






ライアス追放されて傷心状態です。

さて、彼らはライアス抜きでしっかり冒険できるのでしょうか。

彼らのお話も少し先になりそうです。

ざまぁ展開が早く欲しい方にはごめんなさい


次回、ついにヒロインズ登場です。

今日中には投稿します(固い意志

お楽しみに

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白そう [一言] 定番とはいえギルドが無能すぎますね
[気になる点] んー……ギルドの端の方にいて、他の人達が主人公の後ろにいて、入り口からもどんどん人が入ってるが、茶番だと分からない完全な死角になる……どんな構造の建物なんだろう…… それとも主人公は視…
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